この記事では、不動産売買の仲介を不動産会社に依頼しない場合に、買主が最低限、確認すべき事項をまとめたものです。
仲介業者なしで売買は可能か?
不動産会社に仲介を依頼しなくても、取引自体は可能です。
すでに取引相手が決まっていて、融資も受けないといった場合、仲介手数料である売買価格の3%+6万円がもったいないため、不動産会社に依頼をしたくないといったケースもあるかと思います。
しかし、取引に不動産会社を挟まない場合、重要事項の説明を受けることもないでしょうから、物件調査などは自分達で行うことになり、買主にとってはかなり不利になります。
そこで、最低限、買主が調査すべき事項をまとめてみました。
不動産について調査すべき事項
不動産屋に依頼をしない場合で、不動産の購入を検討されている場合は、トラブルに巻き込まれないために、最低限、次の項目は全て調査しましょう。
インターネットで概要を把握したら、行政窓口で担当者に詳細を確認するのが無難です。※物件の調査&重要事項説明書の作成のみを行っている事業者もあります。
1.不動産の適正な価格
実際に不動産周辺の類似の不動産がいくらで売買されているのかについては、事前に調査する必要があるでしょう。
不動産公示価格を「土地総合情報システム」で調べたり、実勢価格を「取引価格情報検索」で調べたりするなどし、適正な価格帯を把握しておきましょう。
2.市街化調整区域
土地の購入を検討している場合は、「用途地域マップ」などで、市街化調整区域かどうかを確認しましょう。
・市街化区域(街づくりに積極的なエリア)
・市街化調整区域(街づくりに消極的なエリア)
原則として、新たに建築物を建設できません。
加えて、水道、電気、ガスなどのライフラインが整備されていないときは、自分たちで引き込みを行うなどの整備をする必要があります。
・非線引き区域(開発への制限などが緩いエリア)
市街化調整区域の場合でも、既に宅地として認められた土地上の、市街化調整区域に指定される前に建築された建物の建替えのケースなど、一定の場合には、
都道府県知事の許可を得れば、建築物を建てられる場合もあります。細かい部分は行政に確認が必要です。
3.用途制限・用途地域
「用途地域マップ」などで、用途地域を確認しましょう。
建築基準法では、地域ごとに、建築できる建物や、使途が細かく制限されていますが、これを用途地域といいます。
例えば、第一種・第二種低層住宅専用地域の場合、店舗や事務所・倉庫などは建築できず、さらに、絶対高さ制限、日影規制、斜線規制といった、建物の高さに関する規定もあります。
さらに、用途地域ごとに建ぺい率・容積率の上限が定められているため、イメージしている広さ、大きさの建物が建てられるかの確認も重要です。
用途地域とは別ですが、自治体は地域ごとに土地の「最低敷地面積」も定めています。最低敷地面積よりも小さい土地上に建物を建築することはできませんので、伴わせて確認が必要です。
なお、用途地域は5年ごとに見直しがされています。
4.建築協定
地域に「建築協定(地域住民で決定した建築制限)」がないかどうかについて、都市計画課等で確認しましょう。
用途地域よりも厳しい制限が設けられているケースがあります。
5.防火地域、準防火地域
用途地域とは別に、防火地域であるかどうかの確認も必要です。
防火地域や準防火地域の場合は、建築する建物が耐火建物(RC造、レンガ造等)や準耐火建物(最長45分熱に耐える性能)であることを求められます。
都道府県ごとに確認できるページは違いますが、防火地域かどうかについて調べるページをまとめてくれているサイトもあります。
6.都市計画施設の予定地
都市計画は①計画決定②事業決定という順序で進みますが、
①計画決定以後は、新たに建物を建てることができません。また、①計画決定前だとしても、建てられる建築物に一定の制限があります。
まずは都市計画があるかどうかを確認し、都市計画がある場合は、土地の所有者にとって、どのような不利益があるかなどを細かく担当者に確認しましょう。
7.周知の埋蔵文化財包蔵地の指定
周知の埋蔵文化財を包蔵する土地として周知されている土地では、石器や土器等が出土することがあります。
そして、例えば建物を建設中に、購入した土地から埋蔵文化財が発見された場合は、建築工事の計画を変更するか、変更が難しい場合は、公示の前に本格的な発掘調査をすることが義務付けられています。
つまり、その調査に半年から1年かかるようであれば、その分工事が遅れることになります。さらに、発掘された埋蔵品は、所有者がわからなければ都道府県に没収されますから、貰うこともできません。
ハズレを引くリスクがあるということですね。費用や出土した場合の対応については、事前に行政に相談しておくのが無難です。
8.地盤
不動産会社でも、地盤強度の調査まで行っている例は少ないかもしれませんが、裁判例では、仲介業者に説明義務違反による賠償金を認めていますから、重要な調査事項の一つという位置づけになります。
ハザードマップや液状化マップで怪しい土地の場合は、売主にボーリング調査・SWS試験を提案するのも一つの方法でしょう。
横浜市:液状化マップ
9.土壌汚染
ガソリンスタンドや工場の跡地を購入する場合は、環境課で指定区域に該当するかや、有害物質使用の有無について調査することができます。
下水道課で、水質汚染の記録を確認することもできます。
10.宅地造成等規制法の区域
宅地造成等規制法の区域に該当する場合は、購入予定の不動産の「検査済証」の有無を確認し、宅地造成工事や擁壁の設置などが法令に適合しているかどうかを確認する必要があります。
最悪、役所の許可と、造成のやり直しが必要になり、多額の費用が発生する可能性があります。
横浜市:宅地造成等規制法の区域
11.測量
不動産取引は公簿売買(登記簿上の面積で売買)が主流ですが、法務局に地積測量図が存在しないか、存在してもかなり古いものである場合は、土地家屋調査士に依頼のうえ、現況測量又は確定測量を行いましょう。
実際の土地面積と登記簿上の面積は、大きく異なる可能性があるためです。