司法書士とは?頼めるのはどんなこと?

司法書士 廣澤真太郎
こんにちは。司法書士・行政書士の廣澤です。

 

名刺を渡された際に「司法書士ってなに?」と思われる方もいらっしゃるのはないでしょうか。

この記事では、司法書士にはどんなことが依頼できるのかをご紹介しています。

 

[toc]

 

パンフレット

神奈川県司法書士会パンフレットPDF

司法書士-職業詳細:厚生労働省

 

司法書士とは?

身近な法律事務の専門家です。

 

明治5年から140年以上にわたって職務の在り方が変遷してきているため、具体的な定義は難しいのですが、弁護士よりも身近な法律の専門家として、常に法律事務に携わってきました。

 

「不動産や法人の登記の専門家」とイメージされている方も多いかと思いますが、本来の司法書士は裁判所への提出書類を作成するなどの業務を行っていました。時代とともに特化する業務が変化してきたわけです。

 

現在では、「成年後見と言えば司法書士」と言われるほどに実績をあげており、日常生活で発生する様々な法律に関する問題に対し、様々な場面で広く関与しています。

 

 

司法書士は登記の専門家ですか?

そのとおりですが、司法書士の仕事は登記だけではありません。次のような業務をメインで行っています。

1.不動産の登記に関する業務

2.会社、法人登記や企業法務に関する業務

3.相続に関する業務

4.成年後見に関する業務 

5.遺言や任意後見など、生前対策に関する業務

6.裁判手続、債務整理に関する業務

7.遺言の執行、財産管理等の業務・その他

 

司法書士は法律家ですか?

司法書士は法律家ではなく、法律事務の専門家です。

 

定義は人により異なるのかもしれませんが、私は、法律家は法曹(弁護士、裁判官、検察官)のことを指すと考えます。

ただし、簡易裁判所での代理権がある認定司法書士は、法律家の一部を担っているといえます。

 

行政書士は法律家ですか?

行政書士も同様で法律家ではないと考えます。また、行政書士は法律の専門家でもありません。

 

法律ではなく、行政手続きの専門家であり、その道のスペシャリストです。許認可は複雑で論点も多く、ものによっては多額の賠償リスクもあります。

自営業スタイルの公務員をイメージしてください。

 

 

司法書士と行政書士の違いはなんですか?

名前が似ていますが、全く別の資格です。

 

司法書士は上記業務の、行政書士は各種許認可等の行政手続のプロですし、管轄省庁も違います。

試験内容についても、行政書士は法律の資格試験というよりも、公務員試験に近いです。

 

司法書士と行政書士にそれぞれ頼めること

同じようなことをしているように見えますから、わかりづらいですね。

 

それは、許認可の仕事が少ない地域の行政書士会などが、名前が似ているため、会員に司法書士業務の一部を行わせようと躍起になっているためです。(会員から政治連盟への献金なども積極的に募っています。)

 

韓非子の「官を侵すの害」のように、多くの場合クライアント様にとってはメリットがないので、上記司法書士業務は司法書士に、建築業やVISA等の許認可については行政書士に、それぞれご依頼になるのが賢明です。

 

司法書士 行政書士
法人登記、会社設立 ×  登記書類作成は違法 電子定款作成のみ行う事業者あり
遺産承継業務 〇 法的根拠あり △ 法的根拠なし
相続放棄 ×  書類作成は違法
相続登記・不動産登記 ×   登記書類作成は違法 遺産分割協議書のみ作成する事業者あり
遺言の作成サポート △ 法律的な判断はできないため
後見申立て・就任 〇 専門職後見人として就任(弁護士、司法書士、社会福祉士) ×  申立書類作成は違法 一般市民として就任する場合あり
建設業、経営事項審査/産業廃棄物処理業許可 ×
風俗営業の許可 ×
農地転用許可・届出 ×
自動車の登録 ×
在留資格・帰化・国際業務
各種許認可 運送・自動車等 ×

 

 

司法書士が行っている様々なしごと

 

1.不動産の登記に関する業務

現在は、不動産登記を主軸業務とする事務所が最も多いです。

 

主に、不動産売買の決済日に立ち会い、住所変更、抵当権抹消、抵当権設定、所有権移転登記等の必要な一連の登記をまとめて行っています。

不動産の売買では登記の失敗が許されないので、必ず司法書士が関与します。

 

その他は離婚時の財産分与、親族間の贈与や交換、ローン完済や借り換えなど場合に応じて申請する登記を代行しています。

 

 

2.会社、法人登記や企業法務に関する業務

会社には登記事項に変更があった場合に登記申請を行う義務がありますので、定期的にその登記を行います。(登記事項は会社法911条)

 

また、法務担当者がいない会社さんは多いですから、司法書士が代わりに定款刷新、契約書の添削、株式譲渡のサポートなど企業法務に関する様々な相談に応じています。

 

 

3.相続に関する業務

規則31条を根拠として、任意の相続財産管理人の地位に就任し、相続手続全般を包括的に代行しています。

 

具体的には、戸籍の収集読み取り、財産調査、相続人間の調整、遺産分割協議書の作成、相続関係説明図や法定相続情報証明作成取得、預金解約や不動産登記、有価証券の移管など相続開始から手続き完了までの一連の流れ全てを行います。

 

相続人が相続放棄をする場合などにも、家庭裁判所への提出書類作成業務を行っていますので、相続の最初の相談先は司法書士がベストだといえます。

 

 

4.成年後見に関する業務 

家庭裁判所に対する後見(保佐)の申立てや、後見人就任後の後見事務まで一連の手続き全てを司法書士が担っています。

後見申立てを弁護士、司法書士以外の者が業として行うことは、法律で禁止されています。

 

専門職(職業)後見人と市民後見人のちがい

申立ての際に候補者がいない場合や親族が高齢や病気などで適当な人材がいないようなケースでは、通常は専門職後見人の中から裁判所が後見人の選任を行います。

 

具体的には、弁護士・司法書士・社会福祉士がそうです。

 

しかし、候補者には後見人の欠格事由などを除いて制限がありませんから、本人に身近な介護関係の方や行政書士などの一般の方が就任することもありますが、これを市民後見人といいます。

 

 

5.遺言や任意後見など、生前対策に関する業務

本人の判断能力が低下したときに家庭裁判所に申立てを行うことで、後見(保佐)が開始するケースを「法定後見」と呼びます。

 

これとは別に、健康な時にあらかじめ認知症に備え、自分の後見人に就任する人や、任せる業務を決めておくことができる制度があります。これを「任意後見」と呼びます。

 

この任意後見契約は普段、行き慣れない公証役場にて公証人を介して公正証書で締結する必要があり、またその制度理解については専門家の助言が必須です。

 

また、一般的には認知症対策としての「任意後見契約」、体調不良対策としての「財産管理契約」、死後のことについて決めておく「遺言書や、死後事務委任契約」など、これらをまとめて公正証書にて作成することが多く、司法書士が全体の原案作成、助言、サポートを行っています。

 

 

6.裁判手続、債務整理に関する業務

事務所により手続きを行っていない場合もありますが、借金の債務整理(任意整理、個人民事再生、個人の破産)について、司法書士がその手続きを代理又は書類作成の方法でサポートしています。

 

また、少額の金銭トラブルについては、過去、弁護士が受任したがらなかったため、司法書士が裁判所提出書類作成業務の一環としてサポートを行ってきましたが、その功績が認められ、訴額(請求額)が140万円未満の争訟であれば、簡易裁判所の手続きを司法書士も代理で行うことができるようになりました。

 

例えば、フリーランスの方で20万円の未収金の回収がしたいといった場合、催告など通知書作成から、少額訴訟、少額訴訟債権執行までを司法書士がすべて代理で行う事ができるようになったということです。

 

 

7.遺言の執行、財産管理等の業務・その他

遺言内容を確実に実現させるため、通常は遺言作成時に遺言執行者を定めますが、その就任を司法書士に依頼することもできます。

 

一般の方に依頼することもできますが、後見人と同様で、利益追求型の組織(株式会社など)に財産管理を任せるのはご不安でしょうし、任せる際の報酬も高額ですから、司法書士が適任といえます。

 

財産管理業務には、相続財産管理人・不在者財産管理人などがあります。

 

 

知識ページ一覧

知識ページをご覧になりたい方はこちらから

オンライン登記申請時のデータ入力方法

この記事は、法務局からの協力依頼事項を、PDFから書き出しして、備忘録で記事にしたものです。(主に同業者向けの記事です) オンライン登記申請時の入力方法 ※令和4年7月1日現在 ※□は空白スペース   項 目 入力方法 入力方法の説明 適正な入力 誤った入力(法務局で修正が必要)               氏名等   法務太郎   亡法務太郎 「亡」は入力しない。 ただし、相続人不存在の場合の「亡何某相続 ...

ReadMore

外国籍の日本在住者が日本で起業する際に、気を付けなければならないこと

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 こちらの記事は、最近増えた日本在住の外国籍の方の起業に関する知識を、備忘録でまとめたものです。 HP:出入国在留管理庁   在留資格 在留資格とは、日本における滞在や、一定の活動を認める資格の事です。 大まかに、制限が少なく無制限に滞在することも認められる場合がある「居住資格」と、活動や滞在期間に制限を設けている「活動資格」に分類され、さらに細かく種類が分けられており、細かい決まりがあります。   一定の在留資格がなければ、日本で ...

ReadMore

不動産の共有状態の解消について

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 こちらの記事は、様々な理由で、共有状態となっている不動産を、どのように解消するのかについて記載した記事です。 不動産の「共有」とは? 不動産を複数名で、所有している状態のことです。 ご夫婦で持分2分の1ずつ所有している場合は、「不動産を2名で共有している」と言いかえることができます。     不動産の共有の問題点 節税目的の場合や融資の受けやすさなどから、共有で不動産の取得を行う方も多くいらっしゃいますが、一般的に、共有状態はデメ ...

ReadMore

相続や遺言書の相談 税理士と弁護士と司法書士、どこに相談すればいい?

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士・行政書士の廣澤です。 この記事は、相続・遺言書の相談をどこにすればよいのか?騙されたりしないだろうかと、ご不安な方向けの記事です。   相続や遺言書の相談先 結論として、”最初”に、司法書士にご相談いただくことをおすすめします!     司法書士に相談すべき理由 まずは、各相談先の特徴からご確認ください。 相談先 税理士 相続税、不動産を売る場合は譲渡所得税の相談ができる 弁護士 揉めている場合に、味方になって交渉してくれる 司法書 ...

ReadMore

令和6年4月1日以降の不動産登記の取り扱い

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 この記事は、令和6年4月1日以降の取り扱いについて、備忘録としてまとめたものです。 令和6年4月1日以降の手続きの取り扱い 1.外国に住所を有する外国人又は法人の住所証明情報の取扱い 法務省民二第1596号令和5年12月15日通達 日本に住所のない自然人、法人の住所証明情報が変更されます。 対象者 ・外国に住所を有する外国人 又は 外国に住所を有する法人 ・所有権の登記名義人となる者の住所証明情報   住所証明情報 1.外国人  ① 登記名 ...

ReadMore

令和6年4月1日~ 相続人申告登記の制度開始

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 相続人申告登記の通達(法務省民二第535号令和6年3月15日)がでましたので、記事にしてみました。ご自由にご覧ください。 相続人申告登記とは 民法等の一部を改正する法律による相続登記の申請義務化(令和6年4月1日施行)に伴い、創設された制度です。   基本的には、期限内に相続登記を行えば良いため、現状、次のようなケースで、相続登記が行えない場合などに、活用することが考えられます。   ・相続人に非協力的な方がいて、登記申請が行えな ...

ReadMore

一歩踏み込んだ終活!エンディングノート、死後事務、財産管理等、任意後見、遺言書

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 この記事は、4人に1人が認知症とされる現代において、司法書士が終活に際して、お役に立てるサービスについて、ご紹介した記事です。 司法書士が終活に関してできること 司法書士は、生前対策だけでなく、その後の相続手続きについても日ごろから業務として行っている、法律事務のエキスパートです。 ・ライフプランノート(エンディングノート)の作成 ・各契約書や遺言書等の法的書類の組成、公正証書作成のサポート  ・その後の、相続手続き・遺言執行業務をまとめて依頼 &n ...

ReadMore

外国在住者が所有者となる場合の住所証明情報

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 この記事は、外国在住者が不動産を取得する場合の、住所証明情報について、備忘録として記載したものです。 通達 令和5年12月15日 外国在住者(個人)の住所証明情報 次のいずれかを住所証明情報とする。   1.本国等政府の作成に係る書面 + 訳文 登記名義人となる者の本国又は居住国(本国又は居住国の州その他の地域を含む。以下「本国等」という。)の政府(本国等の領事を含み、公証人を除く。以下「本国等政府」という。)の作成に係る住所を証明する書面 ...

ReadMore

株券の廃止手続き

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 この記事では、株券の廃止にあたっての手続きについて、記載していきます。 株券とは 株券とは、株券発行会社における株主としての地位を表した有価証券のことをいいます。 平成16年に株券の不発行が認められるようになり、平成21年以降は上場株券については、電子化され、発行されないことになりました。また、会社法施行以降は、株券不発行が原則とされています。   具体的には、次のような記載のある証券の事を指します。   株券記載事項 (株券の記 ...

ReadMore

増資の登記について

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です この記事では、増資の登記手続きについて解説していきます。   増資の登記 登記事項を変更した場合は、2週間以内に役員変更の登記申請を行う必要があり、これを怠ると、100万円以下の過料が代表者に課される可能性があります。 増資する日が決まっている場合は、速やかに登記手続を行いましょう。   増資の準備物 ご自身で進める場合  ・申請書 ・定款 ・就任承諾書 ・株主総会議事録、取締役会議事録、取締役の決定書 ・株主リスト ・資本金の計上 ...

ReadMore

 

HOME

 

この記事をかいた人

-不動産登記・税金, 会社登記・法務, 後見・福祉・生前対策, 抵当権, 相続・相続放棄, 記事一覧, 遺言書, 離婚・贈与