司法書士 廣澤真太郎
専門外ではありますが、実務で個人的に「怖い」と感じた税金の落とし穴の話をまとめてみました。
この記事をご覧になって、ヒヤッとする方もいると思います。ぜひご覧ください。

相続時の怖い税金の落とし穴
実務で一番怖いのは税金です。誰にも相談せず、ネットや役所に聞きまわって自分で手続を進めた結果、数十万円損をしているケースを何度か見聞きしましたので、ご紹介します。
◆必ず税理士に相談すべき場合
1.代償分割や、換価分割(不動産を売却して、相続人で分配する)を行う場合
2.生前贈与等を遺産分割協議に盛り込む場合
3.相続税申告を行う場合
とくに、散見する税金の落とし穴は、特例の利用条件を把握していなかったことによる失敗です。
1.相続した土地建物を、そのまま売却してしまった
相続した土地建物が、被相続人1名が居住していた不動産である場合、その家屋は空き家となります。
換価分割をする場合で、譲渡所得が発生する場合には、空き家は、建物が耐震基準に満たない場合は、更地にしてから売却しないと以下の特例が利用できません。※令和6年1月1日以後の譲渡であれば、譲渡日の属する年の翌年2月15日までの間に取り壊しを行うことで、適用される制度変更があります。
古い不動産で購入時の費用に関する資料を紛失している場合、譲渡所得税は高額になる場合もあります。遺産分割協議をする段階で、売却までの段取りやと特例の要件を確認していなかったことが原因で、申告者一人当たり最大600万円損してしまうケースがあります。
被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
2.相続税申告期限内に、急ぎで不動産を売却してしまった
遺産に不動産が含まれる場合で、相続税申告が必要な場合に、相続したのが特定居住用宅地で配偶者というわけでもないのに、相続後すぐに不動産を売却してしまうと、以下の特例が利用できません。
また、この申告期限は10か月以上伸長される制度もありますから、正確な売却時期は、相続手続きの後で、税理士に確認しながら検討する必要があります。
相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
3.空き家を換価分割することにしたのに、3年以上経過してから売却してしまった
相続開始後3年を経過する日の属する年の12月31日を過ぎると、以下の特例を利用できません。相続期限内に急いで売却するのも、かなり経ってから売却するのも、どちらも損する可能性があるということです。
被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
4.相続した不動産を、相続人ではない親子や夫婦などの近親者に売却した
この場合も3同様に、以下の特例が利用できません。
被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
5.不動産売却後の確定申告義務を知らなかった
例えば、代表相続人を決めて、不動産を売却して換価し、相続人全員に分配した場合で、譲渡所得が存する場合は、その年、相続人全員がそれぞれ、確定申告を行う必要があります。
この知識は、私も勘違いしていたことがありますが、代表相続人だけでなく、相続人全員がそれぞれ申告することになります。
国税庁:未分割遺産を換価したことによる譲渡所得の申告とその後分割が確定したことによる更正の請求、修正申告等
また、重要なのが、この最初の確定申告の際に一定の特例を利用しなかった場合には、次年度に更正の請求をしても、原則として認められないこととされています。これを、当初申告要件と呼びます。
具体的には、小規模宅地特例や、居住用財産の特例等です。
このことを知らずに、年金やふるさと納税の確定申告を行ってしまうなど、時すでに遅しという事例があります。
6.遺産分割のやりなおし
遺産分割協議は、全員の同意で再度、やり直すことが可能ですが、贈与税、譲渡所得税、不動産取得税が発生する可能性があります。
相続ではなく、あらたに財産を取得したとして、課税されうるということです。
7.代償分割における代償金などを合意だけで決定
不動産につき、相続人の一人が取得して、代わりに代償金を支払う場合は、金額によっては贈与税の対象になります。
また、代償金ではなく不動産を譲渡することになった場合は、譲渡した人に譲渡取得税が、譲り受けた人に不動産取得税が課税される場合もあります。

まとめ
上記のような失敗は、全て必要な場面で税理士に相談をしていなかったことによるものです。
当事務所にお声がけいただければ、税理士もご紹介しますので、このような致命的なミスは避けることができます。
不動産を動かす際には、売却の時期や、金額、手続きの段取り、話し合いすべき内容などを、ネット知識ではなく、必ず専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
相続手続きについては、まずは一度、お気軽にご相談ください。
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