合同会社とは?

 

司法書士 廣澤真太郎
こんにちは。司法書士の廣澤です。

この記事では、合同会社の設立を検討されている方向けに、合同会社について最低限知っておきたいことを解説しておきます。

 

 

合同会社とは?

 

株式会社とは違う種類の「会社」のことです。

 

これだと説明になっていないので具体的に解説しますね。

まず前提として、会社には「株式会社、合同会社、合名会社、合資会社」という4つの形態があります。(会社法2条)

この4形態のうち最も多く設立されているのは株式会社で、次に合同会社が多くを占めており、他の会社は経営者のリスクが大きい組織形態なのであまり利用されません。

 

 

誤解を恐れず言えば、小規模であれば合同会社(LLC)は株式会社とほとんど同じ組織です。

株式会社で株式を購入した人と同じように、合同会社に出資した人はその出資額の範囲でしか責任を負いません。

これを有限責任と言います。出資金が0円になり損をしてしまう事はあっても自分の財産全てを奪われる心配はないという事です。

 

 

株式会社は「所有と経営の分離」、合同会社は所有者(出資者)=経営者であるという違いがありますが、中小会社では株主と経営者は同一人物であることが多いですから、

小規模な株式会社の株主と小規模な合同会社の社員に大きな違いはない事が多いです。初動においては自由度が高い株式会社のようなイメージでしょうか。

 

 

ただし、大規模な会社を作りたいのであれば、合同会社は上場することはできないので、将来一般の投資家から多額の資金調達を行いたいような場合には、

設立後どこかのタイミングで株式会社に組織変更する必要性が出てきます。

とはいえ、株式会社のように多くの金額を出資をしたものが実権を握るという仕組みではないため活用しやすく、大規模な合同会社も中にはありますから、

設立の際には多面的な視野で考える必要があるでしょう。

 

 

このように見ると、合同会社は比較的小規模な経営をする予定の方や、法人格だけ取得したい方等のニーズを満たす組織形態だと思います。

 

 

豆知識

法人には、「会社」・「社団法人」・「財団法人」・「NPO法人」等の種類があります

 

株式会社・合同会社設立件数の推移

設立年 株式会社の設立総数 合同会社の設立総数
平成27 93,635 22,387
平成28 95,019 23,944
平成29 95,781 27,442
平成30 91,836 29,243
令和1 91,836 30,733
令和2 85,688 33,236

 

株式会社は横ばいですが、合同会社の設立数は増加傾向にあることがわかりますね。

 

副業として投資を行ったりして継続的に利益を上げているような場合には、所得税よりも法人税のほうがメリットも大きいでしょうから、

手軽に法人格を取得する方法の一つとして注目されています。

 

 

会社と個人事業主の違い

最も大きな違いは、信用性と税金です

 

 

信用性については、組織であるということで安心感があるというのは言うまでもないでしょうね。

税金については、個人には所得税で法人には法人税が課税されるという点で違いがあります。

 

 

所得税は近年増額傾向にありますが、法人税は減額傾向にありますよね。

また、所得税は累進課税なのに対し、法人税は一律の課税となっていますから、売上によってどちらがお得かは変わってきます。

 

 

所得税よりも法人税として計算した方が納税額は安くなるという場合や、

消費税課税事業者(売上1000万円~等の条件を満たす)に該当することとなったタイミングで会社設立を検討される方が多い印象です。

国税庁:法人税 ・ 所得税 ・ 免税事業者

 

 

ただし、

「売上400万円を超えたら法人化したほうが良い」

「法人化すれば節税ができる」

よく聞くフレーズですが、これらはあくまで一般論にとどまるのではないかと思います。

 

 

節税できるとはいっても、決算を自分でするのは難しいので税理士報酬が固定的に発生しますし、

同様に登記義務が発生するので司法書士報酬、登録免許税も固定的に発生します。

 

 

経費計上できるものが増えるとはいえ、例えば接待交際費は個人事業主のように使えることはなくなるなど取り扱いが細かく違いますし、

所得税と違って赤字だとしても法人税は課税されますから、継続的な売上が見込めない時に安易に会社を設立すべきではありませんよね。

 

 

このようにデメリットもたくさんありますので、本当に法人化したほうが良いのか?については、

経営者仲間や専門家の意見を聞きながらご自身でも勉強してしっかり考えて判断するのが良いと思います。

 

 

合同会社設立のメリット

1.任期がない

2.決算公告しなくてよい

3.設立費用が安い

4.配当が自由に決められる

5.実権を握る人を自由に決められる

 

法人化という点では株式会社と一緒ですから、株式会社との比較でメリットを考えるのが最もわかりやすいですね。

 

1.任期がない

意外とご存じない方も多いですが、株式会社の取締役等の役員には任期(最長10年)が存在し、任期ごとに役員変更登記をしないといけません。

しかし、合同会社にはこの任期の規定がありませんので、継続的な登記により発生する費用も抑えることができます。

 

2.決算公告しなくてよい

株式会社は毎年一定の時期に決算公告をしなければなりませんが、その義務が合同会社にはありません。

決算公告を官報により行うとした場合、最低でも5万円~費用が発生しますが、その出費を抑えられるという事です。

 

3.設立費用が安い

株式会社の設立の場合は最低でも約20万円の実費が必要ですが、合同会社であれば約10万円の実費で設立する事ができます。

 

4.配当が自由に決められる

全員の合意があれば配当額を自由に決めることができます。自由度の高い組織運営が可能になるという事ですね。

 

5.実権を握る人を自由に決められる

株式会社の株式は出資額に応じて持ちあいますが、合同会社は1人1議決権であり、さらに定款でその議決権の割合を自由に変更できるので、

株式会社よりも柔軟に意思決定が可能になります。

 

また、合同会社はその持分の譲渡について定款で定めておくことで、他の社員の同意などを得ることなく自由に譲渡できる仕組みにすることができます。

株式会社の譲渡制限株式の場合には譲渡するたびに承認が必要になりますし、かといって公開会社になると色々組織運営が大変になってしまいますが、そういった面で合同会社は制約がありません。

役員をスムーズに入れ替えすることができる組織もつくれるという事ですね。

 

 

合同会社のデメリット

1.信用性に欠ける 

2.金融機関によっては資金調達が難しい場合がある 

3.所有者(出資者)=経営者なので役員が辞めると出資額が減る

4.運用に詳しい専門家がまだまだ少ない 

5.後日、株式会社にするには組織変更という複雑な手続が必要

 

合同会社は費用を抑えたり、自由度が高いというところにその特徴がある一方で、信用性に欠けるという一面があるようですね。

昨今では合同会社の認知も広まってきてはいるので、融資を断られる事はあまりないようですが、そのあたりは経営者の手腕次第という事になりそうです。

 

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。

合同会社の特徴とそのポイントをまとめておきます。

✅ 最も安く法人設立する手段

✅ 比較的規模が小さい経営を考えている方向け

✅ 上場を目指してスケール化をする人には不向き

✅ 共同経営者の選定は慎重になるべき

✅ そもそも法人化するメリットがあるどうかは長期的視野で検討する必要あり 

合同会社設立でお悩みの方の参考になれば幸いです。

 

 

登記申請のご相談

商業(会社・法人)登記のご依頼

    全国対応!郵送・メール・電話のみでスピーディに手続き可能です ※会社設立などの一部業務を除く       司法書士に手続きをご依頼になった場合 ...

続きを見る

知識ページ一覧

知識ページをご覧になりたい方はこちらから

医療法人と株式会社の違い

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 この記事は、医療法人の登記について、株式会社との違いを主に、備忘録としてまとめたものです。 ご自由にご覧ください。     目次1 医療法人とは?その類型1.1 医療法人社団と医療法人財団1.2 医療法人社団の類型1.3 株式会社との明確な違い1.4 その他、運営上の違い2 登記申請のご相談2.1 知識ページ一覧 医療法人とは?その類型 医療法を根拠として、病院、医師若しくは歯科医師が常時勤務する診療所又は介護保険老人施設の運営を ...

ReadMore

会社設立後の法人口座開設について

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 この記事は、会社設立時にご質問をいただくことの多い法人口座開設について、記載しています。     目次1 法人口座とは?開設は必須?1.1 法人口座開設のタイミング?1.2 法人口座開設の審査は厳しい?1.3 法人口座をスムーズに開設するために、対策しておくべきこと1.4 もし、開設できなかったら?2 登記申請のご相談2.1 知識ページ一覧 法人口座とは?開設は必須? 名前の通り、法人名義の預金口座のことです。   法人 ...

ReadMore

普通株式と種類株式についての基本知識

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 この記事は、会社法における株式のうち、種類株式についての基礎知識をまとめたものです。       目次1 株式とは?2 種類株式とは?2.1 種類株式の種類3 登記申請のご相談3.1 知識ページ一覧 株式とは? 株式とは、株式会社における社員の地位を指しており、次のような権能があります。 ・株主総会に参加し議決を行使する権利、株主総会決議の取り消しの訴えを提起する権利 ・配当、残余財産の分配を受け取る権利 ・定款、株主名 ...

ReadMore

財産管理制度(所有者不明土地管理制度)についての民法改正

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士・行政書士の廣澤です。 この記事は、所有者不明土地の管理に関する民法の改正について記載しています。 目次1 財産管理制度の見直し1.1 1.所有者不明土地(建物)管理制度1.2 2.管理不全土地(建物)管理制度 2 まとめ2.1 相続のご質問・見積もりはこちら 財産管理制度の見直し 旧法下では、不在者財産管理制度などの財産管理制度は、不在者の財産すべてを管理する制度であるため、土地建物の管理等ピンポイントで利用するものではなく、費用負担や事務作業で過剰な負担を強い ...

ReadMore

共有制度(所有者不明土地等関係)に関する民法の改正について

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 この記事では、令和5年4月1日以降の共有制度に関する民法の改正について、深堀りしていきます。     目次1 共有制度の改正1.1 1.共有物の変更・管理に関するルール  1.2 2.共有関係の解消に関するルール 1.3 相続のご質問・見積もりはこちら 共有制度の改正 令和5年4月1日から、共有に関する制度のうち、おおまかに次の2つが大きく変わります。 1.共有物の変更・管理に関するルール   2.共有関係の解消に関するルール  ...

ReadMore

不動産登記と印鑑証明書の関係?

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 この記事は、登記申請の際の印鑑証明書について、整理したものです。     目次1 不動産登記における印鑑証明書の添付根拠2 省略に関する規定2.1 省略について深堀り3 ご質問・見積もりはこちら 不動産登記における印鑑証明書の添付根拠 根拠は、不動産登記令16条です。   (申請情報を記載した書面への記名押印等) 第十六条 申請人又はその代表者若しくは代理人は、法務省令で定める場合を除き、申請情報を記載した書面に記名押印 ...

ReadMore

社団法人、公益社団法人、NPO法人の違いとは?

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士・行政書士の廣澤です。 社団法人について、聞かれることがあるので、備忘録としてまとめたものを、記事にしてみました。ご自由にご覧ください。   目次1 一般社団法人とは?1.1 法人とは?1.2 非営利とは?2 株式会社と一般社団法人の違いは?2.1 細かい違い3 公益社団法人と一般社団法人の違いは?3.1 細かい違い4 社団法人とNPO法人の違いは?4.1 細かい違い5 法人格による税制上の優遇措置対象一覧表6 会社設立・法人設立登記のご相談6.1 知識 ...

ReadMore

貸金庫とその相続について

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 貸金庫の相続手続きが大変であるというのは周知のとおりですが、 この、問題となりがちな貸金庫について、記事にしておきたいと思います。     目次1 貸金庫に財産関係資料をまとめて保管するのは避けましょう!1.1 貸金庫があると、どうなる?1.2 貸金庫の開扉自体が困難な場合がある1.3 相続トラブルの可能性が高まる1.4 余計な時間がかかり、余計な実費が発生する2 まとめ2.1 相続のご質問・見積もりはこちら 貸金庫に財産関係資料 ...

ReadMore

資産課税の見直し

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 専門ではないですが、勉強はしておかなければなりませんから、令和6年1月1日以降の贈与に関する税制改正について、 備忘録としてまとめておきます。ご自由にご覧下さい。     目次1 資産課税の見直し1.1 相続時精算課税制度について1.2 暦年課税について1.3 教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置について1.4 結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置について2 現行制度との比較表3 背景4 まとめ4.1 知識ペー ...

ReadMore

債権法の改正関連まとめ その2

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 この記事では、民法改正のうち、債権法に関する部分で忘れやすいところを、備忘録としてまとめています。ご自由にご覧下さい。       目次1 意思能力制度の明文化2 錯誤についての改正3 代理人の行為能力4 解除の効力5 瑕疵担保責任6 債権者代位・詐害行為取消権6.1 債権者代位権について明文化されたもの6.2 詐害行為取消権について明文化されたもの7 連帯債務8 弁済について9 危険負担10 消費貸借11 賃貸借11. ...

ReadMore

 

HOME

 

この記事をかいた人

-会社登記・法務, 記事一覧