
株式会社や合同会社には、定期的に登記を行う義務があります。
この記事は、司法書士に「この登記をすると、代表者個人に過料が課されますよ」と注意されて詳しく知っておきたいという方や、裁判所から過料決定が届いた方、また今後、過料を防ぎたい方向けの記事です。
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会社登記の義務とその過料について
なぜ、会社登記や役員選任を怠ったことで過料が課されるのか?
株式会社や合同会社等の会社には、一定の場合に登記を行う義務や役員をあらたに選任する義務があり、また、登記は登記事項に変更があってから2週間以内にするものとされています。
よって、登記事項に変更があったにもかかわらず、2週間以上経過してから登記申請をした場合には、過料が課される可能性があります。
忘れがちなものとしては、代表者の住所移転、株式会社の場合は役員の任期が切れているにもかかわらず登記をしていないといった場合でしょう。
会社法九百十五条 会社において第九百十一条第三項各号又は前三条各号に掲げる事項に変更が生じたときは、二週間以内に、その本店の所在地において、変更の登記をしなければならない。
以下略
911条3項とは、株式会社の登記事項の事で、前3条各号とは、持分会社の登記事項の事です。詳しくは会社法911条~をご覧ください。
(過料に処すべき行為)
第九百七十六条 発起人、設立時取締役、設立時監査役、設立時執行役、取締役、会計参与若しくはその職務を行うべき社員、監査役、執行役、会計監査人若しくはその職務を行うべき社員、清算人、清算人代理、持分会社の業務を執行する社員、民事保全法第五十六条に規定する仮処分命令により選任された取締役、監査役、執行役、清算人若しくは持分会社の業務を執行する社員の職務を代行する者、第九百六十条第一項第五号に規定する一時取締役、会計参与、監査役、代表取締役、委員、執行役若しくは代表執行役の職務を行うべき者、同条第二項第三号に規定する一時清算人若しくは代表清算人の職務を行うべき者、第九百六十七条第一項第三号に規定する一時会計監査人の職務を行うべき者、検査役、監督委員、調査委員、株主名簿管理人、社債原簿管理人、社債管理者、事務を承継する社債管理者、社債管理補助者、事務を承継する社債管理補助者、代表社債権者、決議執行者、外国会社の日本における代表者又は支配人は、次のいずれかに該当する場合には、百万円以下の過料に処する。ただし、その行為について刑を科すべきときは、この限りでない。
一 この法律の規定による登記をすることを怠ったとき。
~略~
二十二 取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役)、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人がこの法律又は定款で定めたその員数を欠くこととなった場合において、その選任(一時会計監査人の職務を行うべき者の選任を含む。)の手続をすることを怠ったとき。
以下略
一定の義務を怠ったときは、会社の代表者個人は過料に処しますよ、という内容の条文です。
上記のとおり、過料の制裁は登記を怠った時や役員選任を怠ったときに限られません。詳しくは会社法976条をご覧ください。
過料とはなにか?
行政上の罰のうち、秩序罰と呼ばれるもので、法律にさだめられている義務を怠った違反者に、制裁として金銭的負担を課すものです。
登記事項に変更があってから2週間以上怠っていた場合に登記申請をすると、そのことにより怠っていたことが明らかになりますよね。
そのため、登記申請をしてから数か月後に裁判所から「過料決定」が届くことで、義務を違反してしまっていたことに気づくという方が多いと思います。
過料の額
条文上は100万円以下の過料に処するとされていますが、役員変更登記の懈怠については2~3万円前後で、相当年数放置していたような場合は10万円をこえる過料が課されることもあるようです。
注意ポイント
✅ 過料は会社の経費にできません。代表者個人に課されるためです。
✅ 登記が遅れたことに理由がある場合には、異議申し立てすることができます。
どうやって過料を免れるのか?
過料決定を受け取った場合
過料決定に不服がある場合は、受け取った日から1週間以内であれば、「異議申し立て」を行う事ができます。
特別な理由がある場合には、減額又は免除してもらうことができます。例えば、任期10年の会社なのに、形式的に任期2年としてカウントされている場合などが典型例でしょう。
※「登記の手続を知らなかった」「忘れていた」「忙しかった」「他人に任せていた」等の理由では、特別の理由があると認められることは、ほとんどないようです。
今後の過料を避けたい場合
登記事項をある程度把握しておき、変更がある場合にはその都度、速やかに登記手続きを依頼又は申請しましょう。
会社設立段階から一度も登記を司法書士に依頼されたことがない人は、一度は変更登記の際に司法書士にご依頼になり、関係構築されることをお勧めします。
端的に、登記報酬を節約した結果、会社法の義務についての説明を聞くことができず過料の制裁を受けてしまうのでは、その努力がすべて水の泡になり、むしろマイナスになってしまうというのはもったいないからです。
最近よく聞く話では、会社設立を自分でしたり、間違えて他士業に頼んでしまって司法書士から登記の説明を受けられなかったというケースでしょう。
とくに株式会社では役員の任期については忘れやすい項目ですから、こういった細かい運営上の損害を防止するためには、日頃からの適切な士業選択と関係構築が大切だと思います。
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