貸金庫の相続手続きが大変であるというのは周知のとおりですが、
この、問題となりがちな貸金庫について、記事にしておきたいと思います。
貸金庫に財産関係資料をまとめて保管するのは避けましょう!
相続手続きという観点から、貸金庫について、この記事でお伝えしたいことはこれだけです。
貸金庫に、財産関係の資料を全て保管するのは、可能な限り避けましょう。
財産関係資料とは例えば…
保管を避けたほうが良いもの
・通帳
・遺言書
・契約書
・多額の貴金属類
・多額の現金
このようなものを指しています。
逆に、貸金庫に保管しておいても問題なさそうなものは、次のようなものですね。
保管されていても問題ないもの
・権利証、登記識別情報
・実印や銀行印
・少額の貴金属類
・少額の現金
・思い出の品
貸金庫があると、どうなる?
遺産の相続手続きは、通常は次のような流れとなります。
① 相続人の調査確定
② 財産の調査
③ 遺産分割協議
④ 各種手続き
しかし、貸金庫がある場合は、次のような流れにせざるを得ません。
① 相続人の調査確定
② 相続人全員で貸金庫の開扉
③ 財産の調査
④ 遺産分割協議
⑤ 各種手続き
このような流れになることで、一体なにが問題なのか?についてですが、思いつく範囲で箇条書きしておきます。
・貸金庫の開扉自体が困難な場合がある
・相続手続きの前に、まずは貸金庫開扉を行うこととなり、二度手間になる
・相続トラブルの可能性が高まる
・余計な時間、実費が発生する
貸金庫の開扉自体が困難な場合がある
相続人全員の同意が必要
貸金庫の開扉には、相続人全員の同意が必要です。
相続人全員の同意を証明するには、全員分の印鑑証明書と貸金庫の開扉についての署名等の意思表示が必要ですが、協力的でない方がいる場合や連絡がとれない方がいると、そもそも貸金庫の開扉が困難になります。
例えば、上記のような事情を踏まえて、遺産分割協議をしなくてもいいように遺言書を作成していたとしても、その遺言書を貸金庫に保管してしまうと、遺言書をとりだすために全員の同意が必要という状況になりますから、遺言書を作成した意味がなくなってしまいます。
また、貸金庫に全て財産資料が入っていた場合、財産調査に時間がかかり、相続税申告に間に合わない可能性も高まります。
相続人全員の立会いが絶対の場合も
金融機関によっては、相続人全員が立ち会わなければ、貸金庫を開扉させないという取り扱いの場合があります。
では、相続人が10人以上の場合はどうなのかというと、同様に、全員で、平日の同日に金融機関の支店に来てくださいと平気で言われます。
ありえないと感じられるかもしれませんが、実際に、私は言われたことが何度かあります。
代理不可の場合もある
貸金庫の開扉は通常、相続人全員の出席のもとで行われますが、相続人が遠方にお住まいの場合や高齢の場合などは、難しいですよね。
しかし、金融機関によっては代理の開扉は、弁護士か司法書士以外一切認めないという扱いをしている場合もあります。自分たちで開扉する事ができないということですね。
実際、委任状があるにもかかわらず、司法書士の実印と印鑑証明書を添付のうえ、「意思表示が間違いなく行われたことの証明」が欲しいといわれたこともあります。司法書士に責任をとってもらう趣旨でしょう。
相続トラブルの可能性が高まる
貸金庫に何があったかは、録画でもしなければわかりませんから、例えば、相続人全員の立会なく貸金庫を開扉した場合、そこにある財産をポケットに入れてしまう相続人もいるかもしれません。
その他、遺言が保管されていたケースでは、事前に話し合いで遺産の分配割合を決定していたとしても、法律的には遺言の効力は強力で、原則として遺言書の内容が優先します。
そのため、遺言の内容によっては、利益の大きい相続人と、そうでない相続人とでトラブルの可能性が高まります。
余計な時間がかかり、余計な実費が発生する
相続手続きの前に、相続人全員で貸金庫開扉を行うために、平日の同日に金融機関窓口に全員で赴くことになりますから、それだけで、かなりの手間です。
代理をお願いするとしても、基本的に弁護士か司法書士に依頼することになりますから、費用も余計にかかります。
また、貸金庫の中に遺言書があった場合、余計な戸籍を収集したことになりますし、遺産の取得者ではない方にとっては無駄足となるため、その時間も交通費も無駄になるでしょう。
さらに相続手続きをする前に貸金庫を開扉して、その後に遺産分割協議をして、という流れになるので、書類の準備も二度手間、三度手間になります。
相続税申告期限が迫っている場合で、通帳が貸金庫の中にあると、数年分の取引履歴取得費用も余分に発生してしまいます。
まとめ
どうしても、貸金庫に財産関係資料を保管しておきたい場合は、信頼できる相続人に貸金庫の鍵の場所と暗証番号を伝えておけばよさそうですが、これは金融機関との貸金庫の契約の違約に該当するでしょうし、トラブルの火種になりかねません。
相続人同士でもめてほしくないとお考えの場合は、可能であれば、貸金庫に保管してある貴金属類は、早めに現金化しておき、多額の現金は口座に預け、また、どのような財産があるかについては、エンディングノートなどで相続人にわかるようにしておき、通帳などは貸金庫以外の場所に保管しましょう。
以上、参考になれば幸いです。
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