デジタル遺産は生前に整理をしておきましょう

司法書士 廣澤真太郎
こんにちは。司法書士・行政書士の廣澤です

相続実務において、現在問題視されているのが、デジタル遺産と呼ばれるデジタル形式の遺産の取り扱いです。

 

この記事では、デジタル遺産について生前にどういった対応をとっておくべきなのかや、死後にどのように調査するのかについて解説していきます。

 

※令和4年1月時点 今後の政府の動向に注目していきましょう。

 

 

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デジタル遺産とは?

明確な定義はまだありません。一般的には、デジタル形式で価値のあるデータのこと等を指します。

 

オフラインのデジタル遺産としては、PC・スマートフォン・カメラ・USBメモリなどに保存されたデータ、ポイント、電子マネー等が想定されます。

 

オンライン上のデジタル遺産としては、FXや暗号資産(仮想通貨)の取引をしているアカウント、SNSアカウント、WEBサイト、その他ブログを収益化している場合のアフィリエイト広告主としての契約上の地位など、あげはじめるとキリがありません。

まだまだ新たなデジタル形式の遺産が登場する可能性があります。

 

 

 

 

何が問題視されているのか?

 

具体的には次のような問題があります。

1.そもそもデジタル遺産は相続の対象になるのか?

2.発見しづらく、またPCなどを処分するとアクセスできなくなる可能性が高い

3.発見が遅れた場合のリスクがある

4.放置するにもリスクがある

 

 

 

1.そもそもデジタル遺産は相続の対象になるのか?

現状、契約内容やその性質から個別具体的に検討するしかない

 

今後、子供の頃からスマートフォンに触れて育った世代も高齢化していくに伴い、法整備が期待されていますが、

デジタル遺産が相続の対象となるのか否かについては学説もわかれており、法律もまだまだ発展途上ということで、契約内容・規約等から個別具体的に判断するしかないというのが現状のようです。

 

 

一身専属権(本人のみに帰属し、亡くなると同時に消滅する権利)なのか、権利義務の客体となる「物」といえるのか、アカウントなどは「債権債務」といえるかなどまだ明確に決まっていないとのこと。

つまり、「デジタル遺産」は相続できますか?という問いにたいしては、「ものによるし、契約内容にもよる」という回答になります。

実際には、相続人である一般の方が相続対象か否かの判断を行うということにはならないので、個別に契約相手方に連絡をし、手続の方法についての指示を仰ぐということになると思います。

 

ただし、仮想通貨などは法律で資金決済手段として財産的価値があるものとされている関係上、相続対象となる財産となるかどうかについては、実務上争いはないようです。

 

 

 

2.発見しづらく、またPCなどを処分するとアクセスできなくなる可能性が高い

遺族がデジタル遺産を全て発見するのは困難

 

SNSアカウントやクラウド保存した写真のデータなど、利用している本人でさえどこにどういった形で保存したかを覚えていないというケースがありますよね。

 

生前に整理しておくことは容易ですが、相続開始後に遺族の方が一つ一つ探していくとなると、大変な作業になります。

 

スマートフォンは何回か暗証番号を間違えるとデータが消える設定の場合もありますし、2段階認証で指紋認証が必要なケース、その他IDとパスワードが届くメールアドレスがわからないという事も考えられますからなおさらですね。

 

 

また、PCやスマートフォンについては使用しないし個人データが入っていると考え、誤って捨ててしまうという事も考えられます。

この場合はオンライン上のデータにアクセスすることが更に困難になるでしょう。

 

 

 

3.発見が遅れた場合のリスクがある

一部のデジタル資産は相続税の課税対象になります

 

前述のように、発見されにくいという特徴があるものの、暗号資産(仮想通貨)などは相続税課税対象の財産となるため、発見できなかった場合にあとで延滞税が発生する税務上のリスクなどが考えられます。

 

暗号資産特有の問題として、取引に利用する暗号資産ウォレットのパスワードがわからない場合、そもそも仮想通貨を引き出せないが、その場合でも課税するのか?などといった細かい論点もありますが、国税庁はこのようなケースでも課税するという方針のようです。

(H30.3.23 (当時)国税庁長官の藤井健志氏 財政金融委員会答弁)

 

 

 

4.放置するにもリスクがある

放置にはリスクも

 

探し出すのが困難なら、いっそのこと放置してしまってはどうか?とお考えになる方もいると思いますが、様々なリスクが考えられますので、それは推奨できません。

 

1.FX取引に気づかず、多額の損失が発生してしまう

2.契約上の義務違反や、WEBサイトの管理人としての義務により発生するリスク

3.税務上のリスク

4.アカウントの乗っ取り、盗用により悪用される可能性

 

何より、財産的価値の高いデジタル遺産を放置するというのは財産を捨ててしまうのと同じであり、単純にもったいないですよね。

 

 

 

 

 

生前にできること

デジタル遺産については、必ず記録を残しておきましょう

 

 

デジタル遺産という概念が登場したのは最近のことですから、前述したとおり法律上の取り扱いは非常にあいまいで、かつ見つけにくいのにも関わらず財産的価値の高いものが次々と登場しており、今後もその数が増えていくことが予想されます。

 

 

そこで、事前にできる残された遺族のための相続対策としては、パスワードやIDのアカウント情報を一元化して誰が見てもわかるようにしておくことが最も効果的です。

方法は人それぞれだとは思いますが、次のように情報をまとめておくと後でわかりやすいと思います。

 

 

1.スマートフォン等のパスワードを紙でわかりやすいところに書いておく

スマホさえ開ければ何とかなるという状態にしておくと、手書きで記録するよりも間違いがなくて良いと思います。

また、スマホのどこに財産的価値のあるものについての記録があるかについても書いておくとよりわかりやすいでしょう。

 

 

 

2.スマートフォンのメモ書きやアプリなどに全ての情報を一元化しておく

あくまで例ですが、下記のようなリストがあると、わかりやすいのではないでしょうか。

ID パスワード・備考
〇〇銀行
〇〇銀行
〇〇証券
〇〇ウォレット(暗号資産)
なし


〇〇▲▼

金庫の中に記録あり 通帳は金庫に閉まってある
預金、暗号資産、株、国債がある。財産目録は金庫のエンディングノートに記載
〇〇カード
〇〇カード
〇〇〇カード

〇〇▲▼
金庫の中に記録あり
ワードプレス
エックスサーバー
ドメインドットコム
〇〇@yahoo.co.jp 〇▲〇〇
〇▲■〇
〇〇■〇
Twitter
Facebook
Instagram
〇@gmail.com 〇▲〇〇
〇▲■〇
〇〇■〇
Amazonプライム
Amazonキンドル
ネットフリックス
wowwow
〇〇@yahoo.co.jp
〇〇▲▼
〇〇▲▼
etc… 使用しているサービスなど

 

クラウドやアプリ上に記録するのがご不安な方であれば、エンディングノートを買ってきて記載しておくという方法も効果的だと思います。

また、特に注意が必要な銀行の暗証番号などについては金庫や書斎に保管しておくというのも一つの方法ですね。

 

記録が残されていて発見が容易でさえあれば、後の手続きは簡単ですね。

一か所ずつ解約していき、規約に従って相続手続きを行うなどすれば良いだけです。

 

利用していない有料サービスについては事前に解約しておくというのも、相続開始後にも引き落としが続くという状況を避けることができるので良いですね。

個人的には、見られたくないデータやアカウントなどがある場合も、可能な限り事前に削除しておくことが好ましいのではないかと思います。

 

 

 

 

相続手続きの際にデジタル遺産を探す方法

名寄せのようなものはないので、地道に探すしかありません

 

 

具体的には次のような方法が考えられます

・通帳の取引履歴から送金先を探す 

・郵便物などから関係ありそうなオンラインサービスを予想する

・登録メールを探す

・スマホのアプリにウォレット(暗号資産取引用のツール)がないかを探す

 

 

具体的な相続手続き

暗号資産などであれば、一般的には交換業者が関与しますので、それぞれ契約内容で定められた相続手続きの方法に従う事になります。

デジタル遺産の性質によっては、本人が亡くなると同時に自動解約という取り扱いの場合もありますので、個別に問合せが必要となるでしょう。

 

 

故障しているPCやスマートフォン

故障しているPCやスマートフォンからも、データを復元してくれる事業者がいるようですので、故障しているからといってすぐに電子機器を処分してしまわないようにしましょう。

もしかすると、大事なデータが入っているからこそ、壊れているのに自宅保管されているのかもしれません。

 

 

 

 

 

 

まとめ

 

いかがでしたでしょうか。

記事をまとめると次のとおりになります。

✅ デジタル遺産の法律上の取り扱いはまだ発展途上であいまい

✅ 現状、名寄せにあたる制度はないので探すのが大変なのに、価値が高いものや放置すると危険なものもある

✅ ID・パスワードなどの記録が残されていると遺族の負担が少ない 

✅ 生前にできる限り不要な契約やデータは解約、削除しておいたほうがよい

 

このような現状を踏まえ、終活などでエンディングノートの作成などをお考えの際には、デジタル遺産の情報についても忘れずに記録されることをお勧めします。

以上、生前対策でお悩みの方の参考になれば幸いです。

 

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参考書籍:

デジタル遺産の法律実務Q&A

Q&Aでわかる!デジタル遺産の相続

 

 

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