司法書士 廣澤真太郎
この記事では、遺産分割協議が難しい場合の対応方法について記載しておきます。相続手続きがストップしてしまって進め方についてお悩みの方向けの記事です。
[toc]
相続人の一人が相続手続きに協力してくれない場合はどうすればよいか?
相続人は3名とし、兄弟の仲が悪く、二男が長男と関わりたくないという理由から遺産分割協議が進められないというケース前提にして話を進めましょう。
相続手続きでは、例外を除いて相続人全員の協力が不可欠です。
勝手に進められる手続きも中にはありますが、後々のトラブルについて考えると、安易に手続きを進めるべきではないと考えます。
対応方法は一概に言える部分ではないと前置きしておきますが、上記のケースでは、お母さんから二男に手紙や電話、連絡が取れないなら直接住所地へ行くなどして地道に協力を求め、
それでも埒が明かないのであれば最終的には家庭裁判所において遺産分割調停を行っていくことになるでしょう。調停手続は弁護士に依頼をするか、司法書士が申立をサポートする事も可能です。
重要なのは、相続人が協力しない理由
お話したとおり、相続人の一人が協力してくれない場合でもどうにかして協力してもらわないと、家族の問題に裁判所を介する事になってしまいます。
相続人が協力しない理由によって、対応策も変わってきますので、「なぜ協力してくれないのか?」については本人を訪ねてみるほかないでしょう。
Q 上記のケースで、兄への不信感などがあり協力してくれない
A 相続手続きに協力してくれないと、自分にとっても不利益になることを、根気よくお母さんから説明し理解してもらいましょう。
Q 一度騙されて手紙や電話を警戒していて連絡がとれない
A 現地に直接言って話をするのが良いでしょう。
Q 認知症になっている
A 遺産分割協議を行うため、成年後見人の申立が必要です。ただし、相続手続きをするためだけに成年後見申立をするのは現実的でない事も多いので、お亡くなりになるまで手続きをストップする事もあります。
Q 高齢で動けないから印鑑証明書をとれない
A 印鑑カードを預かってあげて、本人の前で遺産分割協議書の内容を読み上げ、内容に承諾してもらえたら、代わりに押印してあげるという方法が考えられます。
Q 住所がわからない
A 相続人であれば、その相続人の住民票や戸籍の附票を取得可能です。住民票上の住所も移してない場合は住所はわからなくても、居所は突き止めなくてはなりません。調停を弁護士に依頼し、弁護士会照会を頼んだり、探偵に頼んだりすることになるでしょう。
Q すでに相続放棄申述を家庭裁判所で行っている
A この場合は二男の協力は不要です。相続人であれば家庭裁判所において、相続放棄申述受理証明書を取得することができますので、手続きではその証明書を利用します。
そもそも、相続人全員の協力は必要か?
相続手続きでは、相続人全員の協力が必要不可欠だとお伝えしましたが、例外的にその必要がないケースもあります。
お亡くなりになったお父さんが、二男以外の人に対し遺産を相続させる内容の公正証書遺言を残していたようなケースです。
例えば、「長男に全ての財産を相続させる」という内容の公正証書遺言が見つかった場合、 相続手続きは長男だけで進めることができます。
このように、自分の相続人である兄弟の仲が悪いということがわかっている場合には、遺言が後で役立つことがあります。
ただし、無効な遺言であれば意味がなくなってしまうので、このような繊細な理由で遺言作成を検討されている方は一度司法書士にご相談ください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
遺言のない相続手続きでは、相続人全員の協力が不可欠になります。
協力してくれない理由によっては、本人にとってもデメリットがあることを根気強く伝えていく必要があると思います。
また、何らかの理由で連絡がとれない場合でも、どうにかしてその相続人の居所は突き止めなければなりませんから、
日頃から親族の行方や連絡先を把握しておくことで、後々の苦労を防止できるでしょう。
以上、相続手続きについてお悩みの方の参考になれば幸いです。
相続・遺言のご相談
-
-
相続に関連する業務内容一覧
相続に関するの業務内容一覧 当事務所では、主に、次のような業務をメインとして行っています。 (例) ・相続による不動産の名義変更、戸籍収集 ・預金、有価証券の相続手続き ・遺産をお預かり ...
続きを見る
知識ページ一覧
知識ページをご覧になりたい方はこちらから
一歩踏み込んだ終活!エンディングノート、死後事務、財産管理等、任意後見、遺言書
司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 この記事は、4人に1人が認知症とされる現代において、司法書士が終活に際して、お役に立てるサービスについて、ご紹介した記事です。 司法書士が終活に関してできること 司法書士は、生前対策だけでなく、その後の相続手続きについても日ごろから業務として行っている、法律事務のエキスパートです。 ・ライフプランノート(エンディングノート)の作成 ・各契約書や遺言書等の法的書類の組成、公正証書作成のサポート ・その後の、相続手続き・遺言執行業務をまとめて依頼 &n ...
ReadMore
外国在住者が所有者となる場合の住所証明情報
司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 この記事は、外国在住者が不動産を取得する場合の、住所証明情報について、備忘録として記載したものです。 通達 令和5年12月15日 外国在住者(個人)の住所証明情報 次のいずれかを住所証明情報とする。 1.本国等政府の作成に係る書面 + 訳文 登記名義人となる者の本国又は居住国(本国又は居住国の州その他の地域を含む。以下「本国等」という。)の政府(本国等の領事を含み、公証人を除く。以下「本国等政府」という。)の作成に係る住所を証明する書面 ...
ReadMore
株券の廃止手続き
司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 この記事では、株券の廃止にあたっての手続きについて、記載していきます。 株券とは 株券とは、株券発行会社における株主としての地位を表した有価証券のことをいいます。 平成16年に株券の不発行が認められるようになり、平成21年以降は上場株券については、電子化され、発行されないことになりました。また、会社法施行以降は、株券不発行が原則とされています。 具体的には、次のような記載のある証券の事を指します。 株券記載事項 (株券の記 ...
ReadMore
増資の登記について
司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です この記事では、増資の登記手続きについて解説していきます。 増資の登記 登記事項を変更した場合は、2週間以内に役員変更の登記申請を行う必要があり、これを怠ると、100万円以下の過料が代表者に課される可能性があります。 増資する日が決まっている場合は、速やかに登記手続を行いましょう。 増資の準備物 ご自身で進める場合 ・申請書 ・定款 ・就任承諾書 ・株主総会議事録、取締役会議事録、取締役の決定書 ・株主リスト ・資本金の計上 ...
ReadMore
役員変更登記(就任・退任)について
司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です この記事では、役員の就任・退任の登記手続きについて解説していきます。 役員変更登記 会社の役員(取締役、監査役等)を変更した場合は、2週間以内に役員変更の登記申請を行う必要があり、これを怠ると、100万円以下の過料が代表者に課される可能性があります。 役員の任期が切れそうなとき(最長10年)や、役員を変更することが決まっている場合には、速やかに登記申請を行いましょう。 なお、会社役員と会社は委任関係にあり、従業員は雇用関係に ...
ReadMore
相続開始時の遺産の調査について
司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 この記事では、相続手続きを行う際の、相続財産の調査方法を記載しています。 相続開始時の遺産の調査について 相続人が知らない財産は、意外と多くあります 遺産の調査は、亡くなった方の全ての財産を調べる必要があります。 銀行口座はもちろん、不動産、有価証券、生命保険や損害保険、車両、また、他人と貸し借りしているお金はないかといったことまで、ひとつひとつ調べなければなりません。 また、最近はインターネット上で取引ができ、通帳を発行しないタイプの ...
ReadMore
代表者(代表取締役等)の住所変更登記について
司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です この記事では、代表者の住所変更登記について解説していきます。 代表者の住所変更登記 会社の代表者の住所を変更した場合は、2週間以内に代表者の住所変更登記申請を行う必要があり、これを怠ると、100万円以下の過料が代表者に課される可能性があります。 代表者(代表取締役等)の住所変更が決まっている場合には、速やかに登記申請を行いましょう。 代表者の住所変更登記の準備物 ご自身で進める場合 ・申請書 司法書士にご依頼 ...
ReadMore
本店移転登記について
司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です この記事では、法人の住所変更(本店移転)登記について解説していきます。 本店移転登記 会社の所在地を変更した場合は、2週間以内に本店移転登記申請を行う必要があり、これを怠ると、100万円以下の過料が代表者に課される可能性があります。 本店を移転することが決まっている場合には、速やかに登記申請を行いましょう。 本店移転登記の準備物 ご自身で進める場合 ・申請書 ・株主総会議事録 ・株主リスト ・取締役の決定書、取締役会議事録 ...
ReadMore
相続時の税金の落とし穴
司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 専門外ではありますが、実務で個人的に「怖い」と感じた税金の落とし穴の話をまとめてみました。 この記事をご覧になって、ヒヤッとする方もいると思います。ぜひご覧ください。 相続時の怖い税金の落とし穴 実務で一番怖いのは税金です。誰にも相談せず、ネットや役所に聞きまわって自分で手続を進めた結果、数十万円損をしているケースを何度か見聞きしましたので、ご紹介します。 ◆必ず税理士に相談すべき場合 1.代償分割や、換価分割(不動産を売却して、相続人で分配する)を ...
ReadMore
特定財産承継遺言と遺贈による単独申請の適用時期
司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 法律施行後の適用時期やその変更点について、毎回調べるのが大変なので、記事にしてまとめてみました。 特定財産承継遺言・遺贈について 旧制度と改正法の違いを分かりやすくまとめると、万能だった遺言書が、万能ではなくなり、その分、執行を行いやすくするために、遺言執行者の権限が拡大しました。 特定財産承継遺言 特定財産承継遺言とは、相続させる遺言につけられた名称であり、遺産分割方法の指定です。ここは基本知識なので、説明を省略します。 ...
ReadMore
横浜市の戸籍の郵送請求