共同根抵当権、累積式根抵当権、共有根抵当権の違い

司法書士 廣澤真太郎
こんにちは。司法書士の廣澤です。

こちらの記事は、根抵当権についてまとめたマニアックな記事です。

 

共同根抵当権・累積式根抵当権・共有根抵当権

不動産を担保にして借入れを行う場合、抵当権という形で担保を設定することが一般的です。

 

ところが、単に抵当権を設定するだけでは不十分なケースもあり、特定の目的のために「根抵当権」という特殊な担保制度が用いられます。

根抵当権にはいくつかの種類があり、その中でも「共同根抵当権」と「累積式根抵当権」は重要なものです。これらの違いを理解することで、どちらを選択すべきかを判断するための参考になります。

 

根抵当権とは?

まずは基本的な「根抵当権」について簡単に説明します。根抵当権は、一定の範囲内の不特定の債権に対して設定される担保権の一種です。

通常の抵当権は特定の金額を担保に設定しますが、根抵当権はその金額の範囲をまるごと指定し、借入金の総額が変動することを前提に設定されます。

 

 

例えば、ある企業が銀行から融資を受ける場合、融資額が増減する可能性があり、毎回新たに担保設定を行う手間を省くために根抵当権を設定します。

これにより、担保権者(銀行など)は借入金の総額に応じた担保を持つことができます。

 

 

根抵当権には「共同根抵当権」と「累積式根抵当権」という2つの代表的な形態がありますが、これらはその担保設定の方法において大きな違いがあります。

 

 

共同根抵当権

一つの根抵当権を、複数の不動産に設定したものです。

 

例えば、企業が銀行で融資を受けた際に、複数の不動産に対して、1000万円の極度額で根抵当権を設定すると、銀行はその範囲内で複数の不動産から優先弁済を受けることができます。

 

共同根抵当権の特徴

すべての不動産に対して、同一の極度額と同一の債権の範囲が設定されます。これにより、どの不動産からも、極度額の範囲内で債務全額の弁済を受けることができます。

 

優先弁済の関係

Q 銀行からAが3000万円を借り入れ、不動産A(時価4000万円)・B(時価2000万円)に共同根抵当権を設定した場合 Aが債務不履行に陥り、両方の根抵当権が実行された場合、どういう結果になるか。

 

A 配当の順番で弁済額が変わります。

①不動産ABの競売代金が同時に配当される場合… 時価の割合で弁済(A2000万円:B1000万円) 【民法第392条】

②不動産Aの競売代金が同時に配当される場合… A3000万円

③不動産Bの競売代金が同時に配当される場合… B2000万円:A1000万円

 

 

 

累積式根抵当権

それぞれの不動産について、その極度額まで優先弁済を受ける権利を別々に持つもので、これを累積根抵当といいます。

 

累積式根抵当権は、債務者が同じ不動産に対して複数回、異なる融資を受ける場合に設定されることが多い形態です。

この形式では、あくまで別個の根抵当権を設定することになるので、優先弁済額が累積します。

 

つまり、すでに設定されている根抵当権が、追加の根抵当権設定によって「積み重なっていく」という仕組みです。

 

 

累積式根抵当権の特徴

共同根抵当権とちがって、一つの根抵当権ではなく、それぞれ個別の根抵当権です。

 

例えば、A不動産に1000万円の根抵当権を設定し、B不動産に2000万円の根抵当権を設定した場合、3000万円まで担保額が積みあがったことになります。

共同根抵当権の場合は、ひとつの極度額の範囲で、AB不動産に根抵当権を設定することになるので、累積することはありません。

 

同じような事例で、債権者が不動産Aに極度額2000万円の根抵当権と、極度額1000万円の根抵当権を別々に設定した場合は、債権者は1500万円まで、優先弁済をその順位に応じて受けることができます。

 

 

共同根抵当権であれば、あらかじめ継続的にローンが発生するのであれば、3000万円の極度額にしてひとまとめにしておけばよかったことになるので、

民法は原則累積式根抵当権とされていますが、実務での利用はまれでしょう。

 

共有根抵当権

複数の人が1つの根抵当権を共有している状態を指します。この場合、全ての債権者が担保権を共有し、その担保価値に基づいて各自の債権を保全します。

つまり、債権者が2名以上いるようなケースです。

 

共有根抵当権の特徴

債権者ごとに債務者、債権の範囲が異なっても良いとされていますが、複雑になるので、今のところ、実際に登記を見たことはありません。

優先弁済の関係については、それぞれの債権額の割合に応じて(取り決めがある場合は、その定めに従う)弁済を受けることになります。

 

 

共同根抵当権に根抵当権を追加設定

累積式根抵当権が2つ以上存在するとき

累積式根抵当権の設定された不動産ABが存在する場合、ABの根抵当権をひっつけて、共同根抵当権にすることはできません。

 

累積式根抵当権が2つ以上存在するとき、どちらかに担保をあらたに追加

累積式根抵当権がAB存在する場合で、どちらか一方に不動産Cを追加して、共同根抵当権AC又はBCにすることはできますが、もう一方にひっつけてABCにすることはできません。

 

対象不動産の差し替え

不動産ABが共同根抵当権の対象となっている場合に、Aを不動産Cに差し替えすることもできます。

この場合、Cを追加設定してから、Aのみの担保解除による一部抹消登記を行うことになります。

 

 

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