「生前贈与」は遺言の代わりになりうる。安心と納得を育てる家族設計のかたち

司法書士 廣澤真太郎
こんにちは、司法書士の廣澤です。

相続を円満に進めるための選択肢として、近年ますます注目されているのが「生前贈与」です。

 

とくに不動産等の資産を持つご家庭、兄弟間で将来トラブルを避けたいと考えるご家庭、あるいは子や孫の人生を早い段階でサポートしたいと願う親御さんにとって、「渡したいときに、渡したい人へ」資産を託せる生前贈与は、単なる節税以上の意味を持ちます。

 

しかし一方で、「遺留分を侵害してしまうのでは?」「相続税対策になるって本当?」「贈与って税金が高いと聞いたけど…」という不安の声も多く聞かれます。この記事では、生前贈与の本質的な役割と注意点、そして実際の現場でどう活用されているかを詳しく解説します。

 

生前贈与とは──「渡したい人に、自分の意思で、今」

生前贈与とは、読んで字の通り「生きている間に、自分の資産を他者に無償で与える」ことを指します。

 

贈与契約は口頭でも成立しますが、実務では証拠となる贈与契約書や預金移動の記録が重要です。

 

例えば、老後に余裕のある親が「長男には自宅を、次男には教育費として現金を」と考えたとき、生前に具体的な形で資産を分配することで、後の相続争いを未然に防ぐことができます。

 

これは、実質的に遺言と同じような役割を果たします。

 

なぜ生前贈与が選ばれるのか?

ポイント

  • 自分の意志で明確に資産を分けられる
  • 「相続=争族」を防げる
  • 受け取る側も「もらった」と自覚しやすい
  • 相続税対策としての時間的な余裕ができる
  • 将来の介護・看取りをめぐるトラブルの予防になる

つまり、生前贈与は資産だけでなく、安心感や感謝の気持ちも“先渡し”できる制度なのです。

 

 

遺言の代わりになるが、「遺留分」には要注意

生前贈与を進めるうえで気をつけたいのが、「遺留分」との関係です。

 

 

遺留分とは、配偶者・子・父母といった一定の相続人に保障された「最低限もらえる権利」のこと。

 

 

たとえば子どもが2人いる場合、親が生前に一人に多く贈与していた場合、もう一人の子は「私の取り分が少なすぎる」として遺留分侵害額請求をすることが可能です。

 

 

相続開始前の一定期間内にされた贈与は、遺留分の対象になりえます。そのため、贈与契約を明文化しても、後日「取り返される」リスクが残ります。

 

 

特に不動産や高額贈与は要注意。共有登記や名義変更のタイミングにも注意が必要です。

 

 

生前贈与を行う場合も、他の相続人への遺留分への配慮が必要なのです。

 

 

実際の実務でも、こうしたバランス設計は多く手がけており、「もめない贈与」「納得される生前対策」の鍵を握っています。

 

 

贈与で得られる「安心感」と「人生設計の前倒し」

多くの親世代が生前贈与を選ぶ理由の一つに、「子や孫の人生に早く使ってほしい」という思いがあります。

ポイント

  • 子や孫の住宅購入資金
  • 孫の進学・留学費用
  • 親族の開業・起業の支援
  • 将来の介護を引き受けてくれる家族への対価

 

いずれも、「親が亡くなってから渡す」よりも、「今渡して活かしてもらう」ことで、より実用的な支援が可能になります。

 

特に、住宅取得資金の贈与に関しては、非課税特例も利用できるケースがあり、税務面から見ても理にかなっています。

 

税務上の注意点と対策

生前贈与の実行には、「贈与税」という課税リスクが常につきまといます。

 

しかし、制度を正しく理解すれば、負担を最小限に抑えることも可能です。

 

基本のポイント

  • 暦年贈与:毎年110万円以下なら贈与税がかからない(贈与があったことを証拠で残すことが重要)
  • 相続時精算課税制度:毎年110万円以下なら贈与税がかからない&2,500万円までの贈与が非課税(ただし将来、相続税の相続財産に加算される)

よくある“失敗例”

  • 口座を親が管理し、名義だけ子供に→名義預金とされ課税対象になる
  • 毎年同額・同じ時期に贈与→「定期贈与」と見なされ一括で課税される
  • 贈与契約書がない、印鑑が共通→贈与の実体がないと判断される

実際の事例から

「生前」贈与について、当事務所で関与することがあるのは、とくに不動産の生前贈与の場面です。

 

ケース1:自宅を長男に、生前に名義変更

父親が「長男に自宅を残したい」との意向を持ち、相談。

 

遺言書の作成も提案しましたが、「生前に渡してしまいたい」との強い希望。

 

税理士をまずはご紹介し、贈与税の特例・控除のうち、何を利用するのか?を確定後、結果的に、贈与契約書・登記変更・固定資産税通知の名義変更まで一括で実行。

→ 遺言書ではなく生前贈与で完結。子が他にいないため、遺留分は考慮せず。

ケース2:セカンドハウスを孫に、生前に名義変更

祖母が、一部の子供と疎遠であることから、孫への贈与を強く希望。

 

登録免許税という税金は、孫への遺贈の場合、贈与の場合とで変わらないこと、及び、明らかに祖母の遺産が相続税の基礎控除額の範囲内であることから、相続時精算課税制度を利用したうえで、結果的に、贈与契約書・登記変更・固定資産税通知の名義変更まで一括で実行。

 

→「ただあげる」ではなく、目的を明確にした贈与が孫世代にも好評。
→ 祖父母の「家族への思い」を形式に残し、将来の思い出と感謝にもつながる結果に。

贈与を進める場合は、税理士と司法書士の連携が重要

当事務所にご依頼板田田場合は、単なる制度説明や書類作成にとどまらず、トータルで安全な取引を担保いたします。

 

書類作成や税務の検討を見ようみまねで行ってしまい、後々損害が生じたのでは、取り越し苦労になってしまいますが、当事務所にご相談いただければ、そのような心配はご無用です。

 

まとめ:生前贈与は「今、渡す」という選択肢

生前贈与は、相続税対策としてだけでなく、家族間の納得や生活の支援を目的にする「前向きな選択肢」です。

 

法律や税務上の注意点もありますが、正しい知識と設計を通じて、家族全員が「安心」と「納得」を得ることが可能です。

 

遺留分侵害のリスクや贈与税の管理方法を適切に理解し、遺言と並行して賢い方法で活用すれば、将来の相続がもっとスムーズに、もっと円満に進むことでしょう。

 

生前贈与に関して不安があれば、ぜひ専門家にご相談ください。

 

 

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-不動産登記・税金, 離婚・贈与