会社の設立と税金のあれこれ

司法書士 廣澤真太郎
こんにちは。司法書士・行政書士の廣澤です。

税金は司法書士の専門分野ではないので、個人的な備忘録として税金面で見た会社設立の知識をまとめた記事です。ご自由にご覧下さい。

 

 

[toc]

 

会社の設立とあれこれ

 

法人成りと税金についてのメリットとデメリット

個人事業主から法人に移行することを「法人成り」と言います。

 

メリット

1.給与所得控除の適用がある

2.消費税納税義務が2事業年度免除される

3.認められる必要経費が増える

4.社会的信用度の上昇

5.有限責任にできる

 

デメリット

1.赤字でも法人住民税(均等割)を払う ※最低約7万円

2.社会保険料負担が発生する

3.事務負担が増える ※士業への報酬、税務申告や登記費用など

 

ポイント

メリットとデメリットは総合的に判断する必要があります。

法人化すると売上がなくとも法人税が発生し、社会保険料、登記費用、決算申告費用などの負担が増えますし、それらは少額ではありません。

資金面で余裕がでてきたか? 事業拡大を考えているか? などお金以外の面も考慮する必要があります。

一般的には、所得400万円または売上が年商1000万円を超えたあたりで、税務上有利になるといわれています。

 

 

資本金の決め方

資本金とは、主に会社設立時に準備できた出資金のうち、資本金として計上したものを指します。

つまり、現在の預金残高ではありませんし、会社の安全性を示すものでもありません。最低でも資本金の額以上のお金が会社になければ、株主への配当が行われないという程度の理解でよいでしょう。

 

法律上、1円以上であればいくらでも良いとされていますが、法人化は信用性向上が目的の一部かと思いますから、最低でも100万円以上にするのが一般的です。

税務面では、1000万円超と1億円超の場合にそれぞれ、法人税の均等割や優遇措置(中小企業税制.PDF)に違いがあります。

(配当等の制限)
第四百六十一条 次に掲げる行為により株主に対して交付する金銭等(当該株式会社の株式を除く。以下この節において同じ。)の帳簿価額の総額は、当該行為がその効力を生ずる日における分配可能額(その他資本剰余金とその他利益剰余金)を超えてはならない。

 

 

事業年度の決め方

会社を設立すると、毎事業年度末に決算作業を行う事となります。決算は大きな事務負担があるため、年度末は業界として忙しくない時期を選択するのが良いでしょう。

4,6,9,12月とする会社が多いようです。

 

決算期の決定

✅ グループ会社で事業年度は合わせる

✅ 年間を通して在庫が最も少ない時期にする

✅ 顧問税理士の繁忙期を避ける ※2~3月頃など

 

在庫などの引継ぎ

在庫を引き継ぐ際には、次の方法のうち、売買又は使用貸借とするのが一般的です。

会社に売却したこととする場合の時価は、低すぎても高すぎてもいけませんので「通常他に販売する価額」の70%~100%の金額の間で決定するのが良いとされています。

この時価の計算は、不動産以外であれば定率法での未償却残額や帳簿価額などをもとにすることが多いようですが、ご不安な方は税理士に事前にご相談いただくのが良いでしょう。

・個人から法人に贈与する

・個人から法人に売却する

・個人から法人に賃貸or使用貸借する

・設立時に現物出資する ※煩雑で量が多いと利用しづらい

 

税金面の注意ポイント

・贈与は個人側にも譲渡取得税が課税される可能性がある

・売却は適正な時価でない場合は受贈益に課税される可能性がある

・賃貸は個人に所得が発生するので、確定申告義務が生じる

・不動産は登記手続きが必要になり、不動産取得税、登録免許税、専門家報酬も発生

 

現物出資と課税

現物出資は譲渡所得税の対象になります。

動産の場合は総合課税であり、1年間に50万円の特別控除額ありますから、「譲渡価額-(取得費+譲渡費用)」が50万円未満であれば、個人の側に譲渡所得税は発生しません。

つまり、現物出資するときの時価を確認し、差益が50万円までなら課税されないということです。

国税庁:譲渡所得の計算のしかた(総合課税)

 

 

登記申請のご相談

商業(会社・法人)登記のご依頼

    全国対応!郵送・メール・電話のみでスピーディに手続き可能です。 ※会社設立などの一部業務を除く   ネットで登記申請書を作成するサービスなんかもあるけど…  &n ...

続きを見る

 

知識ページ一覧

知識ページをご覧になりたい方はこちらから

令和6年4月1日~ 相続人申告登記の制度開始

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 相続人申告登記の通達(法務省民二第535号令和6年3月15日)がでましたので、記事にしてみました。ご自由にご覧ください。 相続人申告登記とは 民法等の一部を改正する法律による相続登記の申請義務化(令和6年4月1日施行)に伴い、創設された制度です。   基本的には、期限内に相続登記を行えば良いため、現状、次のようなケースで、相続登記が行えない場合などに、活用することが考えられます。   ・相続人に非協力的な方がいて、登記申請が行えな ...

ReadMore

一歩踏み込んだ終活!エンディングノート、死後事務、財産管理等、任意後見、遺言書

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 この記事は、4人に1人が認知症とされる現代において、司法書士が終活に際して、お役に立てるサービスについて、ご紹介した記事です。 司法書士が終活に関してできること 司法書士は、生前対策だけでなく、その後の相続手続きについても日ごろから業務として行っている、法律事務のエキスパートです。 ・ライフプランノート(エンディングノート)の作成 ・各契約書や遺言書等の法的書類の組成、公正証書作成のサポート  ・その後の、相続手続き・遺言執行業務をまとめて依頼 &n ...

ReadMore

外国在住者が所有者となる場合の住所証明情報

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 この記事は、外国在住者が不動産を取得する場合の、住所証明情報について、備忘録として記載したものです。 通達 令和5年12月15日 外国在住者(個人)の住所証明情報 次のいずれかを住所証明情報とする。   1.本国等政府の作成に係る書面 + 訳文 登記名義人となる者の本国又は居住国(本国又は居住国の州その他の地域を含む。以下「本国等」という。)の政府(本国等の領事を含み、公証人を除く。以下「本国等政府」という。)の作成に係る住所を証明する書面 ...

ReadMore

株券の廃止手続き

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 この記事では、株券の廃止にあたっての手続きについて、記載していきます。 株券とは 株券とは、株券発行会社における株主としての地位を表した有価証券のことをいいます。 平成16年に株券の不発行が認められるようになり、平成21年以降は上場株券については、電子化され、発行されないことになりました。また、会社法施行以降は、株券不発行が原則とされています。   具体的には、次のような記載のある証券の事を指します。   株券記載事項 (株券の記 ...

ReadMore

増資の登記について

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です この記事では、増資の登記手続きについて解説していきます。   増資の登記 登記事項を変更した場合は、2週間以内に役員変更の登記申請を行う必要があり、これを怠ると、100万円以下の過料が代表者に課される可能性があります。 増資する日が決まっている場合は、速やかに登記手続を行いましょう。   増資の準備物 ご自身で進める場合  ・申請書 ・定款 ・就任承諾書 ・株主総会議事録、取締役会議事録、取締役の決定書 ・株主リスト ・資本金の計上 ...

ReadMore

役員変更登記(就任・退任)について

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です この記事では、役員の就任・退任の登記手続きについて解説していきます。   役員変更登記 会社の役員(取締役、監査役等)を変更した場合は、2週間以内に役員変更の登記申請を行う必要があり、これを怠ると、100万円以下の過料が代表者に課される可能性があります。 役員の任期が切れそうなとき(最長10年)や、役員を変更することが決まっている場合には、速やかに登記申請を行いましょう。   なお、会社役員と会社は委任関係にあり、従業員は雇用関係に ...

ReadMore

相続開始時の遺産の調査について

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 この記事では、相続手続きを行う際の、相続財産の調査方法を記載しています。 相続開始時の遺産の調査について 相続人が知らない財産は、意外と多くあります   遺産の調査は、亡くなった方の全ての財産を調べる必要があります。 銀行口座はもちろん、不動産、有価証券、生命保険や損害保険、車両、また、他人と貸し借りしているお金はないかといったことまで、ひとつひとつ調べなければなりません。 また、最近はインターネット上で取引ができ、通帳を発行しないタイプの ...

ReadMore

代表者(代表取締役等)の住所変更登記について

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です この記事では、代表者の住所変更登記について解説していきます。   代表者の住所変更登記 会社の代表者の住所を変更した場合は、2週間以内に代表者の住所変更登記申請を行う必要があり、これを怠ると、100万円以下の過料が代表者に課される可能性があります。 代表者(代表取締役等)の住所変更が決まっている場合には、速やかに登記申請を行いましょう。   代表者の住所変更登記の準備物 ご自身で進める場合  ・申請書   司法書士にご依頼 ...

ReadMore

本店移転登記について

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です この記事では、法人の住所変更(本店移転)登記について解説していきます。   本店移転登記 会社の所在地を変更した場合は、2週間以内に本店移転登記申請を行う必要があり、これを怠ると、100万円以下の過料が代表者に課される可能性があります。 本店を移転することが決まっている場合には、速やかに登記申請を行いましょう。   本店移転登記の準備物 ご自身で進める場合  ・申請書 ・株主総会議事録 ・株主リスト ・取締役の決定書、取締役会議事録 ...

ReadMore

相続時の税金の落とし穴

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 専門外ではありますが、実務で個人的に「怖い」と感じた税金の落とし穴の話をまとめてみました。 この記事をご覧になって、ヒヤッとする方もいると思います。ぜひご覧ください。 相続時の怖い税金の落とし穴 実務で一番怖いのは税金です。誰にも相談せず、ネットや役所に聞きまわって自分で手続を進めた結果、数十万円損をしているケースを何度か見聞きしましたので、ご紹介します。 ◆必ず税理士に相談すべき場合 1.代償分割や、換価分割(不動産を売却して、相続人で分配する)を ...

ReadMore

 

HOME

会社法

参考:司法書士&行政書士に読んでほしい 会社設立時の税務の話 

 

 

 

 

 

この記事をかいた人

-会社登記・法務, 記事一覧