聞かれることが多い質問なので、今回は相続開始時の準確定申告について記事にしてみました。
ここでは簡単な制度説明にとどめますので、具体的なアドバイスなどはお近くの税務署(国税庁電話相談センター)に直接電話で聞いてみてください。
[toc]
準確定申告とは?
確定申告をする義務がある方が亡くなった場合(又は出国の場合)に提出する確定申告のことをいいます。
確定申告は所法120~120条・準確定申告は所法124~127条
この記事は相続でお悩みの方向けの記事ですから、確定申告の義務者がお亡くなりになった場合を前提に記載していきます。
確定申告の義務者とは?
国税局HPに詳細な記述がありますのでこちらをご覧ください。
年収2000万円以上の会社員や、副業で20万円をこえて所得がある人、事業者の方などですね。
誰が申告するのか?
相続人全員から申告する必要があります。
そして、実際に税負担をするのは、相続財産の取得者(申告時に記載した取得割合に応じて)です。
申告時期はいつ?
準確定申告
相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月が申告期限です。所法124条
期限の最終日が土日祝日の場合はその翌日が期限となります。
「原則、相続人全員からの申告(連署)が必要なのであれば、誰を基準として知った日をカウントするのですか?」と以前、国税局電話相談センターにて問い合わせしたことがありますが、
そちらの税理士の先生から「相続開始日の翌日から4か月とお考えください」との回答がありましたので、これ以上は調査していません。
確定損失申告
準確定申告の期限と同じです。※令和4年3月22日訂正
還付等申告
申告する年分の所得税の還付は、翌年1月1日から5年経過するまでが期限です。
つまり、令和3年分の還付を行いたいときは、令和4年1月1日~令和8年12月31日が申告期限となるということになりますね。
通法(還付金等の消滅時効)
第七十四条 還付金等に係る国に対する請求権は、その請求をすることができる日から五年間行使しないことによって、時効により消滅する。
2 第七十二条第二項及び第三項(国税の徴収権の消滅時効の絶対的効力等)の規定は、前項の場合について準用する。
期限を過ぎてしまった場合のペナルティ
申告義務のあるものについては、延滞税と、無申告加算税が課税されます。
納付時期はいつ?
申告書提出期限までとされています。所法129条
申告する税務署は?
確定申告と同じです。
所属する納税地を管轄する税務署長に申告するということですね。
申告義務のあるもの
1.確定所得申告書を提出すべき居住者(所法2条)がその年の翌年1月1日からその申告書の提出期限までの間に申告書を提出しないで死亡した場合。所法124条
2.居住者が年の中途で死亡した場合において、その者の年分の所得税について確定所得申告書を提出しなければならない場合に該当するとき。所法125条
上記に該当する場合は、管轄の税務署に相続人全員から準確定申告書を提出します。
例えば、令和3年1月1日~12月31日に事業をされていた方が、令和4年2月14日にお亡くなりになったとしましょう。この場合で、お亡くなりになった方が令和3年度の確定申告を行っていなかった場合は
1.令和3年度分の申告(令和3年1月1日~12月31日)
2.令和4年度分の申告(令和4年1月1日~2月14日)
こちらの2つの申告がそれぞれ必要という事であり、相続人全員はこれらを期限内に申告する義務があるという事になります。
申告が任意のもの
1.確定損失がある場合は、確定損失申告書を提出
国税庁:損益通算及び繰越損失額の控除を行う場合の申告書の記載要領
2.還付請求ができる場合は、還付申告書を提出
こちらは提出が義務ではないので、説明は割愛します。多額の還付があることが予想されるという方は税理士に申告を依頼されることを推奨します。
申告の方法は?
管轄税務署に申告書など一式を提出して行います
申告書記載事項の違い?
通常の確定申告のように本人が申告するわけではないので、固有の記載事項が求められるようです。所規49(付表というものに記載します)
① 相続人全員の 住所・氏名・マイナンバー・続柄・法定相続分(遺言や遺産分割協議で取得割合が決まっている場合はその割合)・取得した財産の価額
② 限定承認をした場合はその旨
③ 相続人が1人でない場合、確定所得申告に掲げる所得税の額を、①の各相続人の相続分によりあん分して計算した額に相当する所得税の額
代表者が還付金を一括受領する場合?
相続人の代表者が還付金を一括受領することへの委任状が必要になりますので、あらかじめ準備が必要です。
相続人に付表を記載してもらうことが困難な場合?
例えば、住所しかわからず連絡がとれない相続人がいるという場合、相続人全員からの申告は行えませんよね。
このような場合は、いったんその他の相続人全員が申告を別々に行い、その申告内容をその相続人に通知する義務があるという取り扱いとなっています。
とりあえず申告は必要であるという事です。
必要物、具体的な申告方法、申告書の書き方は?
具体的なご案内は税理士の専門分野となりますので、お近くの税理士又は税務署にご相談ください。
相続人が不存在の場合は?
国税庁:民法上の相続人が不存在の場合の準確定申告の手続をご覧ください。
被相続人が事業をされていた場合
相続人の方が税務署へ提出すべきものをまとめると、次の通りです。
① 準確定申告など (必要な場合)
② 個人事業者の開業・廃業等届出書
③ 消費税の個人事業者の死亡届(リンク)
次に、事業を承継する場合に行うべきことです。
① 開業、廃業届
② 給与支払事務所などの開設・移転・廃止届(必要な場合)
③ 青色申告承認申請書(必要な場合)
④ 青色事業専従者給与に関する届出書(必要な場合)
⑤ 消費税関連の届出(必要な場合)
相続・遺言のご相談
-
相続に関連する業務内容一覧
相続(不動産・預金・株式等) ↑↑ 戸籍謄本等の書類収集、遺産分割協議書などの書類作成、登記申請・預金解約などの相続手続き、財産調査や借金調査などをまとめてご相談になりたい方はこちら & ...
続きを見る
国税庁:納税者が死亡したときの確定申告
参考:準確定申告とその実務