住所・氏名の変更登記の知識

司法書士 廣澤真太郎
こんにちは。司法書士の廣澤です。

 

住所氏名の変更登記は、簡単なようでさまざまなバリエーションがあり、一つのミスが命取りになる登記です。

この記事は、備忘録としてよくあるパターンの取り扱いをまとめたものです。ご自由にご覧ください。

[toc]

 

申請時の注意点

 

大原則

・権利移転などの前提としてする登記名義人住所、氏名変更更正登記は、省略できない

・抵当権などの所有権以外の権利の登記を抹消する場合においては、省略できる

・仮登記及び買戻特約の抹消においては、省略できる

 

 

町名のみが変更

〇市〇町1番地 → 〇市◆町1番地 

 

当然に登記記録上変更しているものとみなされる。

よって、証明書添付も住所変更登記も不要。

(行政区画の変更等)
第九十二条 行政区画又はその名称の変更があった場合には、登記記録に記録した行政区画又はその名称について変更の登記があったものとみなす。字又はその名称に変更があったときも、同様とする。
2 登記官は、前項の場合には、速やかに、表題部に記録した行政区画若しくは字又はこれらの名称を変更しなければならない。

 

 

区制施行

〇市〇町1番地 → 〇市〇区◆町1番地

 

地番に変更がない場合は、住所変更登記不要

 

 

〇市〇町1番地 → 〇市〇区◆町3番地

 

地番に変更がある場合は、住所変更登記が必要

 

 

住居表示実施

〇市〇町1番地 → 〇市〇1丁目1番地

 

住居表示実施証明書添付のうえ、住所変更登記が必要

 

 

受付年月日と住所変更日

受付年月日=住所移転日の場合、変更登記でも更正登記でも可とされているが、変更登記が好ましい

 

受付年月日よりも、住所移転日が後の場合、変更登記

 

受付年月日よりも、住所移転日が前の場合、更正登記 

 

甲不動産は住所(氏名)変更、乙不動産は住所(氏名)更正 一括申請不可 ※注意(原因が違うため)

 

 

何度も住所移転

中間省略登記の禁止の例外として、直ちに現在の表示に変更登記が可能

ただし、その変遷の証明が必要

 

 

過去の住所地への移転登記

〇市 → ◆市 → △市 

 

◆市への住所変更登記は不可、現在の△市で申請しなければならない

ただし、登記申請の間までに、当事者が誰も知らない間に、申請人が住所変更をしてしまったというケースでも、後日、更正で対応が可能

 

 

更正と変更

〇市 → ◆市 住所錯誤 → △市 住所移転

氏名錯誤 → 住所移転 

 

1件の申請書で申請可能

 

 

共有者の住所変更

同日、同一の住所に移転 一括申請可

 

同日、同一の住所に移転、共有者が異なっている不動産の変更 一括申請不可 ※注意 (申請人が違うため)

 

同日、同一の住所に移転、所有権+持分を保有する別々の不動産 一括申請可

 

別日に別々の住所に移転 一括申請不可、別個の申請書で申請

 

申請人は、住所を変更した共有者全員、共有者の一人からの単独申請不可

 

※変更後の事項や登記原因が違う場合は不可という扱い

 

 

 

表題部所有者の住所変更

表題部 〇市 現在の住所 △市 

 

所有権保存登記の前提として住所変更登記不要

ただし、変遷の証明が必要

 

 

遺贈者の住所変更

登記上の住所 〇市 遺贈者の最後の住所 △市

 

遺言執行者等が、住所変更登記をしなければならない

 

 

所有権と住所変更

所有権抹消の前提としての住所変更登記 必要

 

仮登記抹消の前提としての仮登記名義人の住所変更 不要

 

仮登記名義人の単独申請による仮登記抹消の際の、権利者たる仮登記義務者の住所変更 必要 ※注意

 

 

抵当権の債務者の変更

抵当権及び根抵当権の債務者の住所氏名の変更 一括申請可

 

債務引受の前提として、連帯債務者全員の住所氏名変更の省略 不可 ※注意

 

 

登録免許税

住所変更 → 氏名変更   不動産1筆1000円

住所変更 → 氏名更正   不動産1筆2000円

住所変更 → 住居表示実施 免税 5条4号

住所更正 → 住居表示実施 免税 5条4号

氏名変更 → 住居表示実施 不動産1筆1000円

 

 

 

知識ページ一覧

知識ページをご覧になりたい方はこちらから

令和6年4月1日以降の不動産登記の取り扱い

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 この記事は、令和6年4月1日以降の取り扱いについて、備忘録としてまとめたものです。 令和6年4月1日以降の手続きの取り扱い 1.外国に住所を有する外国人又は法人の住所証明情報の取扱い 法務省民二第1596号令和5年12月15日通達 日本に住所のない自然人、法人の住所証明情報が変更されます。 対象者 ・外国に住所を有する外国人 又は 外国に住所を有する法人 ・所有権の登記名義人となる者の住所証明情報   住所証明情報 1.外国人  ① 登記名 ...

ReadMore

令和6年4月1日~ 相続人申告登記の制度開始

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 相続人申告登記の通達(法務省民二第535号令和6年3月15日)がでましたので、記事にしてみました。ご自由にご覧ください。 相続人申告登記とは 民法等の一部を改正する法律による相続登記の申請義務化(令和6年4月1日施行)に伴い、創設された制度です。   基本的には、期限内に相続登記を行えば良いため、現状、次のようなケースで、相続登記が行えない場合などに、活用することが考えられます。   ・相続人に非協力的な方がいて、登記申請が行えな ...

ReadMore

一歩踏み込んだ終活!エンディングノート、死後事務、財産管理等、任意後見、遺言書

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 この記事は、4人に1人が認知症とされる現代において、司法書士が終活に際して、お役に立てるサービスについて、ご紹介した記事です。 司法書士が終活に関してできること 司法書士は、生前対策だけでなく、その後の相続手続きについても日ごろから業務として行っている、法律事務のエキスパートです。 ・ライフプランノート(エンディングノート)の作成 ・各契約書や遺言書等の法的書類の組成、公正証書作成のサポート  ・その後の、相続手続き・遺言執行業務をまとめて依頼 &n ...

ReadMore

外国在住者が所有者となる場合の住所証明情報

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 この記事は、外国在住者が不動産を取得する場合の、住所証明情報について、備忘録として記載したものです。 通達 令和5年12月15日 外国在住者(個人)の住所証明情報 次のいずれかを住所証明情報とする。   1.本国等政府の作成に係る書面 + 訳文 登記名義人となる者の本国又は居住国(本国又は居住国の州その他の地域を含む。以下「本国等」という。)の政府(本国等の領事を含み、公証人を除く。以下「本国等政府」という。)の作成に係る住所を証明する書面 ...

ReadMore

株券の廃止手続き

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 この記事では、株券の廃止にあたっての手続きについて、記載していきます。 株券とは 株券とは、株券発行会社における株主としての地位を表した有価証券のことをいいます。 平成16年に株券の不発行が認められるようになり、平成21年以降は上場株券については、電子化され、発行されないことになりました。また、会社法施行以降は、株券不発行が原則とされています。   具体的には、次のような記載のある証券の事を指します。   株券記載事項 (株券の記 ...

ReadMore

増資の登記について

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です この記事では、増資の登記手続きについて解説していきます。   増資の登記 登記事項を変更した場合は、2週間以内に役員変更の登記申請を行う必要があり、これを怠ると、100万円以下の過料が代表者に課される可能性があります。 増資する日が決まっている場合は、速やかに登記手続を行いましょう。   増資の準備物 ご自身で進める場合  ・申請書 ・定款 ・就任承諾書 ・株主総会議事録、取締役会議事録、取締役の決定書 ・株主リスト ・資本金の計上 ...

ReadMore

役員変更登記(就任・退任)について

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です この記事では、役員の就任・退任の登記手続きについて解説していきます。   役員変更登記 会社の役員(取締役、監査役等)を変更した場合は、2週間以内に役員変更の登記申請を行う必要があり、これを怠ると、100万円以下の過料が代表者に課される可能性があります。 役員の任期が切れそうなとき(最長10年)や、役員を変更することが決まっている場合には、速やかに登記申請を行いましょう。   なお、会社役員と会社は委任関係にあり、従業員は雇用関係に ...

ReadMore

相続開始時の遺産の調査について

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 この記事では、相続手続きを行う際の、相続財産の調査方法を記載しています。 相続開始時の遺産の調査について 相続人が知らない財産は、意外と多くあります   遺産の調査は、亡くなった方の全ての財産を調べる必要があります。 銀行口座はもちろん、不動産、有価証券、生命保険や損害保険、車両、また、他人と貸し借りしているお金はないかといったことまで、ひとつひとつ調べなければなりません。 また、最近はインターネット上で取引ができ、通帳を発行しないタイプの ...

ReadMore

代表者(代表取締役等)の住所変更登記について

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です この記事では、代表者の住所変更登記について解説していきます。   代表者の住所変更登記 会社の代表者の住所を変更した場合は、2週間以内に代表者の住所変更登記申請を行う必要があり、これを怠ると、100万円以下の過料が代表者に課される可能性があります。 代表者(代表取締役等)の住所変更が決まっている場合には、速やかに登記申請を行いましょう。   代表者の住所変更登記の準備物 ご自身で進める場合  ・申請書   司法書士にご依頼 ...

ReadMore

本店移転登記について

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です この記事では、法人の住所変更(本店移転)登記について解説していきます。   本店移転登記 会社の所在地を変更した場合は、2週間以内に本店移転登記申請を行う必要があり、これを怠ると、100万円以下の過料が代表者に課される可能性があります。 本店を移転することが決まっている場合には、速やかに登記申請を行いましょう。   本店移転登記の準備物 ご自身で進める場合  ・申請書 ・株主総会議事録 ・株主リスト ・取締役の決定書、取締役会議事録 ...

ReadMore

 

 

ご依頼はこちらから

抵当権抹消のご依頼

  全国対応!書類の郵送のみでスムーズにご自宅の担保を抹消します ※昭和初期の古い抵当権等の一定の場合を除きます   メールで見積り LINEでらくらく相談 【個人】自動見積フォー ...

続きを見る

 

 

HOME

 

参考:改訂-登記名義人の住所氏名変更・更正登記の手引-青山-修

 

 

この記事をかいた人

-不動産登記・税金, 記事一覧