相続人が誰もいない場合

司法書士 廣澤真太郎
こんにちは。司法書士の廣澤です。

この記事は、相続人が誰もいない場合の手続きについて記載したものです。

ご自由にご覧ください。

相続人が誰もいない場合に、財産はどうなる?

わかりづらいですが、まず、相続財産は法人になります。財産それ自体が法人格を持つということです。

そして、その相続財産を管理及び清算するためには、利害関係人又は検察官からの請求により、家庭裁判所で相続財産の清算人を選任してもらう必要があります。

第六章 相続人の不存在
(相続財産法人の成立)
第九百五十一条 相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。
(相続財産の清算人の選任)
第九百五十二条 前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の清算人を選任しなければならない。
2 省略

 

その後、条文の流れに従って、公告や清算の手続が行われていき、特別縁故者や共有者がいないときには、最終的に、財産は国庫に帰属します。

(持分の放棄及び共有者の死亡)
第二百五十五条 共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。
(特別縁故者に対する相続財産の分与)
第九百五十八条の二 前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。
2 前項の請求は、第九百五十二条第二項の期間の満了後三箇月以内にしなければならない。
(残余財産の国庫への帰属)
第九百五十九条 前条の規定により処分されなかった相続財産は、国庫に帰属する。この場合においては、第九百五十六条第二項の規定を準用する。
第九百五十六条 省略
2 前項の場合には、相続財産の清算人は、遅滞なく相続人に対して清算に係る計算をしなければならない。

 

注意点として、親族の方だとしても、すでに事務管理している場合などを除いて、遺産の管理権限は、当然ないということになります。

 

 

国庫帰属するまでの大雑把な流れ

① 家庭裁判所が、相続財産清算人が選任された旨と、相続人があるならば一定期間内に権利主張すべき旨を公告 6か月

② ①の期間内に、相続人清算人が財産調査後、すべての相続債権者や受遺者に対して、請求の申出をすべき旨の公告 2か月以上

③ 特別縁故者に対する相続財産の分与に関する期間の経過 ①の公告後、3か月

④ 財産を国庫に引継ぎ

(相続財産の清算人の選任)
第九百五十二条 省略
2 前項の規定により相続財産の清算人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なく、その旨及び相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、六箇月を下ることができない。
(相続債権者及び受遺者に対する弁済)
第九百五十七条 第九百五十二条第二項の公告があったときは、相続財産の清算人は、全ての相続債権者及び受遺者に対し、二箇月以上の期間を定めて、その期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、同項の規定により相続人が権利を主張すべき期間として家庭裁判所が公告した期間内に満了するものでなければならない。
2 第九百二十七条第二項から第四項まで及び第九百二十八条から第九百三十五条まで(第九百三十二条ただし書を除く。)の規定は、前項の場合について準用する。

 

 

相続財産清算人

主な仕事内容

1.財産調査、財産目録の作成、管理の計算、状況報告

2.「法定代理人」の地位を有し、財産の包括的な管理(保存、利用改良)

3.管理費用の支弁、特別縁故者への分与

4.請求申出公告

5.必要に応じて、家庭裁判所の許可を得て、不動産・株式の売却や遺産分割協議を行う等

6.国庫への財産引継ぎ

 

(管理人の職務)
第二十七条 前二条の規定により家庭裁判所が選任した管理人は、その管理すべき財産の目録を作成しなければならない。この場合において、その費用は、不在者の財産の中から支弁する。
2 省略
3 省略
(管理人の権限)
第二十八条 管理人は、第百三条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。不在者の生死が明らかでない場合において、その管理人が不在者が定めた権限を超える行為を必要とするときも、同様とする。
(相続財産の清算人の報告)
第九百五十四条 相続財産の清算人は、相続債権者又は受遺者の請求があるときは、その請求をした者に相続財産の状況を報告しなければならない。
(相続財産の清算人の代理権の消滅)
第九百五十六条 省略
2 前項の場合には、相続財産の清算人は、遅滞なく相続人に対して清算に係る計算をしなければならない。
(権利を主張する者がない場合)
第九百五十八条 第九百五十二条第二項の期間内に相続人としての権利を主張する者がないときは、相続人並びに相続財産の清算人に知れなかった相続債権者及び受遺者は、その権利を行使することができない。

 

相続財産清算人になるには、資格が必要か?

相続財産清算人に資格は必要ありませんが,被相続人との関係や利害関係の有無などを考慮して,相続財産を清算するのに最も適任と認められる人を選びます。

親族が就任する事もありますし、弁護士や司法書士が選任される場合もあります。統計によると、司法書士も増えてはいますが、そのほとんどが弁護士です。

裁判所:相続財産清算人の選任

 

 

相続財産清算人選任の申し立てにかかる費用

相続財産清算人の選任申立てを依頼する場合は、司法書士への報酬、その他実費が発生します。

(例)

・司法書士報酬 数万円~十数万円

・戸籍収集にかかる費用 数千円~数万円

・予納金(必要な場合) 30~100万円 ※遺産が少ない場合は、予納金が必要になる場合があります。

・収入印紙、郵券、公告料 数千円~

 

申立人となることができる人

・利害関係人(被相続人の債権者、特定遺贈を受けた者、特別縁故者など)

・検察官

 

まとめ

このようなケースで最も有効なのは、公正証書遺言書の作成等による生前対策です。

相続人がいない場合、関係の深い友人知人、親族の方がいたとしても、原則として、最終的に遺産をすべて国に没収されるということですから、これは非常にもったいないことです。

 

法的に有効な遺言書が残されていれば、遺産を死後に、応援したい公益法人に寄付することも、お世話になった友人知人に遺贈することも可能です。その手続きを行う司法書士や弁護士などの専門家を、遺言執行者として指定しておくこともできます。

こういった生前対策については、外部から本人には、とても話しづらいことではありますが、提案することは全く卑しいことではなく、むしろ本人のためになりますから、相続人不存在が予測される場合には、積極的に今後のことをお話されることを推奨します。

 

遺言作成は必要なのか?不要なのか?

遺言書を必ず作成すべき場合もありますが、とくに必要でないというケースもあります。よろしければ、下記チャートをご活用ください。

 

Q1
子なし夫婦(養子含む)に該当しますか?

はい・いいえをクリックすることで遺言作成の必要性、推奨度を簡単に診断可能です

 

 

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参考:相続財産管理人、不在者財産管理人に関する実務 財産管理、相続人の探索、選任の申立て、相続放棄の対応、権限外行為許可、相続財産の清算、登記、不在者への対応、失踪宣告

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