旧法借地権と新法借地権についてまとめ

司法書士 廣澤真太郎
こんにちは。司法書士の廣澤です。

このこの記事では、借地借家法のうち、とくに旧法と新法の借地権の違いを分かりやすく整理し、その背景や実務上の留意点についても解説します。

借地権とは

建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権の事です。

賃借権ではありますが、譲渡・賃貸することができ、所有権には劣るものの、財産的な価値があります。

(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 借地権 建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいう。
二 借地権者 借地権を有する者をいう。
三 借地権設定者 借地権者に対して借地権を設定している者をいう。
四 転借地権 建物の所有を目的とする土地の賃借権で借地権者が設定しているものをいう。
五 転借地権者 転借地権を有する者をいう。

 

 

旧法の借地権とは?

「旧法の借地権」とは、1992年(平成4年)7月31日までに締結された借地契約に適用される借地法(旧借地借家法)に基づく借地権を指します。

この制度のもとでは、借地人(地主から土地を借りて建物を所有する人)の権利が非常に強く保護されており、契約期間満了後も自動的に更新されやすい仕組みとなっていました。

 

そのため、地主が一度土地を貸すと、正当事由がなければ契約を終了させることが困難で、土地を自由に活用できなくなるケースが多く発生していました。

現在でも、旧法に基づいて契約された借地権が更新を繰り返して継続している場合には、引き続き旧法が適用されており、実務上も旧法の論点が登場するケースは少なくありません。

 

旧法の借地権制度には以下のような課題がありました

・借地権が実質的に半永久的に継続される

・地主が土地を自由に売却・活用しにくい

・土地の流通が停滞し、都市整備や不動産市場に悪影響

 

 

こうした背景から、不動産の流動性を高め、土地の有効活用を図ることを目的として、1992年に「借地借家法(新法)」が制定され、地主が貸しやすい仕組み(例:定期借地権)が整備されました。

 

つまり、旧法下では借地人の権利が現在よりもはるかに強く保護されていたということになります。

 

 

旧法・新法との違い

旧借地法 新借地借家法
契約の種類 普通借地権のみ 普通借地権と定期借地権
契約の更新 自動更新・更新拒絶には正当事由が必要 普通借地権は同様・定期借地権は更新不可
契約期間 堅固建物:30年以上(定めなしは60年)
非堅固建物:20年以上(定めなしは30年)
普通借地権:30年以上
一般定期借地権:50年以上
事業用定期借地権:30年以上50年未満
更新後の期間 堅固建物:30年
非堅固建物:20年
初回20年・以降10年

 

定期借地権とは

旧法と新法の大きな違いは、定期借地権などが導入されたことです。

・一般定期借地権

契約の更新がなく、建物買取請求をしないことを定めることができる契約。公正証書で行う。

・事業用定期借地権

契約の更新がなく、建物買取請求をしないことを定めることができる契約。公正証書で行う。

一般定期借地権との違いは、存続期間が短いことと、居住用に契約はできないこと。

・建物譲渡特約付借地権

30年以上の期間を定め、期間満了時に建物買取することを定めた契約。

 

 

(定期借地権)
第二十二条 存続期間を五十年以上として借地権を設定する場合においては、第九条及び第十六条の規定にかかわらず、契約の更新(更新の請求及び土地の使用の継続によるものを含む。次条第一項において同じ。)及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第十三条の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。この場合においては、その特約は、公正証書による等書面によってしなければならない。
2 前項前段の特約がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第三十八条第二項及び第三十九条第三項において同じ。)によってされたときは、その特約は、書面によってされたものとみなして、前項後段の規定を適用する。
(事業用定期借地権等)
第二十三条 専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く。次項において同じ。)の所有を目的とし、かつ、存続期間を三十年以上五十年未満として借地権を設定する場合においては、第九条及び第十六条の規定にかかわらず、契約の更新及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第十三条の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。
2 専ら事業の用に供する建物の所有を目的とし、かつ、存続期間を十年以上三十年未満として借地権を設定する場合には、第三条から第八条まで、第十三条及び第十八条の規定は、適用しない。
3 前二項に規定する借地権の設定を目的とする契約は、公正証書によってしなければならない。
(建物譲渡特約付借地権)
第二十四条 借地権を設定する場合(前条第二項に規定する借地権を設定する場合を除く。)においては、第九条の規定にかかわらず、借地権を消滅させるため、その設定後三十年以上を経過した日に借地権の目的である土地の上の建物を借地権設定者に相当の対価で譲渡する旨を定めることができる。
2 前項の特約により借地権が消滅した場合において、その借地権者又は建物の賃借人でその消滅後建物の使用を継続しているものが請求をしたときは、請求の時にその建物につきその借地権者又は建物の賃借人と借地権設定者との間で期間の定めのない賃貸借(借地権者が請求をした場合において、借地権の残存期間があるときは、その残存期間を存続期間とする賃貸借)がされたものとみなす。この場合において、建物の借賃は、当事者の請求により、裁判所が定める。
3 第一項の特約がある場合において、借地権者又は建物の賃借人と借地権設定者との間でその建物につき第三十八条第一項の規定による賃貸借契約をしたときは、前項の規定にかかわらず、その定めに従う。
(一時使用目的の借地権)
第二十五条 第三条から第八条まで、第十三条、第十七条、第十八条及び第二十二条から前条までの規定は、臨時設備の設置その他一時使用のために借地権を設定したことが明らかな場合には、適用しない。

 

借地権の法適用時期

1992年(平成4年)7月31日までに締結された、土地の賃貸借契約が更新されている場合、原則は旧法が適用されます。

ただし、契約を当事者の合意のもと、新法にすることは可能です。

 

転貸・譲渡の承諾について

借地権を、借地の条件変更、第三者に譲渡・転貸する場合、建物を再築する場合、土地上の建物をリフォームする場合には、それぞれ地主の承諾が必要です。

この規定は旧法から変更がありません。

 

承諾料の相場は、借地権価格の10%程度とされていますが、裁判所の資料によると、親子間であるなど相続人間での譲渡・転貸である場合は、3%前後となることが多いようです。

 

(借地条件の変更及び増改築の許可)
第十七条 建物の種類、構造、規模又は用途を制限する旨の借地条件がある場合において、法令による土地利用の規制の変更、付近の土地の利用状況の変化その他の事情の変更により現に借地権を設定するにおいてはその借地条件と異なる建物の所有を目的とすることが相当であるにもかかわらず、借地条件の変更につき当事者間に協議が調わないときは、裁判所は、当事者の申立てにより、その借地条件を変更することができる。
2 増改築を制限する旨の借地条件がある場合において、土地の通常の利用上相当とすべき増改築につき当事者間に協議が調わないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、その増改築についての借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。
3 裁判所は、前二項の裁判をする場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、他の借地条件を変更し、財産上の給付を命じ、その他相当の処分をすることができる。
4 裁判所は、前三項の裁判をするには、借地権の残存期間、土地の状況、借地に関する従前の経過その他一切の事情を考慮しなければならない。
5 転借地権が設定されている場合において、必要があるときは、裁判所は、転借地権者の申立てにより、転借地権とともに借地権につき第一項から第三項までの裁判をすることができる。
6 裁判所は、特に必要がないと認める場合を除き、第一項から第三項まで又は前項の裁判をする前に鑑定委員会の意見を聴かなければならない。
(借地契約の更新後の建物の再築の許可)
第十八条 契約の更新の後において、借地権者が残存期間を超えて存続すべき建物を新たに築造することにつきやむを得ない事情があるにもかかわらず、借地権設定者がその建物の築造を承諾しないときは、借地権設定者が地上権の消滅の請求又は土地の賃貸借の解約の申入れをすることができない旨を定めた場合を除き、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、延長すべき借地権の期間として第七条第一項の規定による期間と異なる期間を定め、他の借地条件を変更し、財産上の給付を命じ、その他相当の処分をすることができる。
2 裁判所は、前項の裁判をするには、建物の状況、建物の滅失があった場合には滅失に至った事情、借地に関する従前の経過、借地権設定者及び借地権者(転借地権者を含む。)が土地の使用を必要とする事情その他一切の事情を考慮しなければならない。
3 前条第五項及び第六項の規定は、第一項の裁判をする場合に準用する。
(土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可)
第十九条 借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得し、又は転借をしても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、賃借権の譲渡若しくは転貸を条件とする借地条件の変更を命じ、又はその許可を財産上の給付に係らしめることができる。
2 裁判所は、前項の裁判をするには、賃借権の残存期間、借地に関する従前の経過、賃借権の譲渡又は転貸を必要とする事情その他一切の事情を考慮しなければならない。
3 第一項の申立てがあった場合において、裁判所が定める期間内に借地権設定者が自ら建物の譲渡及び賃借権の譲渡又は転貸を受ける旨の申立てをしたときは、裁判所は、同項の規定にかかわらず、相当の対価及び転貸の条件を定めて、これを命ずることができる。この裁判においては、当事者双方に対し、その義務を同時に履行すべきことを命ずることができる。
4 前項の申立ては、第一項の申立てが取り下げられたとき、又は不適法として却下されたときは、その効力を失う。
5 第三項の裁判があった後は、第一項又は第三項の申立ては、当事者の合意がある場合でなければ取り下げることができない。
6 裁判所は、特に必要がないと認める場合を除き、第一項又は第三項の裁判をする前に鑑定委員会の意見を聴かなければならない。
7 前各項の規定は、転借地権が設定されている場合における転借地権者と借地権設定者との間について準用する。ただし、借地権設定者が第三項の申立てをするには、借地権者の承諾を得なければならない。
(建物競売等の場合における土地の賃借権の譲渡の許可)
第二十条 第三者が賃借権の目的である土地の上の建物を競売又は公売により取得した場合において、その第三者が賃借権を取得しても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡を承諾しないときは、裁判所は、その第三者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、借地条件を変更し、又は財産上の給付を命ずることができる。
2 前条第二項から第六項までの規定は、前項の申立てがあった場合に準用する。
3 第一項の申立ては、建物の代金を支払った後二月以内に限り、することができる。
4 民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)第十九条の規定は、同条に規定する期間内に第一項の申立てをした場合に準用する。
5 前各項の規定は、転借地権者から競売又は公売により建物を取得した第三者と借地権設定者との間について準用する。ただし、借地権設定者が第二項において準用する前条第三項の申立てをするには、借地権者の承諾を得なければならない。
(強行規定)
第二十一条 第十七条から第十九条までの規定に反する特約で借地権者又は転借地権者に不利なものは、無効とする。

 

 

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