筆界特定制度について

司法書士 廣澤真太郎
こんにちは。司法書士の廣澤です。

専門外ですが、筆界未定地を見かけることが増えたので、筆界特定制度について調べて記事にしてみました。

 

筆界特定制度について

筆界特定制度とは、隣地所有者から承諾が得られない場合などに、土地の所有者として登記されている人などの申請に基づいて、

筆界特定登記官が、外部専門家である筆界調査委員の意見を踏まえて、現地における土地の筆界の位置を特定する制度です。

 

土地の境界(筆界と所有権界)

前提となる知識として、土地の境界には、二つの種類があります。

 

筆界

公法上のもので、分筆登記・合筆登記によらなければ、変更ができないものです。

筆界が変更されると、法務局に備えられている地図にも反映され、公簿上で確認ができるようになります。

争いがある場合は、「境界確定訴訟」を提起することになります。

 

所有権界

隣地の所有者間で合意して、変更することのできる境界の事で、実際に占有している部分についての境界です。

基本的には筆界と一致していますが、所有権界の合意をした後で、分筆・合筆登記を行わなかったケースや時効取得された場合などに、不一致になることがあります。

争いがある場合は、「所有権界確認訴訟」を提起することになります。

 

 

筆界未定地

公図をご覧いただくと、以下のような土地を見かけることがあります。

1+2+3の地番が一つになって表示されており、その境界がはっきりしていません。

 

これらの土地は、国土調査法に基づく地籍調査や、地図訂正手続において、利害関係者全員の承諾がなければ筆界を特定できない状況にあったため、

所在が不明であるなど、何らかの理由で承諾が得られず、筆界が定まらないまま処理された土地です。

 

「筆界未定地なので、このままでは売れません」と言われた場合に、自宅が筆界未定地だと知ったという方もいらっしゃるでしょう。

筆界未定地を解消するには、通常は土地家屋調査士の協力のもと、隣地所有者の承諾を得たうえで、測量、境界標の設置、地図訂正の申出、土地地籍更正登記を行う必要があります。

 

しかし、承諾が得られない場合には、境界を確定させるために裁判を行う時間と費用が必要であり、経済的ではないことを理由として、平成18年から新たに筆界特定制度が始まりました。

 

筆界特定制度

土地の所有者が、法務局に申請することで、筆界調査委員という専門家が、土地の実地調査・測量等の調査を行ったうえで、筆界特定登記官に対して意見書を提出し、筆界を特定するという制度です。

 

この制度は新たに筆界を創設する効力はありませんし、境界標を設置できるというものではないですが、高い証拠能力があるとされています。

筆界未定地の場合には、筆界について争いがあるようなケースで、隣地の所有者と裁判をすることなく、迅速に公的な筆界の判断を得られるという点で、メリットがあります。

 

メリット

・筆界が明らかでない場合に、隣地の所有者と裁判をすることなく、迅速に公的な筆界の判断を得られる。

・隣地所有者の立会は任意のため、承諾なく、専門家に筆界を特定してもらうことができる

デメリット

・登記簿上に筆界特定を利用した旨が表示されるため、買い手がつかなくなる可能性がある

・測量費(50~100万円)が申請人負担となる

・筆界特定に法的拘束力はなく、納得いかない場合は、裁判で解決することができるため、訴訟リスクが残る

・筆界特定によって、登記する義務や、境界標を設置する義務がない

 

上記のとおり、筆界特定制度には法的拘束力がないものの、筆界特定後、土地の所有者は筆界特定書を添付することで、地図訂正や地籍更正登記を利害関係人の承諾なく行うことができるという取り扱いとなっています。

 

ただし、売買のためにこの制度を利用したいとお考えの場合は、公簿上トラブルがあると疑われますので、買い手がつかなくなる可能性があり、注意が必要です。

 

 

申請人

申請ができるのは、所有権登記名義人等(表題登記のみの場合の表題部所有者含む)、その一般承継人であり、

仮登記名義人、用益権者、担保権者、賃借人は申請人とはなれない。また、債権者代位することもできない。(不動産登記法131①)

 

申請手数料

対象土地の合計額の2分の1に5%を乗じた額 (例)4,000万円の場合は8,000円

単価
100万円までの部分 10万円までごと 800円
100万円を超え500万円までの部分 20万円までごと 800円
500万円を超え1000万円までの部分 50万円までごと 1600円
1000万円を超え10億円までの部分 100万円までごと 2400円
10億円を超え50億円までの部分 500万円までごと 8000円
50億円を超える部分 1000万円までごと 8000円

 

予納金

30万円~100万円

測量が必要な場合、測量の委託費用は申請人の負担となるため、注意が必要です。

 

申請から特定までにかかる期間

約1年

 

申請後の流れ

法務局:筆界特定手続の流れ

 

まとめ

筆界未定地については、確定測量を土地家屋調査士に依頼し、土地家屋調査士から筆界特定制度について提案があれば、制度利用するというのが無難な流れでしょう。

また、売却を検討されている場合に、測量が必要な場合には、宅建業者から測量の提案があるかと思われます。なお、確定測量や筆界特定制度については、いずれにせよ50万円~100万円の費用がかかります。

 

以上、参考になれば幸いです。

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