遺産の相続手続きは法的知識が必要なうえ、不慣れな手続きを大量に処理する必要があるため、ご不安な方も多いのではないでしょうか。
この記事では、相続手続きの全体像を解説しています。
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相続手続きの流れ、全体像
多少流れに前後はあっても問題ありませんが、まずは義務や債務の確認から進めるとスムーズでしょう。
1.役所の届出、光熱費、契約先の名義変更などを行う
各行政機関等に死亡届、健康保険や年金などの届出を行い、また、光熱費やサブスク、クレジットカード会社など各契約先に死亡通知を行います。
継続的支払いのある契約をそのままにしておくと、その地位が相続人に承継される場合もあるため、早め早めに動きましょう。
通知や届出をすると必要書類が案内されますが、期限のないものは、後述の相続人調査や不動産手続きの後、提出するので構わないでしょう。まずは支払いを止めることが先決です。
(例)死亡届、火葬・改葬許可、世帯主変更届、各保険の喪失・変更、年金受給者死亡届、運転免許死亡取消、死亡退職届、国家資格返還、配達物の停止……
2.借金を調査する
次のページを参考に、故人の借金を調査しましょう。
被相続人の借金を調査する方法:オアシス司法書士・行政書士事務所
なお、個人間の借金や税金の滞納などは、個別にお手元の資料で確認する必要があります。
3.だいたいの財産総額を確認する
通帳の最後の記載と、有価証券取引報告書の時価記載欄、不動産の評価額など相続財産の総額を大雑把に計算しましょう。
最近ではデジタル資産などの存在も確認しておく必要がありますから、故人の携帯のデータに「ウォレットアプリ」がないかなどを確認しましょう。
借金が見つかったのにもかかわらず、プラスの財産資料が全く見つからない場合は、急ぎでいくつかの銀行で口座照会を行うか、相続放棄申述の準備を進めましょう。
4.相続人か否かの簡易確認
誰が相続人となりうるかを、簡単に確認しましょう。
亡くなった方に配偶者と子供がいる場合の相続人
配偶者と子供(既に亡くなっているときはその子供の配偶者や子供)
亡くなった方に配偶者と直系尊属がおり、子供がいない場合の相続人
配偶者と直系尊属
亡くなった方に配偶者と兄妹がおり、直系尊属や子供がいない場合の相続人
配偶者と兄妹(既に亡くなっているときはその子供の配偶者や子供)
亡くなった方に配偶者がいない場合
子供 (既に亡くなっているときはその子供の配偶者や子供)
子供がいない場合は直系尊属
直系尊属もいない場合は兄妹(既に亡くなっているときはその子供の配偶者や子供)
5.債務超過の場合は相続放棄を検討する
上記調査結果から、プラスの財産よりも明らかにマイナスの財産のほうが多いことが明らかなケースでは、相続人にとっては不利益しかないので、家庭裁判所で相続放棄申述をすることで初めから相続人とならなかったことにできる制度があります。
ただし、故人がお亡くなりになったことを知って3か月以内という期間制限がありますから、相続放棄申述を行う場合で急ぎのケースなどはお近くの司法書士にご相談ください。当事務所では期限が切れる1週間前にご依頼をいただいて無事完了した実績もございます。
詳しくはこちら:裁判所HP
6.遺言書の有無を確認する
故人が自筆証書遺言を作成なさっている場合で、相続人にそのことをお伝えされていない事もありますので、ご自宅の調査を行いましょう。
また、公正証書遺言が残されている可能性がある場合はお近くの公証役場にて遺言検索を、法務局に遺言書を保管してある旨の通知が届いた場合は法務局に遺言書の証明書を交付請求しましょう。
戸籍収集をする前のタイミングがベストですが、後日、不動産登記の前に念のため遺言検索を行うという利用方法もあります。
ポイント
✅ 相続手続きを行ったあとで遺言書が見つかった場合、手続きのやり直しが必要になることがあります。
✅ 遺言書はあるが、その内容に相続人全員が不満であるというケースでは、遺言執行者の有無を確認しその就任拒否を請求する又はそのまま相続人の合意で手続きを進める方法があります。このようなケースはお近くの司法書士にご相談ください。
7.相続人の調査、確認・必要書類収集を行う
戸籍類を収集して読み解き、相続人を確定します。兄妹相続の場合などは戸籍が30通ほどになることもありますし、不慣れな方だと内容を読み取れず戸籍が漏れることもありますのでご注意下さい。
手続きする機関が多い場合は法定相続情報証明を交付しておくと手続きがスムーズに進行できます。この項目以降はお近くの司法書士にご相談されることをお勧めします。
8.遺産分割協議を行う
確定した相続人全員で、遺産分割協議を行います。
相続人に疎遠な方がいるといったケースでは、住民票上の住所に手紙をだすなどして連絡を試み、財産情報を開示のうえ協議を行うというのが一般的でしょう。
疎遠な相続人との連絡手段について:オアシス司法書士・行政書士事務所
連絡が取れない場合や、協力的でない相続人が存するといった場合は家庭裁判所の手続を利用する方法があります。交渉が難航する場合は弁護士に代理を依頼するのもよいでしょう。
9.準確定申告を行う
確定申告義務のある方がお亡くなりになった場合は、お亡くなりになった翌日から4か月以内に、準確定申告を行う必要があります。なお、相続放棄した方は申告不要です。
10.権利に関する相続手続きを行う
銀行の口座解約や有価証券の移管、不動産の名義変更(相続登記)、生命保険金・死亡退職金・死亡保険金の請求などを行います。
権利を請求する際には、誰が相続人で誰が取得者で、どういう協議が行われて遺言書はなかったのか?といったことを証明する必要がありますから、金融資産や不動産など、手続きに必要な項目についてはまとめて遺産分割協議書に反映させて手続き利用していきます。
11.相続税申告を行う
相続税申告義務がある場合は、故人がお亡くなりになった翌日から10カ月以内に相続税申告を行う必要があります。必要に応じて税理士にご依頼になり、申告しましょう。
遺産相続手続きの相談はどこでするべきか
遺産相続の手続きはその内容により異なりますが、紛争性がある場合は弁護士、普通の相続手続きの場合は司法書士への依頼が一般的です。
また、相続税など申告が必要なケースでは手続き中又は終了後に知り合いの税理士を紹介してもらうのがスムーズでしょう。
遺産相続手続きにおいては、悪質な業者も散見されますから、最初の依頼先の選定には充分ご注意ください。
以上、必要に応じてこの記事をご参考になさってください。
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