合同会社の社員の加入と退社

こんにちは。司法書士・行政書士の廣澤です。

この記事では、合同会社の社員の加入と退社について解説していきます。

[toc]

 

合同会社の社員とは?はこちらの記事へ

 

 

合同会社の社員の加入

社員の加入には次の3つの方法があります。

1.出資することによる加入

2.持分譲受けによる加入

3.相続などで持分を取得したことによる加入

 

1.出資することによる加入

前回の記事で解説したとおり、合同会社の社員はその会社の出資者であり、持分をもつ者のことを指します。よって、「就任」という考え方があてはまりません。

そして、次の2つの要件を満たすと、会社の社員として加入することができます。株式会社は株主や役員となる際に定款変更までは必要ありませんから、取り扱いに違いがあるという事ですね。

1.定款変更すること

2.出資を履行すること

(社員の加入)
第六百四条 持分会社は、新たに社員を加入させることができる。
2 持分会社の社員の加入は、当該社員に係る定款の変更をした時に、その効力を生ずる。
3 前項の規定にかかわらず、合同会社が新たに社員を加入させる場合において、新たに社員となろうとする者が同項の定款の変更をした時にその出資に係る払込み又は給付の全部又は一部を履行していないときは、その者は、当該払込み又は給付を完了した時に、合同会社の社員となる。
(加入した社員の責任)
第六百五条 持分会社の成立後に加入した社員は、その加入前に生じた持分会社の債務についても、これを弁済する責任を負う。

 

 

2.持分譲受けによる加入

原則、社員全員の同意を得て、社員は持分の全部又は一部を第三者に譲渡する事ができます。そして、持分全部を譲渡した社員は退社となり、持分を譲り受けした者は社員に加入します。

この持分は会社が譲り受けすることができませんので、株式会社の自己株式の保有という考え方は存在しません。

(持分の譲渡)
第五百八十五条 社員は、他の社員の全員の承諾がなければ、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができない。
2 前項の規定にかかわらず、業務を執行しない有限責任社員は、業務を執行する社員の全員の承諾があるときは、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができる。
3 第六百三十七条の規定にかかわらず、業務を執行しない有限責任社員の持分の譲渡に伴い定款の変更を生ずるときは、その持分の譲渡による定款の変更は、業務を執行する社員の全員の同意によってすることができる。
4 前三項の規定は、定款で別段の定めをすることを妨げない。
(持分の全部の譲渡をした社員の責任)
第五百八十六条 持分の全部を他人に譲渡した社員は、その旨の登記をする前に生じた持分会社の債務について、従前の責任の範囲内でこれを弁済する責任を負う。
2 前項の責任は、同項の登記後二年以内に請求又は請求の予告をしない持分会社の債権者に対しては、当該登記後二年を経過した時に消滅する。
第五百八十七条 持分会社は、その持分の全部又は一部を譲り受けることができない。
2 持分会社が当該持分会社の持分を取得した場合には、当該持分は、当該持分会社がこれを取得した時に、消滅する。

 

 

3.相続などで持分を取得したことによる加入

「社員が死亡した場合又は合併により消滅した場合における当該社員の相続人その他の一般承継人が当該社員の持分を承継する旨」を定款で定めていた場合にのみ、社員が加入します。

持分を承継しなかった相続人は、持分の払い戻し請求権を承継します。

(相続及び合併の場合の特則)
第六百八条 持分会社は、その社員が死亡した場合又は合併により消滅した場合における当該社員の相続人その他の一般承継人が当該社員の持分を承継する旨を定款で定めることができる。
2 第六百四条第二項の規定にかかわらず、前項の規定による定款の定めがある場合には、同項の一般承継人(社員以外のものに限る。)は、同項の持分を承継した時に、当該持分を有する社員となる。
3 第一項の定款の定めがある場合には、持分会社は、同項の一般承継人が持分を承継した時に、当該一般承継人に係る定款の変更をしたものとみなす。
4 第一項の一般承継人(相続により持分を承継したものであって、出資に係る払込み又は給付の全部又は一部を履行していないものに限る。)が二人以上ある場合には、各一般承継人は、連帯して当該出資に係る払込み又は給付の履行をする責任を負う。
5 第一項の一般承継人(相続により持分を承継したものに限る。)が二人以上ある場合には、各一般承継人は、承継した持分についての権利を行使する者一人を定めなければ、当該持分についての権利を行使することができない。ただし、持分会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りでない。

 

 

社員の退社・業務執行社員の退社

株式会社の役員が辞任したり株式を消却したりするのとは異なるので、混同してしまわないように注意が必要です。

また、業務執行社員が退社する場合とはちがい、社員が退社する手続きは厳格で複雑です。そのため、社員と業務執行社員についても分けて考えましょう。

 

社員の法定退社

会社法では次のようなときに社員が退社するものと定められていますが、定款で退社しないこととする定めを設けることも可能です。

一 定款で定めた事由の発生
二 総社員の同意
三 死亡
四 合併(合併により当該法人である社員が消滅する場合に限る。)
五 破産手続開始の決定
六 解散(前二号に掲げる事由によるものを除く。)
七 後見開始の審判を受けたこと。
八 除名

 

社員の任意退社

法定退社とは別に、社員は次の要件を満たすと任意に退社する事が可能です。要件に満たない場合でも、やむを得ない事由があるときには退社することができます。

1.定款で会社の存続期間を定めていない又は社員の終身の間会社が存続する事を定款で定めた場合

2.退社する事業年度終了時の6か月前までに会社に退社予告を行う

(任意退社)
第六百六条 持分会社の存続期間を定款で定めなかった場合又はある社員の終身の間持分会社が存続することを定款で定めた場合には、各社員は、事業年度の終了の時において退社をすることができる。この場合においては、各社員は、六箇月前までに持分会社に退社の予告をしなければならない。
2 前項の規定は、定款で別段の定めをすることを妨げない。
3 前二項の規定にかかわらず、各社員は、やむを得ない事由があるときは、いつでも退社することができる。

 

 

社員の退社に伴う手続き

社員の加入や退社には登記手続きが必要です。また株式会社とはちがい、その他に手続きが必要になることがあります。

 

1.資本金の額の減少

社員が退社する際、出資金のうち、資本金の額に計上したものがある場合には、資本金の額の変更登記手続きが必要です。

また、この場合債権者異議手続きも必要です。

 

2・資本金の額の増加

社員が出資により加入する際、出資金のうち、資本金の額に組み入れしたものがある場合には、資本金の額の変更登記手続きが必要です。

 

3.持分の払い戻し

社員が持分の払い戻しを行う場合で、会社の剰余金を払戻し金額が上回っている場合には、債権者異議手続が必要です。

先ほどお伝えしたとおりで、会社が全部又は一部解散したのと同様であり、また、払い戻しは清算手続きに近いためこのように厳格な取り扱いになっています。

相続や合併で定款の定めによって社員となった人は、この払い戻しをすることはできません。(会社法611条)

 

業務執行社員の退社

社員は原則、その全員が業務執行社員ですが、定款を変更することで業務執行を執行しない社員とすることができます。

つまり、業務執行社員の地位のみから退かせるためには、総社員の同意で定款変更するか、持分を譲渡させればよいということになります。

 

 

登記申請のご相談

商業(会社・法人)登記のご依頼

全国対応!郵送・メール・電話のみでスピーディに手続き可能です。 ※会社設立などの一部業務を除く   ネットで登記申請書を作成するサービスなんかもあるけど…  あまり知られていませんが、司法書 ...

続きを見る

知識ページ一覧

知識ページをご覧になりたい方はこちらから

新・中間省略登記とは? ~不動産取引の新たなスキームをわかりやすく解説~

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 「中間省略登記」という名称は、不動産投資や転売に興味がある方なら、一度は耳にしたことがあるかもしれません。 私も最近、見聞きすることが増えましたので、この通称三ため契約について、知識を備忘録としてまとめました。 新・中間省略登記とは?~不動産取引の新たなスキームをわかりやすく解説~   1.旧・中間省略登記とは? かつて行われていた「中間省略登記」は、不動産取引において、売主から買主に物件を渡す際、本来間に入る中間者(転売業者など)を登記上 ...

ReadMore

疎遠な相続人がいる場合、相続手続きはどう進めるべきか?

  連絡が取れない相続人への対応方法と司法書士に相談するポイント 疎遠な相続人がいる場合の問題点 相続は、民法の決まりで、自動的に決定します。そのため、疎遠な相続人がいる場合、次のような問題が発生します。 遺産分割協議が進まない:疎遠な相続人が連絡を拒否したり、無視したりすることで、遺産分割協議が停滞してしまう。 相続放棄や遺産分割協議書に署名をしない:相続人が協議に参加しないと、手続きが進まなくなる可能性がある。 相続トラブルのリスク:相続人が不在のまま進めることで後々トラブルに発展することも ...

ReadMore

お金を貸したけど帰ってこない!?お金を貸すなら最低限ここまでやろう

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 こちらの記事は、お金の貸し借りについて、基本知識をまとめたものです。   お金を貸したけど帰ってこない!?お金を貸すなら最低限ここまでやろう 友人や家族から「少しお金を貸してほしい」と頼まれたとき、断りきれずに貸してしまった経験はありませんか?   「〇〇円くらいなら、まあいいか…」と気軽に貸したはいいものの、なかなか返してもらえず、相手に催促しにくいまま、うやむやになってしまうケースは少なくありません。   お金を貸す ...

ReadMore

共同根抵当権、累積式根抵当権、共有根抵当権の違い

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 こちらの記事は、根抵当権についてまとめたマニアックな記事です。   共同根抵当権・累積式根抵当権・共有根抵当権 不動産を担保にして借入れを行う場合、抵当権という形で担保を設定することが一般的です。   ところが、単に抵当権を設定するだけでは不十分なケースもあり、特定の目的のために「根抵当権」という特殊な担保制度が用いられます。 根抵当権にはいくつかの種類があり、その中でも「共同根抵当権」と「累積式根抵当権」は重要なものです。これら ...

ReadMore

抵当権抹消登記を自分で行うのは大変?司法書士に頼むべき理由

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 不動産の購入や売却を行う際、抵当権抹消登記は欠かせない手続きです。   これは、ローン完済後に金融機関が設定した抵当権を解除するための登記です。   しかし、法務局での登記手続きは少々複雑で、特に自分で行うとなると負担が大きいと感じる人も多いのが現実です。今回は、抵当権抹消登記の手続きを自分で行う際の難しさと、司法書士に依頼するメリットについて紹介します。   【抵当権抹消登記は、全国対応】当事務所にお任せください 抵当 ...

ReadMore

孤独死とは?もしもに備えて知っておくべき対応の流れと予防のための対策【司法書士監修】

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。  こちらの記事は、孤独死とその対策についてと、司法書士が支援できることについて記載したものです。   孤独死とは?もしもに備えて知っておくべき対応の流れと予防のための対策 近年、「孤独死」という言葉を耳にする機会が増えました。高齢化社会の進行により、一人暮らしの高齢者や社会的なつながりを持たない人の数が増える中、孤独死のリスクもまた高まっています。   本記事では、万が一の際に備えて、孤独死が発生した場合の対応の流れ、法的な手続き ...

ReadMore

会社解散に伴う税務申告について・まとめ

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です! こちらの記事は、会社の解散の際の税金の申告について調査した内容を記載したものです。 ※税のことは税理士に相談しましょう!当事務所にご依頼いただいたた場合はご紹介いたします。   解散手続きの基本的な流れはこちら  解散・清算結了と、税務申告 会社が解散を決定すると、その後に行うべき税務申告は大きく分けて次の申告が必要になります。 1 解散時の申告(最終申告) 2 清算時の申告(清算結了申告)   発生しうる税金 法人税・地方税 消 ...

ReadMore

横浜市で法人設立登記のお悩み解決法|司法書士が解説

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。[st-kaiwa4]   この記事では… ・「横浜市で会社を設立したい」と考えている方 ・手続きの流れ・費用・よくある疑問を知りたい方 ・司法書士に依頼するとどこまで安心なのか不安な方   このような方向けの、5分以内に読める記事です。   法人登記の全体像をわかりやすく丁寧にお伝えします。 なぜ司法書士に法人登記を依頼すべき? 横浜エリアに精通した司法書士のサポートには、以下のメリットがあります。   ・ミス ...

ReadMore

相続の基本を司法書士がやさしく解説|相続の流れ・登記・トラブル回避まで徹底網羅

  相続の基本を司法書士がやさしく解説|相続の流れ・登記・トラブル回避まで徹底網羅 司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 こちらの記事では、相続の基本について、解説していきます。   はじめに|相続は「誰にでも起こる身近な問題」 「相続」と聞くと、どこか他人事のように感じる方も多いのではないでしょうか。   けれども実際は、人が亡くなると必ず発生する法的な問題であり、決して特別な家庭だけの話ではありません。相続手続きは時間制限があり、知らずに放置するとトラブ ...

ReadMore

離婚時の財産分与についてよくある質問まとめ

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 こちらの記事は、離婚時の財産分与の手続きをする際の、よくある質問について解説したページです。   財産分与とは? 基本知識はこちらに記載   離婚時の財産分与についてよくある質問 ローンが残っている場合、どう対応すべきか? Q: 離婚時に住宅ローンが残っている場合、どう分ければ良いのでしょうか? A:通常、住宅ローンを支払っている名義人がローンの支払いを続けますが、合意でどちらが負担するかは決定できます。家をどちらが取得するのかは ...

ReadMore

 

HOME

会社法

この記事をかいた人

-会社登記・法務, 記事一覧