相続登記は自分でできるの!?自分で行う場合のリスクと注意点

司法書士 廣澤真太郎
こんにちは。司法書士の廣澤です。

 

相続登記は、これまで任意とされていましたが、現在は義務化され、一定期間内に手続きを行う必要があります。そのため

できるだけ費用を抑えるために自分で手続きをしたい

と、このように考える方も増えています。

確かに相続登記は、ご自身で進めることが不可能な手続きではありません。

 

お客様には、「何件かに1回、致命的なミスもありますし、リスクがそれなりにありますよ」とお伝えしておりますが、

「具体的にどのような点が危険なのですか?」といった質問をいただくことがあります。

 

リスクそれ自体がわからない状態で、法務や税務を行うのは大変危険ですから、こちらの記事では、自分で相続登記を行う際に想定される主なリスクを整理してみようと思います。

相続登記は何か?の誤解 

相続登記という言葉だけを見ると、「亡くなった方の名義を相続人に書き換えるだけの手続き」と理解されることが多いですが、実際にはもう少し広い意味を持っています。

 

確かに最終的には、不動産の名義を被相続人(亡くなった方)から相続人へ変更する手続きです。しかしその前提として、「誰が相続人なのか」「どの不動産が対象なのか」「どのように分けるのか」といった点を、すべて正確に整理する必要があります。

 

つまり相続登記とは、単なる名義変更の申請ではなく、「相続関係を法律的に確定させたうえで、その結果を登記という形で反映させる手続き」といえます。

この点は誤解されやすく、「とりあえず申請すればなんとかなる手続き」と考えられてしまうこともあります。

 

しかし実務上は、申請そのものよりも、その前段階である資料収集や相続関係の整理のほうが重要であり、むしろ時間もかかる部分です。

 

例えば、被相続人の出生から死亡までの戸籍をすべて集める必要がありますが、集めた戸籍をもとにして、相続人の人数や構成が本当に正しいかどうかを改めて確認する作業も必要になります。

また、その相続人それぞれにどのような権利義務が承継されているのか、遺産分割協議を行う必要があるのか、それとも他の方法で手続きを進められるのかといった点についても、事案ごとに検討が必要になります。

 

このように相続登記は、「書類を提出するだけの手続き」ではなく、「相続関係を正確に確定する一連のプロセス」を含む手続きである点に注意が必要です。

 

そのため、最初の段階で相続登記を単純な名義変更と捉えてしまうと、途中で想定していなかった事実が判明したり、手続きのやり直しが必要になったりすることがあります。

 

 

相続人の確定ミス

ご自身で相続手続きを進める場合に、最初にミスが起こりやすいのが「相続人の確定」です。相続登記においては、「誰が相続人であるか」がすべての前提になるため、ここを誤ると、その後の手続き全体に影響が及びます。

 

特に多いのが、子の相続関係の確認漏れです。例えば、配偶者や子が相続人になるケースであっても、戸籍の読み取りが不十分なまま手続きを進めてしまい、実際には相続人に含まれるべき配偶者を見落としていたり、養子・認知されている子の存在を考慮していなかったりすることがあります。

 

また、過去に相続が発生している場合、いわゆる数次相続が生じていることもあります。この場合、本来であれば既に亡くなっている相続人の地位を、その相続人の相続人が引き継ぐことになるため、関係者の範囲は一気に複雑になります。しかしこの点を見落としたまま進めてしまうと、本来関与すべき相続人が抜けた状態で手続きが進行してしまうことになります。

 

問題となるのは、相続人が確定していない段階で遺産分割協議を進めてしまうケースです。

相続人全員が関与していない協議は、法的には有効なものとならないため、後から相続人の漏れが判明した場合には、協議を一からやり直す必要が生じることがあります。

このような状態になると、当初の合意内容が実質的に無効となり、関係者間の調整も改めて必要となるため、手続きが大きく遅れる原因となります。

 

そのため相続手続きでは、まず相続人を正確に確定させ、そのうえで遺産分割協議を行うという順序を守ることが非常に重要です。ここを逆に進めてしまうと、後戻りが発生しやすく、結果的に大きな負担となることがあります。

 

 

遺産分割協議の不備

ネット上の情報を参考に、付け焼き刃の知識で遺産分割協議書を作成してしまうと、思わぬ不利益やトラブルにつながることがあります。

 

例えば、遺産分割協議を行うと、その内容に基づいて相続が確定するため、後から「やはり相続放棄をしたい」といった対応は基本的にできなくなります。相続放棄は家庭裁判所での手続きによって行う必要がありますが、すでに遺産分割協議が成立している場合には、その前提が崩れてしまうため、結果として選択肢が狭まってしまうことになります。

 

また、遺産分割協議では、債権や債務を自由に分割できるわけではありません。相続財産の中に借入金などの債務が含まれている場合、その取扱いを誤ると、実質的に一部の相続人だけが大きな負担を負うような内容になってしまうこともあります。本来は全体のバランスを踏まえて整理すべきところを十分に理解しないまま進めると、不公平な結果を生む原因となります。

 

さらに、代償分割や換価分割(不動産を売却して現金で分ける方法)を安易に選択した場合も注意が必要です。売却の前提条件や税務的な影響を十分に検討しないまま協議を成立させてしまうと、結果として想定していた金額で分配できず、不満やトラブルにつながることがあります。

 

加えて、法定相続分の理解を単純に適用してしまい、不動産を安易に共有名義とするケースも見受けられます。一見すると公平に分けた形にはなりますが、不動産を共有にすると、その後の売却・管理・修繕などの場面で意見が一致せず、結果的に処分もできないまま長期的な問題に発展することも少なくありません。

 

このように、遺産分割協議は一見シンプルな手続きに見えても、法律上・実務上の前提を誤ると、後から大きな不利益や複雑な問題を招く可能性があります。

 

 

不動産の特定ミス

相続登記の手続きにおいて、意外と多いのが「不動産の特定ミス」です。一見すると単純なように思われる部分ですが、実務上はここでつまずくケースも少なくありません。

例えば、相続財産として把握していた不動産の情報が、実際の登記簿上の内容と一致していないケースがあります。住所表示と地番が異なっていることはよくあり、住居表示だけを見て判断してしまうと、正確な不動産を特定できないことがあります。

 

固定資産税課税明細書には記載のない、非課税の土地が存在する可能性もあります。土地については一筆ごとに登記がされているため、複数の筆に分かれている場合や、道路部分・私道・共有持分などが含まれている場合には、すべてを正確に把握する必要があります。しかし、固定資産税の課税明細だけをもとに判断してしまうと、一部の土地が漏れていたり、逆に相続対象ではないものを含めてしまうこともあります。

 

さらに、古い登記の場合には、地番変更や合筆・分筆が行われていることもあり、現在の登記情報と当時の資料が一致しないこともあります。このような場合には、法務局での登記事項証明書の確認や、公図・地積測量図などをもとに正確に突き合わせる作業が必要になります。

 

このように、不動産の特定は単に「住所を確認する作業」ではなく、「登記情報と現況資料を照合し、相続対象を正確に確定する作業」です。この段階で誤りがあると、その後の遺産分割協議や登記申請そのものに影響が出るため、非常に重要なポイントとなります。

 

仮に数十年後になって、不動産の承継漏れが発見され、改めて登記をやり直す必要が生じた場合、それは当時の手続きを適切に完了させていなかったことに起因する負担を、将来に先送りしてしまったに過ぎません。結果として、本来であれば一度で整理できていたはずの相続関係が、時間を経て再び問題として顕在化することになります。

書類不備による申請却下・補正対応

相続登記を自分で行う場合に見落とされがちな点として、「書類不備による補正対応」があります。

相続登記の申請は一度提出すれば終わりというものではなく、内容に不備があれば法務局から補正(修正)を求められることがあります。

 

この補正対応は、単に書類を直して再提出すればよいというものではなく、どの法務局に申請したかによって対応方法や進め方も変わってきます。不動産の所在地ごとに管轄の法務局が定められているため、原則として申請はその管轄ごとに行う必要があります。

そして補正が必要になった場合も、申請を行ったその法務局に出向くか、指示に従って再提出等の対応を行うことになります。複数の不動産が異なる管轄にまたがっている場合には、それぞれの法務局とのやり取りが発生することもあり、想像以上に手間がかかることがあります。

 

また、補正対応には一定の期限やルールがあり、対応が遅れると申請が一旦取り下げ扱いになることもあるため、慣れていない場合には精神的な負担も大きくなりがちです。

 

さらに、このような対応をすべてご自身で行う場合、結果として交通費や時間的コストが積み重なり、当初想定していたほどの経済的メリットが得られないケースも少なくありません。

 

実務的には、司法書士に依頼した場合でも数万円程度の費用で済むケースが多く、その範囲で書類作成から申請、補正対応まで一括して対応できることを考えると、トータルの負担は必ずしも自分で行う方が軽いとは限りません。

 

このように、相続登記は「提出して終わり」ではなく、補正対応まで含めて手続き全体を考える必要がある点に注意が必要です。

 

戸籍収集の大変さ

相続登記の中でも、実際にご自身で手続きを進める際に負担となりやすいのが「戸籍収集」です。一見すると、市役所で戸籍を取得するだけの単純な作業に思われがちですが、実務上は想像以上に時間と手間がかかる工程です。

 

なお、親子間の相続であれば、広域交付制度が整備されたことにより、一昔前と比べると戸籍の収集はスムーズになっています。

しかし一方で、第二順位・第三順位の直系尊属や、兄弟姉妹・甥姪が関係する相続の場合には、従来どおり、本籍地ごとの市区町村役場に対して個別に請求を行う必要があります。

つまり、現在の戸籍だけでは不十分で、過去に本籍地の変更や戸籍の改製が行われている場合には、複数の自治体に対して順番に請求を行わなければなりません。

そのため、最初の戸籍を取得した後も、「次はこの市役所」「さらにその前は別の自治体」といったように、芋づる式に請求先が増えていくことがあり、慣れていない場合には全体像を把握するだけでも時間がかかります。

 

また、取得した戸籍を読み解く作業も簡単ではありません。特に古い戸籍は手書きで記載されているものも多く、家族関係の表記方法も現在とは異なるため、相続関係を正確に整理するには一定の知識が必要になります。

さらに、戸籍の収集は平日に役所へ請求する必要があるため、仕事をされている方にとっては時間的な制約も大きくなります。郵送での請求も可能ですが、その場合でも書類の準備や往復の時間がかかり、思った以上に手続きが長期化することもあります。

 

このような作業をすべてご自身で行う場合、結果として何日も時間を取られることになり、交通費や郵送費などの実費も積み重なっていきます。

一方で、司法書士に依頼した場合には、数万円程度の費用でこれらの戸籍収集から相続関係の整理まで一括して対応できるケースも多く、トータルで見れば必ずしも自分で行う方が経済的とは限りません。

 

戸籍収集は単なる「書類取り寄せ」ではなく、相続関係を正確に確定するための重要な基礎作業であり、ここでの負担の大きさが相続手続き全体の難しさにつながっていると言えます。

 

将来のトラブルリスク

相続登記を自分で行う場合、手続きが一度完了してしまえば安心と考えられがちですが、実務上は「将来に問題が顕在化するリスク」も見逃せません。

 

不動産が共有名義となっている場合には、時間の経過とともに相続がさらに重なり、共有者が増えていくことがあります。その結果、売却や管理について関係者全員の同意を得ることが難しくなり、事実上不動産を動かせない状態になることもあります。

さらに、当初の相続手続きに不備があった場合、その後の売却や担保設定などの場面で問題が発覚し、改めて過去の相続関係を整理し直さなければならないケースもあります。この場合、すでに関係者が亡くなっていたり、相続人が全国に散らばっていたりすることもあり、当初の手続き以上に複雑化することがあります。

 

別管轄の不動産は登記をしないで放置していたケースや、そもそも不動産の存在を忘れていたケース、誰にも相談せず不動産を共有とすることにしてしまったケースや、売却予定なのに住んでもいない方の名義にしたことで税金が数百万円発生するケースなど、いろいろな事例があります。

 

このように、相続登記は「その時点で終わる手続き」というよりも、その後の不動産の利用や承継にも影響する手続きです。そのため、目の前の手続きを完了させることだけでなく、将来の権利関係が安定しているかという視点も重要になります。

一度の判断や手続きの不備が、長期的には大きな負担や制約につながる可能性がある点に注意が必要です。

 

専門家に依頼するメリット

相続登記は、ご自身で手続きを行うことも可能ですが、専門家に依頼することで得られるメリットは単なる「手間の削減」にとどまりません。むしろ、将来的なリスク回避や、見えない損失の防止という観点に大きな意味があります。

1.経済的リスクの回避

まず一つ目は、経済的リスクの回避という点です。

相続手続きにおける判断ミスは、場合によっては数百万円から数千万円単位の損失につながることもあります。不動産の共有化による処分困難、売却タイミングの逸失、税務上の不利益など、目に見えにくいリスクが潜んでいます。これらを未然に防ぐための予防的なアドバイスを受けられるにもかかわらず、司法書士報酬は多くの場合数万円程度に収まることが一般的です。

 

2.致命的なミスの防止

二つ目は、致命的なミスの防止です。相続人の見落としや、遺産分割協議の不備といった問題は、一度発生すると手続きのやり直しや関係者間の調整が必要となり、大きな負担につながります。専門家が関与することで、こうした法的に重大なミスを未然に防ぎ、適切な順序で手続きを進めることが可能になります。

 

3.相続トラブルの予防

三つ目は、相続トラブルの予防という観点です。相続は、法律問題であると同時に、家族間の感情や関係性が絡む問題でもあります。専門家が第三者として関与することで、感情的な対立を避けつつ、客観的な基準に基づいた整理が可能となり、結果としてトラブルの発生を抑える効果があります。

 

4.手続きの全体像の把握

四つ目は、手続き全体の見通しが立つという点です。戸籍収集から相続関係の確定、遺産分割協議書の作成、登記申請まで、一連の流れを正確に把握して進めることができるため、「どこで何をすればよいか分からない」という状態になりにくくなります。

 

5.時間的なコストの軽減

五つ目は、時間的負担の軽減です。相続登記には平日に役所へ出向く必要がある場面も多く、書類の収集や確認作業にも相応の時間がかかります。これらを専門家に任せることで、日常生活や本業への影響を最小限に抑えることができます。

 

このように、専門家に依頼することは単なる事務作業の外注ではなく、「将来のリスクを含めた全体最適」を図る手段であるといえます。

結果として、費用以上の安心と安定を得られるケースも少なくありません。

 

まとめ

相続登記は、一見すると書類を揃えて申請するだけの手続きに見えますが、実際には相続人の確定、戸籍収集、遺産分割協議、不動産の特定など、多くの確認と判断が必要となる複雑な手続きです。

 

また、手続きそのものが完了したとしても、その過程での見落としや判断ミスが、将来的なトラブルや追加の手続きにつながる可能性もあります。

 

ご自身で進めることができる手続きではありますが、正確性や将来のリスクまで含めて考えると、専門的な判断が求められる場面は少なくありません。

 

当事務所では、相続登記に関するご相談から戸籍収集、遺産分割協議書の作成、登記申請まで一貫して対応しております。

「自分で進めるべきかどうか分からない」といった段階でも構いませんので、お気軽にご相談ください。

 

 

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