特例有限会社について まとめ記事

司法書士 廣澤真太郎
こんにちは。司法書士の廣澤です。

この記事は、特例有限会社の構造について備忘録としてまとめたものです。

特例有限会社の定義については、次の記事をご覧ください。特例有限会社とはなにか?オアシス司法書士・行政書士事務所

[toc]

 

特例有限会社の特殊な取り扱い

旧有限会社法の廃止にあたり、わざわざすべての会社で法律を勉強し、定款などを修正する必要がないように、整備法において、みなし規定が複数設けられています。

 

みなし規定まとめ

旧 有限会社 特例有限会社
有限会社の定款、社員、持分、出資1口 株式会社の定款、株主、株式、1株とみなす
有限会社の社員名簿、社員の氏名住所、出資の口数 株式会社の株主名簿、株主の氏名住所、株式数とみなす
旧有限会社法の規定による会計帳簿、計算書類その他の会計又は経理に関する書類 会社法の相当規定により作成したものとみなす
旧有限会社法の規定による旧有限会社の資本の総額 会社法の規定による特例有限会社の資本金の額の登記とみなす
旧有限会社法の規定による旧有限会社の登記 会社法の相当規定による特例有限会社の登記とみなす
発行可能株式総数、発行済株式の総数、株式の譲渡制限規定、公告方法等は登記されたものとみなす

 

定款のみなし規定まとめ

旧 有限会社 特例有限会社
目的、商号、本店所在地 左記載があるものとみなす
資本の総額、出資1口の金額、社員の氏名住所、各社員の出資口数 記載がないものとみなす
資本減少などの公告を、時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙または電子公告によって行うという規定 時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙または電子公告によって行うという記載があるものとみなす
電子公告を広告方法としている場合において、電子公告ができないときは、官報又は時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙で代わりに公告するという規定 左記載があるものとみなす
定款に公告方法の定めがない場合 官報に掲載する方法とする。
法定準備金の減少、資本金減少、合併、会社分割、組織変更の公告について、異なる二つ以上の公告方法を定款に定めている場合 整備法施行時に左記載は効力をうしなう
譲渡制限に関する旨の定めがあるものとみなす
特例有限会社の株主が当該株式を取得する場合においては、特例有限会社が承認したものとみなす旨の定めがあるものとみなす
議決権について特別の定めがある場合 当該内容の種類株式とみなす
取締役の累積投票の請求ができる旨の定めがない場合 累積投票の請求ができない旨の定めがあるものとみなす
監査役を置く旨の定款の定め 監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定めがあるものとみなす

 

 

申請できない登記

登記実務においては重要な論点ですね。

1.譲渡制限に関する規定の変更登記

2.取締役、株主総会、監査役以外の機関の登記

3.存続・承継会社となる登記

4.株式交換・株式変更の登記

5.会社を代表しない取締役がいない場合の、代表取締役の登記

 

 

株式会社との登記事項の違い

取締役及び監査役の住所・氏名、代表取締役の氏名を登記します。

また、代表しない取締役がいない場合は氏名抹消登記が必要です。

 

ポイント

特例有限会社では、監査役設置会社である旨及び監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定めがある旨の登記が不要です。

また、有限会社の社長が「代表取締役」と名乗りたいときは、他に取締役となる役員が必要となります。

 

 

株式会社との細かい違い

1.少数株主の規定等は適用されない

整備法14条5項 特例有限会社については、会社法第二百九十七条及び第三百一条から第三百七条までの規定は、適用しない。

 

2.特別決議の要件が加重されている(総株主の半数以上かつ総株主の4分の3以上の)

整備法309条4項 前三項の規定にかかわらず、第百九条第二項の規定による定款の定めについての定款の変更(当該定款の定めを廃止するものを除く。)を行う株主総会の決議は、総株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)であって、総株主の議決権の四分の三(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。

 

3.取締役に委任できない事項や報告義務についての適用がない

第二十一条 特例有限会社については、会社法第三百四十八条第三項及び第四項並びに第三百五十七条の規定は、適用しない。

 

4.監査役を設置する旨は登記事項ではないが、定款には記載する必要がある。

みなし規定がないが、相対的記載事項であるため。

 

5.監査役の権限を定款で拡大したとしても、監査役の任期が満了しない。

特例有限会社では、会社法336条4項3号の適用がないため。

整備法 第十八条 特例有限会社については、会社法第三百三十二条、第三百三十六条及び第三百四十三条の規定は、適用しない。

会社法 第三百三十六条 4 前三項の規定にかかわらず、次に掲げる定款の変更をした場合には、監査役の任期は、当該定款の変更の効力が生じた時に満了する。

三 監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めを廃止する定款の変更

 

 

以上、有限会社についてお調べ中の方の参考になれば幸いです。

 

登記申請のご相談

商業(会社・法人)登記のご依頼

    全国対応!郵送・メール・電話のみでスピーディに手続き可能です ※会社設立などの一部業務を除く       司法書士に手続きをご依頼になった場合 ...

続きを見る

知識ページ一覧

知識ページをご覧になりたい方はこちらから

債権の差押えによる債権回収について

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 例えば、お金を貸していて、相手が支払いを怠っている場合に、相手の預貯金を差押えたいというケース等の、債権執行について記事にしてみました。 債権執行について 債権執行の根拠法は、民事執行法です。 (債権執行の開始) 第百四十三条 金銭の支払又は船舶若しくは動産の引渡しを目的とする債権(動産執行の目的となる有価証券が発行されている債権を除く。以下この節において「債権」という。)に対する強制執行(第百六十七条の二第二項に規定する少額訴訟債権執行を除く。以下 ...

ReadMore

解体工事業の登録

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 業務で調べる機会がありましたので、解体工事業の登録について、記事にしてみました。 解体工事業の登録 一定金額に満たない家屋等の建築物その他の工作物の全部又は一部の解体工事又は解体工事を含む建設工事を請け負おうとする方で土木工事業、建築工事業又は解体工事業に係る建設業許可をもたない方は、 あらかじめ、工事を施工する区域を管轄する都道府県知事の登録を受ける必要があります。   神奈川県:建設業課横浜駐在事務所建設業審査担当   登録を ...

ReadMore

不動産購入時の調査について②

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 この記事は、不動産売買の仲介を不動産会社に依頼しない場合に、買主が最低限、確認すべき事項をまとめたものです。   不動産について調査すべき事項 前回の記事の続きです。     13.接道義務(再建築不可) 接道義務(土地上に建物を建てる場合には、幅員4m以上の建築基準法上の道路に、敷地が2m以上接していなければならない)を満たしていない場合は、原則として、土地上に建物を再建築することができません。   前面道路 ...

ReadMore

不動産購入時の調査について①

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 この記事では、不動産売買の仲介を不動産会社に依頼しない場合に、買主が最低限、確認すべき事項をまとめたものです。 仲介業者なしで売買は可能か? 不動産会社に仲介を依頼しなくても、取引自体は可能です。 すでに取引相手が決まっていて、融資も受けないといった場合、仲介手数料である売買価格の3%+6万円がもったいないため、不動産会社に依頼をしたくないといったケースもあるかと思います。   しかし、取引に不動産会社を挟まない場合、重要事項の説明を受ける ...

ReadMore

寄付について

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 「遺言で寄付を」という趣旨のチラシをよく見かけますので、寄付について調べてみました。     寄付(寄附)とは? 公のことや事業のため、金銭や品物を贈ること。 辞書から引用   寄付という言葉は、物品等を含みますが、区別する意味で、物品等を寄付する場合は、寄贈と表現することもあるようです。   寄付市場は拡大中 2010年の個人寄付総額は約4800億円ですが、2020年の個人寄付総額は、1兆2,162億円です。 ...

ReadMore

介護保険制度について

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 介護保険について調べる機会があったので、記事で情報をまとめてみました。   介護保険とは 介護保険制度は、高齢者の介護を、社会全体で支え合う仕組みです。 介護保険法 第一条 この法律は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保 ...

ReadMore

会社設立後の許認可ごとの必要な事業目的

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 会社設立の際に、許認可を控えている場合は、事業目的に許認可に耐えうる文言を入れておく必要がありますが、 毎回確認するのは大変ですから、ある程度まとめて記事にしてみました。 (R5.7.15編集)   許認可が必要な事業例 業務内容 目的の記載例 運送業 一般貨物自動車運送事業 ※(許可)トラックなどの運送 特定貨物自動車運送事業 ※(許可)荷主が1社に特定されているトラックなどの運送 貨物軽自動車運送事業 ※(届出)軽トラック、125CC以 ...

ReadMore

残高証明書・取引履歴の取得

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。  聞かれることの多い、相続手続時における残高証明書と預金口座の取引履歴の取得について、記事にしてみたいと思います。 残高証明書・預金口座の取引履歴の取得 相続時に必要な場面 これらの資料は、相続税申告が必要なケースで、準備することになります。   残高証明書 特定の日付時点における、預金、有価証券、投資信託などの残高、保有口数などを、金融機関が証明してくれる書類です。   預金口座の取引履歴とは? 預貯金口座の過去の入出金の履歴が ...

ReadMore

死亡届と死亡記載事項証明書 

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 この記事では、死亡届の取り扱いについてまとめています。   死亡届とは? 届出義務者は、死亡事実を知ってから7日以内(国外で死亡があったときは、その事実を知った日から三箇月以内)に、役所に届出をしなければなりません。 遺体を安置している葬儀社が、代わりに提出してくれることもあります。   第八十六条 死亡の届出は、届出義務者が、死亡の事実を知つた日から七日以内(国外で死亡があつたときは、その事実を知つた日から三箇月以内)に、これを ...

ReadMore

相続人が誰もいない場合

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 この記事は、相続人が誰もいない場合の手続きについて記載したものです。 ご自由にご覧ください。 相続人が誰もいない場合に、財産はどうなる? わかりづらいですが、まず、相続財産は法人になります。財産それ自体が法人格を持つということです。 そして、その相続財産を管理及び清算するためには、利害関係人又は検察官からの請求により、家庭裁判所で相続財産の清算人を選任してもらう必要があります。 第六章 相続人の不存在 (相続財産法人の成立) 第九百五十一条 相続人の ...

ReadMore

 

 

整備法2条~46条

 HOME

参考:商業登記申請MEMO

この記事をかいた人

-会社登記・法務