会社登記の更正・抹消の登記

司法書士 廣澤真太郎
こんにちは。司法書士の廣澤です

会社の登記を行った際、名前の漢字や住所を間違えてしまった場合などに、更正の登記をすることができます。

この記事は、そんなマイナーな登記について記載したものです。

[toc]

 

会社登記の更正・抹消登記

まずは根拠条文の確認から。

 

(更正)
第百三十二条 登記に錯誤又は遺漏があるときは、当事者は、その登記の更正を申請することができる。
2 更正の申請書には、錯誤又は遺漏があることを証する書面を添付しなければならない。ただし、氏、名又は住所の更正については、この限りでない。
第百三十三条 登記官は、登記に錯誤又は遺漏があることを発見したときは、遅滞なく、登記をした者にその旨を通知しなければならない。ただし、その錯誤又は遺漏が登記官の過誤によるものであるときは、この限りでない。
2 前項ただし書の場合においては、登記官は、遅滞なく、監督法務局又は地方法務局の長の許可を得て、登記の更正をしなければならない。

(抹消の申請)
第百三十四条 登記が次の各号のいずれかに該当するときは、当事者は、その登記の抹消を申請することができる。
一 第二十四条第一号から第三号まで又は第五号に掲げる事由があること。
二 登記された事項につき無効の原因があること。ただし、訴えをもつてのみその無効を主張することができる場合を除く。
2 第百三十二条第二項の規定は、前項第二号の場合に準用する。

(申請の却下)
第二十四条 登記官は、次の各号のいずれかに掲げる事由がある場合には、理由を付した決定で、登記の申請を却下しなければならない。ただし、当該申請の不備が補正することができるものである場合において、登記官が定めた相当の期間内に、申請人がこれを補正したときは、この限りでない。
一 申請に係る当事者の営業所の所在地が当該申請を受けた登記所の管轄に属しないとき。
二 申請が登記すべき事項以外の事項の登記を目的とするとき。
三 申請に係る登記がその登記所において既に登記されているとき。
四 申請の権限を有しない者の申請によるとき、又は申請の権限を有する者であることの証明がないとき。
五 第二十一条第三項に規定する場合において、当該申請に係る登記をすることにより同項の登記の申請書のうち他の申請書に係る登記をすることができなくなるとき。

 

 

登記の更正

更正とは、登記した内容が初めから間違えていた場合を指します。そこが変更との違いですね。

 

(例)

・会社名を間違えた

・本店の住所を間違えた

 

登記官のミスの場合は、職権で更正してもらうことができますが、申請人がミスした場合は、更正の登記申請を行うこととなります。

 

注意ポイント

更正登記を行った場合でも、もとの登記は記載されたままとなります。

 

必要書類

「錯誤又は遺漏があることを証する書面」が添付書類となります。

ただし、氏又は住所の更正の場合や、添付書類等から明らかである場合は不要です。

 

どのような書面が証明書になるかは、その更正内容で異なります。

 

登記に必要な費用

報酬 数万円

税金 申請件数1件につき2万円(例外あり 別表第一24参照)

実費 数千円

 

 

登記の抹消

一定の場合には、登記した内容を抹消することができます。

 

1.第二十四条第一号から第三号まで又は第五号に掲げる事由があること。

却下事由のうち、一定の場合には抹消できるというものですが、ここに該当することは滅多にないでしょうから、説明を省略します。

 

2.登記された事項につき無効の原因があること。ただし、訴えをもってのみその無効を主張することができる場合を除く。

例えば、任期が満了していないにもかかわらず、再選の登記を行ってしまった場合などが想定できます。登記する際に定款を添付していなければ、実際の任期は登記官にわからないためですね。

 

 

訴えをもってのみ主張できる場合とは?

一般的に、違法な法律行為は当然に無効です。

無効とは、あとで取り消しができるというものではなく、最初から効力がないという意味です。

 

しかし、会社というのは多数の法律関係が発生することがあらかじめわかっている組織ですから、その法律行為の一つが簡単に無効だと認められると、

それまで多数の関係者と積み重ねた行為すべてが無効になるという大変な事態になりかねません。

 

そのため、会社法という法律で、無効について争いたい場合の制限が設けられており、その中で、訴えによってのみ効力を争うことができるように定められているものがあります。(会社法828条)

 

(例)訴えによってのみ効力を争えるもの

① 会社設立

② 新株発行 ※

③ 自己株式の処分 ※

④ 新株予約権の発行 ※

⑤ 資本減少

⑥ 吸収合併・新設合併

⑦ 吸収分割・新設分割

⑧ 株式交換・株式移転

 

原則として、これらの会社の行為については、訴えによらなければ無効を主張することができず、提訴権者にも制限があります。

 

ポイント

※ 新株発行・自己株式の処分・新株予約権の発行については、もとからこれらの行為が行われておらず、行われたかのような外観が存在する場合(登記されたときなど)がある。

この場合、行為の無効ではなく、不存在を主張することができ、この不存在の主張にはとくに制限が設けられていない。よって、これらの行為ついては訴訟を経なくとも、登記を抹消できる場合がある。

 

 

必要書類

「錯誤又は遺漏があることを証する書面(無効又は不存在の原因があることを証する書面)」が添付書類となります。

ただし、氏又は住所の更正の場合や、添付書類等から明らかである場合は不要です。

 

どのような書面が証明書になるかは、その登記内容で異なります。

 

登記に必要な費用

報酬 数万円

税金 申請件数1件につき2万円(例外あり 別表第一24参照)

実費 数千円

 

 

登記申請のご相談

商業(会社・法人)登記のご依頼

全国対応!郵送・メール・電話のみでスピーディに手続き可能です。 ※会社設立などの一部業務を除く   ネットで登記申請書を作成するサービスなんかもあるけど…  あまり知られていませんが、司法書 ...

続きを見る

 

知識ページ一覧

知識ページをご覧になりたい方はこちらから

旧法借地権と新法借地権についてまとめ

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 このこの記事では、借地借家法のうち、とくに旧法と新法の借地権の違いを分かりやすく整理し、その背景や実務上の留意点についても解説します。 借地権とは 建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権の事です。 賃借権ではありますが、譲渡・賃貸することができ、所有権には劣るものの、財産的な価値があります。 (定義) 第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 一 借地権 建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権 ...

ReadMore

【知らないと損する】相続登記義務化をあらためて、ポイント解説

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 2024年4月1日から、不動産の相続登記が義務化されることになりました。   これにより、相続人は相続が発生した日から一定の期間内に登記を行わなければならなくなります。 この義務化の背景や、相続登記を怠った場合の罰則、そして今後の不動産相続における影響について、この記事では、細かい論点は割愛して、ポイントだけを解説します。 相続登記義務化の背景 不動産の相続登記が長期間行われないケースが多く、その結果として、土地や建物の所有者が不明のままと ...

ReadMore

大切な人の「もしも」に備える。認知症対策の第一歩と専門家のサポート

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 この記事では、認知症対策として、有益と思われる法的サービスをご紹介しております。 大切な人の「もしも」に備える。認知症対策の第一歩と専門家のサポート   「最近、母の物忘れがひどくなってきた気がする…」「父の財産管理がだんだん難しくなってきた…」   もしあなたが今、大切なご家族のことで、そんな不安を感じているなら、決して一人で悩まないでください。認知症は誰にでも起こりうる可能性があり、早期の備えが、ご本人にとっても、ご家族にとっ ...

ReadMore

不動産の名義変更は、当事務所にまずはご相談ください

どんなときに依頼するのがおすすめですか? 例えば、こんなとき! ✅ 不動産の名義を、妻・子供・孫に変更したい ✅ 不動産の名義変更にかかる費用や税金について知りたい  ✅ 不動産の売却、管理について相談したい ✅ これまで一度も司法書士に相談したことがなく、気軽に相談できる司法書士がいないとき   司法書士 廣澤真太郎 こんなときは、ぜひ、当事務所にお声がけください!   どんなことを司法書士に依頼できるのですか? 次のような業務 ...

ReadMore

社団法人・NPO法人の解散、清算結了登記の流れ

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 当事務所に法人の解散・清算結了登記をご依頼いただいた場合の手続の全体像について記載した記事です。       会社の解散・清算・清算結了   前提として会社の解散について簡単に説明します。 まずは、次の図をご覧ください。(図は株式会社のものですが、NPO法人、社団法人でも同様です) このように、法人は解散するだけでは消滅しません。 法人の解散後、清算会社となり、清算手続きを経てから法人格が消滅します。 &nbs ...

ReadMore

親が認知症になったら不動産売買はできない?

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 こちらの記事は、よくある老後の不動産に関する不安とその対策について、記載したものです。   認知症の人は、不動産を売ることができない なぜ、認知症(その他精神疾患)を抱える方は、不動産を売ることができないのか? 認知症が進行すると、判断能力が低下し、自分の意思で物事を決めることが難しくなります。   不動産の売却は、大きな財産に関わる重要な決断です。   そのため、判断能力が十分でない人が、安易に契約を結ぶと、後でトラブ ...

ReadMore

任意後見契約とは

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 この記事では、認知症対策に活用されている任意後見契約について、解説しています。 任意後見契約とは? 任意後見制度とは? 任意後見制度は、成年後見制度の一種です。成年後見制度には、①法定後見制度と②任意後見制度の2種類があります。   ②任意後見制度は、将来、認知症などにより判断能力が不十分になった場合に備え、あらかじめ自分の信頼できる人に、自分の生活や財産の管理に関する事務を行ってもらうように依頼しておくことができる制度です。 動画 厚生労 ...

ReadMore

高齢者のひとり暮らし・生活お役立ち情報

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です この記事は、お隣の大和市のパンフレットを読んでみて、わかりやすく、かつ、知らない制度もあったので、備忘録として記事にまとめたものです。     参考資料 生活お役立ちガイド これ一冊あればひとり暮らしもひと安心!第3版 生活お役立ちガイド 大和市   別サイトの記事 大和市が行う「おひとり様などの終活支援事業」が高齢者を幸せにしている理由     お悩み別 急病が心配。準備できることは? 高齢者見守りシ ...

ReadMore

登録商標の調査について

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 この記事では、会社の設立時等の類似商号の調査について備忘録で記載したものです。なお、商標登録は、弁理士の独占業務です。 商標とは? 商標とは、事業者が、自身・自社の取り扱う商品やサービスを、他人のものと区別するために使用するマーク(識別標識)です。 文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音など、さまざまな商標が存在し、類似している商標の、同じようなサービスを見つけたときは、差し止めを請求をすることが可能です。 基本知識はこちらをご ...

ReadMore

オンライン登記申請時のデータ入力方法

この記事は、法務局からの協力依頼事項を、PDFから書き出しして、備忘録で記事にしたものです。(主に同業者向けの記事です) オンライン登記申請時の入力方法 ※令和4年7月1日現在 ※□は空白スペース   項 目 入力方法 入力方法の説明 適正な入力 誤った入力(法務局で修正が必要)               氏名等   法務太郎   亡法務太郎 「亡」は入力しない。 ただし、相続人不存在の場合の「亡何某相続 ...

ReadMore

 

 HOME

会社法

 

この記事をかいた人

-会社登記・法務, 記事一覧