この記事では、民法改正のうち、債権法に関する部分で忘れやすいところを、備忘録としてまとめています。ご自由にご覧下さい。
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消滅時効
職業別の短期消滅時効が廃止
権利の消滅時効は、知って5年、行使できるときから10年に統一。
生命・身体の侵害による損害賠償請求権の特則
特則なし
債務不履行に基づく損害賠償請求権
知って5年、行使できるときから10年
不法行為の損害賠償請求権
知って3年、行使できるときから20年(除斥期間)
特則あり
債務不履行に基づく損害賠償請求権
知って5年、行使できるときから20年
不法行為の損害賠償請求権
知って5年、行使できるときから20年(除斥期間ではなく、時効期間(民法724))
時効の中断
時効の中断については、訴訟提起の場合、訴訟中は時効が中断し、裁判確定後に新たに進行を開始するのに対し、承認の場合は、承認したタイミングであらたに進行を開始するなど、複雑でわかりづらかった。
そこで、「更新」と「完成猶予」という言葉をあらたに作り、条文で意味が分かるようにした。
①承認
(承認による時効の更新)
第百五十二条 時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める。
2 前項の承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力の制限を受けていないこと又は権限があることを要しない。
②裁判上の請求
(裁判上の請求等による時効の完成猶予及び更新)
第百四十七条 次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。
一 裁判上の請求
二 支払督促
三 民事訴訟法第二百七十五条第一項の和解又は民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)若しくは家事事件手続法(平成二十三年法律第五十二号)による調停
四 破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加
2 前項の場合において、確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したときは、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。
③催告
(催告による時効の完成猶予)
第百五十条 催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
2 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。
④その他の完成猶予
(未成年者又は成年被後見人と時効の完成猶予)
第百五十八条 時効の期間の満了前六箇月以内の間に未成年者又は成年被後見人に法定代理人がないときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は法定代理人が就職した時から六箇月を経過するまでの間は、その未成年者又は成年被後見人に対して、時効は、完成しない。
2 未成年者又は成年被後見人がその財産を管理する父、母又は後見人に対して権利を有するときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は後任の法定代理人が就職した時から六箇月を経過するまでの間は、その権利について、時効は、完成しない。
(夫婦間の権利の時効の完成猶予)
第百五十九条 夫婦の一方が他の一方に対して有する権利については、婚姻の解消の時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
(相続財産に関する時効の完成猶予)
第百六十条 相続財産に関しては、相続人が確定した時、管理人が選任された時又は破産手続開始の決定があった時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
(天災等による時効の完成猶予)
第百六十一条 時効の期間の満了の時に当たり、天災その他避けることのできない事変のため第百四十七条第一項各号又は第百四十八条第一項各号に掲げる事由に係る手続を行うことができないときは、その障害が消滅した時から三箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
(協議を行う旨の合意による時効の完成猶予)
第百五十一条 権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、次に掲げる時のいずれか早い時までの間は、時効は、完成しない。
一 その合意があった時から一年を経過した時
二 その合意において当事者が協議を行う期間(一年に満たないものに限る。)を定めたときは、その期間を経過した時
三 当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは、その通知の時から六箇月を経過した時
2 前項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた再度の同項の合意は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有する。ただし、その効力は、時効の完成が猶予されなかったとすれば時効が完成すべき時から通じて五年を超えることができない。
3 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた第一項の合意は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。同項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた催告についても、同様とする。
4 第一項の合意がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)によってされたときは、その合意は、書面によってされたものとみなして、前三項の規定を適用する。
5 前項の規定は、第一項第三号の通知について準用する。
法定利率
年3パーセントとし、3年ごとに見直しする。
また、商事法定利率を廃止し、民法の法定利率を採用する。
保証
根保証
貸金等債務以外の根保証についても、貸金等債務同様の制限を設ける。
貸金等債務以外の根保証についても、極度額の定めが必須で、保証人に特別の事情(破産、死亡)があれば、元本が確定し、保証打ち切りとなる。ただし、主債務者の事情は含まない。
該当する契約の例
・不動産の賃借人が賃貸借契約に基づいて負担する債務の一切を個人が保証する保証契約
・代理店等を含めた取引先企業の代表者との間で損害賠償債務や取引債務等を保証する保証契約
・介護、医療等の施設への入居者の負う各種債務を保証する保証契約
事業用融資の保証
事業用融資の保証契約は、公証人があらかじめ保証人本人から直接(出頭)その保証意思を確認しなければ、 効力を生じない。ただし、次の場合は適用しない。
① 主債務者が法人である場合の理事、取締役、執行役等
② 主債務者が法人である場合の総株主の議決権の過半数 を有する者等
③ 主債務者が個人である場合の共同事業者又は主債務者が行う事業に現に従事している主債務者の配偶者
役員や大株主などが保証人になって、お金を借りるのは、有用な場合があるよね、ということですね。
情報提供義務
様々な情報提供義務を設けた。
①事業の債務保証の場合、一定の情報
②期限の利益を喪失した情報 2か月以内に保証人への通知
③請求があった場合に、残額などの情報
債権譲渡
資金調達手段としての債権譲渡だが、譲渡制限特約の存在が支障になっている。よって、次のように改正。
①譲渡制限特約があっても、債権譲渡の効力がある(預貯金債権は除外)
※債権者を固定する目的である場合は、契約違反にならない。また、譲渡制限特約を理由に行う債務者の契約解除の主張は、権利濫用にあたりうる。
②元の債権者に支払えば、債務者の義務は免責。ただし、債務者に譲受人が相当期間を定めて譲渡人への支払いを催告し、その期間をすぎた場合には、適用しない。
③譲渡人が破産した場合は、債務者に債権の全額を供託するよう請求することができる。
(債権の譲渡性)
第四百六十六条 債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。
2 当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。
3 前項に規定する場合には、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる。
4 前項の規定は、債務者が債務を履行しない場合において、同項に規定する第三者が相当の期間を定めて譲渡人への履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、その債務者については、適用しない。
約款
大量の取引を円滑に行うために、約款を設けている場合があるが、明確な規定がないので創設。(民法548~)
提携約款が契約内容となるための要件
①定形約款を契約内容とする旨の合意
②取引に際して、事前に定型約款を契約内容とする旨をあらかじめ相手に表示(困難な場合は公表)していること
③内容が信義則に反する場合は、契約内容にならない
④取引の前に、定型約款の内容を示すよう請求があった場合に、準備者が拒んだ場合は、契約内容にならない
途中で約款の内容を変更するための要件
①変更が相手方一般の利益に適合すること
②変更が契約の目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無及びその内容その他の変更に照らし合理的であること
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