令和6年4月1日~ 相続人申告登記の制度開始

司法書士 廣澤真太郎
こんにちは。司法書士の廣澤です。

相続人申告登記の通達(法務省民二第535号令和6年3月15日)がでましたので、記事にしてみました。ご自由にご覧ください。

相続人申告登記とは

民法等の一部を改正する法律による相続登記の申請義務化(令和6年4月1日施行)に伴い、創設された制度です。

 

基本的には、期限内に相続登記を行えば良いため、現状、次のようなケースで、相続登記が行えない場合などに、活用することが考えられます。

 

・相続人に非協力的な方がいて、登記申請が行えない場合

・相続人に行方不明者がおり、かつ、何らかの事情で管理人制度は利用できない場合

・遺産分割協議に時間がかかるが、持分を売却されると困る等の理由で、法定相続登記を行いたくない場合

 

過去記事

相続登記の義務化、相続人申告登記について

(令和3年4月時点) 数年以内に法令が改正され、相続登記が義務となり、期限内に登記しないと過料が課されるというニュースに驚いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。 この記事では相続による所有権移転登 ...

続きを見る

 

相続人申告登記の特徴

相続人申告登記を行うことで、法定相続登記の申請義務を免れることができます。

 

ただし、その後の遺産分割協議が調った後、3年以内の申請義務を免れることはできず、また、将来的に不動産を処分(売却・担保設定)する場合は、別途、相続登記を行う必要があります。

 

よって、前述のような事情がない場合は、二度手間となるだけなので、原則として、相続登記を行うべきです。

過去記事

相続人申告登記・相続登記の期限

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士・行政書士の廣澤です。 この記事は、令和6年から相続登記が義務化されることにより設けられる期限の考え方を備忘録としてまとめたものです。ご自由にご覧下さい。 & ...

続きを見る

 

提出書類

法定相続登記をする場合と、ほとんど同じです。

・申出書

・(相続関係説明図)

・登記名義人の同一性を証する情報

・関係性を証する戸籍謄本等 ※法定相続情報一覧図の右上の番号を記載することで省略可能

・(申出人の住所証明情報) ※日本に住民票がある方であれば、①生年月日 ②氏名のフリガナ(外国籍の方はローマ字氏名)を記載すれば、省略可能

・委任状

 

添付書面の原本還付申請、補正等の取り扱いについて

不動産登記の場合とほとんど同じ扱い

 

手続きのポイント

備忘録としての記載です。権利義務を公示するものではなく、過料を免れる以外の効果はないため、法定相続登記よりも簡易的な扱いになっています。

・オンライン申請可能 ※申出書に電子署名、押印不要(添付書類には必要・資格者代理人は必要)

・他の相続人の分も含め、代理での手続可能

・法定相続分の確定不要

・非課税

・申出後、住所氏名の変更、相続放棄した相続人がいる場合などには、再度、申出手続きが必要

 

申出の目的の例

・相続人申告

・何番付記何号名義人氏名変更

・何番付記何号名義人住所変更

・何番付記何号名義人氏名更正

・何番付記何号名義人住所更正

・何番付記何号相続人申告事項更正

・何番付記何号名義人抹消

・何番付記何号名義人一部抹消

 

申出原因の例

・年月日相続人申出

・年月日氏名変更

・年月日住所移転

・錯誤

 

 

一括申請

(1)①申出人の氏名及び住所② 代理人によって申出をするときは、当該代理人の氏名又は名称及び住所並びに代理人が法人であるときはその代表者の氏名③ 申出の目的が、同一であるときで、同一の登記所の管轄区域内にある一又は二以上の不動産の申し出をおこなうとき

(2)同一の登記所の管轄区域内にある一又は二以上の不動産について、同一の相続人申告名義人の氏名又は住所についての変更又は更正の申出をするとき。

(3)同一の登記所の管轄区域内にある二以上の不動産について、抹消の理由並びに抹消すべき次に掲げる事項が同一【(エ) 所有権の登記名義人(申出人が所有権の登記名義人の相続人の地位を相続により承継した者であるときは、中間相続人)について相続が開始した年月日 又は 中間相続人があるときは、次に掲げる事項(当該事項が既に所有権の登記に付記されているときを除く )。a 中間相続人の氏名及び最後の住所b 中間相続人が所有権の登記名義人の相続人である旨c 所有権の登記名義人について相続が開始した年月日】である相続人申告登記の抹消の申出をするとき。

 

費用等

非課税のため、送料や登記簿調査費用などの実費。

司法書士に依頼する場合は、別途報酬。

まとめ

いかがでしたしょうか。内容としては、ほとんど法定相続登記を場合と同様であり、例えば、父が亡くなり、続いて母、そして子と次々に相続が発生しているような場合には、相続登記同様に、一般の方が手続きを行うのは困難になるものと思われます。

 

また、原則として、相続登記を行えばよいのであり、相続人申告登記を行うのは、特別な事情がある場合に限られるので、まずは、一度、お近くの司法書士に、ご自身の状況はどういった状況なのかや、どのような手続きを選択すべきなのかについて、ご相談いただくことを推奨いたします。

 

当事務所では、上記の手続きを、戸籍収集から申請まで、ひとまとまりで受任することも可能ですので、お気軽にお問い合わせください。

 

 

知識ページ一覧

知識ページをご覧になりたい方はこちらから

外国籍の日本在住者が日本で起業する際に、気を付けなければならないこと

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 こちらの記事は、最近増えた日本在住の外国籍の方の起業に関する知識を、備忘録でまとめたものです。 HP:出入国在留管理庁   在留資格 在留資格とは、日本における滞在や、一定の活動を認める資格の事です。 大まかに、制限が少なく無制限に滞在することも認められる場合がある「居住資格」と、活動や滞在期間に制限を設けている「活動資格」に分類され、さらに細かく種類が分けられており、細かい決まりがあります。   一定の在留資格がなければ、日本で ...

ReadMore

不動産の共有状態の解消について

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 こちらの記事は、様々な理由で、共有状態となっている不動産を、どのように解消するのかについて記載した記事です。 不動産の「共有」とは? 不動産を複数名で、所有している状態のことです。 ご夫婦で持分2分の1ずつ所有している場合は、「不動産を2名で共有している」と言いかえることができます。     不動産の共有の問題点 節税目的の場合や融資の受けやすさなどから、共有で不動産の取得を行う方も多くいらっしゃいますが、一般的に、共有状態はデメ ...

ReadMore

相続や遺言書の相談 税理士と弁護士と司法書士、どこに相談すればいい?

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士・行政書士の廣澤です。 この記事は、相続・遺言書の相談をどこにすればよいのか?騙されたりしないだろうかと、ご不安な方向けの記事です。   相続や遺言書の相談先 結論として、”最初”に、司法書士にご相談いただくことをおすすめします!     司法書士に相談すべき理由 まずは、各相談先の特徴からご確認ください。 相談先 税理士 相続税、不動産を売る場合は譲渡所得税の相談ができる 弁護士 揉めている場合に、味方になって交渉してくれる 司法書 ...

ReadMore

令和6年4月1日以降の不動産登記の取り扱い

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 この記事は、令和6年4月1日以降の取り扱いについて、備忘録としてまとめたものです。 令和6年4月1日以降の手続きの取り扱い 1.外国に住所を有する外国人又は法人の住所証明情報の取扱い 法務省民二第1596号令和5年12月15日通達 日本に住所のない自然人、法人の住所証明情報が変更されます。 対象者 ・外国に住所を有する外国人 又は 外国に住所を有する法人 ・所有権の登記名義人となる者の住所証明情報   住所証明情報 1.外国人  ① 登記名 ...

ReadMore

令和6年4月1日~ 相続人申告登記の制度開始

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 相続人申告登記の通達(法務省民二第535号令和6年3月15日)がでましたので、記事にしてみました。ご自由にご覧ください。 相続人申告登記とは 民法等の一部を改正する法律による相続登記の申請義務化(令和6年4月1日施行)に伴い、創設された制度です。   基本的には、期限内に相続登記を行えば良いため、現状、次のようなケースで、相続登記が行えない場合などに、活用することが考えられます。   ・相続人に非協力的な方がいて、登記申請が行えな ...

ReadMore

一歩踏み込んだ終活!エンディングノート、死後事務、財産管理等、任意後見、遺言書

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 この記事は、4人に1人が認知症とされる現代において、司法書士が終活に際して、お役に立てるサービスについて、ご紹介した記事です。 司法書士が終活に関してできること 司法書士は、生前対策だけでなく、その後の相続手続きについても日ごろから業務として行っている、法律事務のエキスパートです。 ・ライフプランノート(エンディングノート)の作成 ・各契約書や遺言書等の法的書類の組成、公正証書作成のサポート  ・その後の、相続手続き・遺言執行業務をまとめて依頼 &n ...

ReadMore

外国在住者が所有者となる場合の住所証明情報

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 この記事は、外国在住者が不動産を取得する場合の、住所証明情報について、備忘録として記載したものです。 通達 令和5年12月15日 外国在住者(個人)の住所証明情報 次のいずれかを住所証明情報とする。   1.本国等政府の作成に係る書面 + 訳文 登記名義人となる者の本国又は居住国(本国又は居住国の州その他の地域を含む。以下「本国等」という。)の政府(本国等の領事を含み、公証人を除く。以下「本国等政府」という。)の作成に係る住所を証明する書面 ...

ReadMore

株券の廃止手続き

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 この記事では、株券の廃止にあたっての手続きについて、記載していきます。 株券とは 株券とは、株券発行会社における株主としての地位を表した有価証券のことをいいます。 平成16年に株券の不発行が認められるようになり、平成21年以降は上場株券については、電子化され、発行されないことになりました。また、会社法施行以降は、株券不発行が原則とされています。   具体的には、次のような記載のある証券の事を指します。   株券記載事項 (株券の記 ...

ReadMore

増資の登記について

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です この記事では、増資の登記手続きについて解説していきます。   増資の登記 登記事項を変更した場合は、2週間以内に役員変更の登記申請を行う必要があり、これを怠ると、100万円以下の過料が代表者に課される可能性があります。 増資する日が決まっている場合は、速やかに登記手続を行いましょう。   増資の準備物 ご自身で進める場合  ・申請書 ・定款 ・就任承諾書 ・株主総会議事録、取締役会議事録、取締役の決定書 ・株主リスト ・資本金の計上 ...

ReadMore

役員変更登記(就任・退任)について

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です この記事では、役員の就任・退任の登記手続きについて解説していきます。   役員変更登記 会社の役員(取締役、監査役等)を変更した場合は、2週間以内に役員変更の登記申請を行う必要があり、これを怠ると、100万円以下の過料が代表者に課される可能性があります。 役員の任期が切れそうなとき(最長10年)や、役員を変更することが決まっている場合には、速やかに登記申請を行いましょう。   なお、会社役員と会社は委任関係にあり、従業員は雇用関係に ...

ReadMore

 

外部サイトでの評価

比較ビズ:クチコミの一覧

Google口コミ投稿:オアシス司法書士・行政書士事務所

アンケート用紙:お客様の声

今すぐ質問・見積もりを依頼する

 

 

HOME

神奈川県司法書士会

 

 

この記事をかいた人

-不動産登記・税金, 相続・相続放棄, 記事一覧, 遺言書