不動産登記と印鑑証明書の関係?

司法書士 廣澤真太郎
こんにちは。司法書士の廣澤です。

この記事は、登記申請の際の印鑑証明書について、整理したものです。

 

 

不動産登記における印鑑証明書の添付根拠

根拠は、不動産登記令16条です。

 

(申請情報を記載した書面への記名押印等)
第十六条 申請人又はその代表者若しくは代理人は、法務省令で定める場合を除き、申請情報を記載した書面に記名押印しなければならない。
2 前項の場合において、申請情報を記載した書面には、法務省令で定める場合を除き、同項の規定により記名押印した者(委任による代理人を除く。)の印鑑に関する証明書(住所地の市町村長(特別区の区長を含むものとし、地方自治法第二百五十二条の十九第一項の指定都市にあっては、市長又は区長若しくは総合区長とする。次条第一項において同じ。)又は登記官が作成するものに限る。以下同じ。)を添付しなければならない。
3 前項の印鑑に関する証明書は、作成後三月以内のものでなければならない。
4 官庁又は公署が登記の嘱託をする場合における嘱託情報を記載した書面については、第二項の規定は、適用しない。
5 第十二条第一項及び第十四条の規定は、法務省令で定めるところにより申請情報の全部を記録した磁気ディスクを提出する方法により登記を申請する場合について準用する。

 

次に、司法書士から作成した委任状に、実印押印をお願いされた経験がある方もいらっしゃると思いますが、以下の条文が根拠です。

 

ただし、実務上は、登記申請に実印押印が不要な場合でも、意思確認としてハンコをもらうことが多いです。

 

(代理人の権限を証する情報を記載した書面への記名押印等)
第十八条 委任による代理人によって登記を申請する場合には、申請人又はその代表者は、法務省令で定める場合を除き、当該代理人の権限を証する情報を記載した書面に記名押印しなければならない。復代理人によって申請する場合における代理人についても、同様とする。
2 前項の場合において、代理人(復代理人を含む。)の権限を証する情報を記載した書面には、法務省令で定める場合を除き、同項の規定により記名押印した者(委任による代理人を除く。)の印鑑に関する証明書を添付しなければならない。
3 前項の印鑑に関する証明書は、作成後三月以内のものでなければならない。
4 第二項の規定は、官庁又は公署が登記の嘱託をする場合には、適用しない。

 

 

 

省略に関する規定

不動産の登記申請には、原則として、印鑑証明書の添付や記名押印が必須となっていますが、なんでもかんでも印鑑証明書の提出が必要になると大変です。

 

そこで、不動産登記規則にて、例外が定められています。

 

(申請書に印鑑証明書の添付を要しない場合)
第四十八条 令第十六条第二項の法務省令で定める場合は、次に掲げる場合とする。
一 法人の代表者又は代理人が記名押印した者である場合において、その会社法人等番号を申請情報の内容としたとき。ただし、登記官が記名押印した者の印鑑に関する証明書を作成することが可能である場合に限る。
二 申請人又はその代表者若しくは代理人が記名押印した申請書について公証人又はこれに準ずる者の認証を受けた場合
三 裁判所によって選任された者がその職務上行う申請の申請書に押印した印鑑に関する証明書であって、裁判所書記官が最高裁判所規則で定めるところにより作成したものが添付されている場合
四 申請人が前条第三号ホに掲げる者に該当する場合(同号イ(6)に掲げる者に該当する場合を除く。)
五 申請人が前条第三号イからニまでに掲げる者のいずれにも該当しない場合(前号に掲げる場合を除く。)

 

展開すると次の通りです。

 

・法人が会社法人等番号を提供したとき

・申請書について、公証人の認証を受けたとき

・裁判所書記官が作成した印鑑証明書を添付するとき

・法21条により登記識別情報通知を発行してもらうことになる申請人(権利者)

※合筆の登記、合体による登記等又は建物の合併の登記の権利者を除く

・所有権の登記名義人が、次の登記を申請する場合の、いずれにも該当しない場合

①当該登記名義人が登記義務者となる権利に関する登記(担保権(根抵当権及び根質権を除く。)の債務者に関する変更の登記及び更正の登記を除く。)

②共有物分割禁止の定めに係る権利の変更の登記

③所有権の移転の登記がない場合における所有権の登記の抹消

④信託法(平成十八年法律第百八号)第三条第三号に掲げる方法によってされた信託による権利の変更の登記

⑤仮登記の抹消(法第百十条前段の規定により所有権に関する仮登記の登記名義人が単独で申請するものに限る。)

⑥合筆の登記、合体による登記等又は建物の合併の登記

⑦法第二十二条ただし書の規定により登記識別情報を提供することなく担保権(根抵当権及び根質権を除く。)の債務者に関する変更の登記又は更正の登記を申請するもの

⑧所有権以外の権利の登記名義人であって、法第二十二条ただし書の規定により登記識別情報を提供することなく当該登記名義人が登記義務者となる権利に関する登記を申請するもの

⑨所有権以外の権利の登記名義人であって、法第二十二条ただし書の規定により登記識別情報を提供することなく当該登記名義人が信託法第三条第三号に掲げる方法によってされた信託による権利の変更の登記を申請するもの

 

 

省略について深堀り

 

法人が会社法人等番号を提供したとき

法人のうち、会社の印鑑を届出している場合は、会社法人等番号で印鑑証明書の提出を省略することができます。

ただし、実務上は印影確認や登記申請意思確認の関係から、印鑑証明書の添付を行うのが一般的です。

 

法21条により登記識別情報通知を発行してもらうことになる申請人

これから登記名義人になり、登記識別情報通知をもらうという立場の人の意思確認まで、厳重にする必要はないという趣旨でしょう。

売買であれば、買主が該当します。

 

当該登記名義人が登記義務者となる権利に関する登記(担保権(根抵当権及び根質権を除く。)の債務者に関する変更の登記及び更正の登記を除く。)

所有権に関する登記の義務者は、一部を除いて印鑑証明書の提出が必要ですよ、という内容ですね。

売買であれば、売主が該当します。

 

法110条前段による、単独申請での仮登記の抹消に該当しない場合

登記は共同申請が原則ですが、不動産登記法110条にて、仮登記の単独抹消が認められています。ややこしいですが、次の通りです。

110条後段の場合のみ、申請書や委任状に押印したものについての印鑑証明書はいらないよと書いてありますが、承諾書に押印が必要なので、結局、登記名義人の印鑑証明書は必要です。

① 共同申請の場合 

申請書についての印鑑証明書、登記識別情報通知が必要

② 仮登記権利者が単独申請する場合 ※法110条前段

申請書についての印鑑証明書、登記識別情報通知が必要

③ 利害関係人が単独申請する場合 ※法110条後段

承諾書についての印鑑証明書が必要だが、登記識別情報通知は不要

 

(承諾を証する情報を記載した書面への記名押印等)
第十九条 第七条第一項第五号ハ若しくは第六号の規定又はその他の法令の規定により申請情報と併せて提供しなければならない同意又は承諾を証する情報を記載した書面には、法務省令で定める場合を除き、その作成者が記名押印しなければならない。
2 前項の書面には、官庁又は公署の作成に係る場合その他法務省令で定める場合を除き、同項の規定により記名押印した者の印鑑に関する証明書を添付しなければならない。

ポイント

申請書や委任状に実印を押印する場合に添付する印鑑証明書は、発行後3か月以内のものを準備する必要がありますが、第三者の許可、同意または承諾を証する情報として添付する印鑑証明書に期限はありません。

前者は申請意思の確認、後者は文書成立の真正を担保するという趣旨であり、添付の理由が異なるからです。

 

所有権以外の権利の登記名義人であって、法第二十二条ただし書の規定により登記識別情報を提供することなく当該登記名義人が登記義務者となる権利に関する登記を申請するもの

所有権以外の権利についての登記名義人が義務者となる際、登記識別情報通知を不通知にした場合など正当な理由があるときは、登記識別情報通知を提供しないときでも、印鑑証明書の添付は不要です。

裏を返せば、登記識別情報を紛失するなどして、提供できない正当な理由とは言えないケースでは、印鑑証明書の添付が必要になります。

ここは忘れがちなので要注意ですね。

 

所有権以外の権利については、登記名義人が義務者になる際、登記識別情報通知があるのなら、印鑑証明書の添付は不要であるという反対解釈ができる規定でもあります。

 

 

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