この記事では、普通養子縁組について解説していきます。
特別養子縁組とはまったく別物ですので、知識の混同にご注意ください。
名前は似ていますが、普通養子縁組と特別養子縁組は比較して考えるのではなく、別物だと考えて別々に理解を深めることをお勧めします。
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普通養子縁組とは?
役所への届出により、法律上の親子関係や親族関係を新たに作り出す制度です。
根拠法
民法739条 婚姻は、戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。
2項 前項の届出は、当事者双方及び成年の証人二人以上が署名した書面で、又はこれらの者から口頭で、しなければならない。
民法799条 第七百三十八条及び第七百三十九条の規定は、縁組について準用する。
戸籍法66条 縁組をしようとする者は、その旨を届け出なければならない。
届出については799条で準用していますから、結婚と似ている制度といってよいでしょう。
婚姻の場合は、要件を満たした成人2名が届出をすることにより、配偶者となって相手の親族との関係を新たに作り出しますよね。
同じように、養子縁組の場合は養親と養子2名が届出をすることにより、親子関係となって、養子と養親の親族との関係を新たに作り出します。
その他の似ている点としては、
婚姻の場合は皆さんご存知のように同居、協力、扶助義務が発生しますし、離婚届を提出すれば離婚も可能です。
同様に、養子縁組の場合は直系の血族となるわけで、扶養義務が発生しますし、離縁届を提出すれば離縁も可能です。
もちろん、養子縁組をすれば戸籍には養親と養子関係(親権者の旨、続柄「養子」「養女」)が記載されますし、離縁すればその旨も記載されます。
このあたりは下記の通り、戸籍法に根拠があります。
戸籍法13条 戸籍には、本籍の外、戸籍内の各人について、左の事項を記載しなければならない。 五 養子であるときは、養親の氏名及び養親との続柄
戸籍法18条 3項 養子は、養親の戸籍に入る。
戸籍法20条の3 第六十八条の二の規定によって縁組の届出があつたとき(離縁の届出のこと)は、まず養子について新戸籍を編製する。ただし、養子が養親の戸籍に在るときは、この限りでない。
普通養子縁組の主な特徴は?
・養子は実親と養親との間で、相続権を有することになります。
・養子の苗字は原則、養親の苗字になります。
・養子が未成年者の場合、親権が養親に移ります。つまり、実親は親権を失うため、代わりに契約書にサインすること等はできなくなります。
根拠は下記のとおりです。
民法809条 養子は、縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得する。
民法810条 養子は、養親の氏を称する。ただし、婚姻によって氏を改めた者については、婚姻の際に定めた氏を称すべき間は、この限りでない。
民法818条 2項 子が養子であるときは、養親の親権に服する。
なぜ普通養子縁組を利用するのか?
考えられるケースは色々な場合が考えられます。
・「家(不動産その他)」を継承させるため。
・税金対策として利用するため。※必ず税金対策に精通した税理士にご相談ください。
・15歳以上の未成年者に親権者がいない場合に、法定代理人を定めるため。
…etc
実際に養子縁組を行う場合は、専門家や役所の職員からアドバイスをされたという場合が多いのではないでしょうか。
どれくらいの利用者がいるのか?
令和2年度で約6万5000件の利用者がいるようです。
養子縁組の総数ですから、特別養子縁組を含む縁組の合計数ということでしょう。
特別養子縁組の利用者は平成で31年度で711件ですから、縁組のほとんどが普通養子縁組だといえます。
※このサイトの統計の読み方、注意点、信用性までは調べていませんので、あくまで参考程度にしてくださいね。
どうやって縁組をするのか?
要件を満たす当事者が、役所に届出をして行います。
普通養子縁組には要件がいくつかありますので、続けて見ていきましょう。
普通養子縁組をするうえでの要件
1.養親が成人であること
2.養親よりも養子が年下であること
3.養子が養親の直系尊属(父母、祖父母)でないこと
4.未成年後見人や成年後見人が養親となり被後見人を養子とする場合には、家庭裁判所の許可を得ること
5.養子が15歳未満であるときは、家庭裁判所の許可を得ること ※4と5の許可は別物です。
(例外:自己又は配偶者の直系卑属(子、孫、ひ孫)を養子とする場合は不要)
6.配偶者のある者が未成年者を養子とするには、配偶者とも養子縁組すること
(例外:自分の配偶者の嫡出子を養子とする場合又は配偶者がその意思を表示することができない場合は不要)
7.養子が15歳未満であるときは、法定代理人(実親や未成年後見人)が本人に代わって縁組の承諾をする
また、法定代理人が本人に代わって縁組の承諾をするときは、子の父母のうち監護者がいるときはその実親の同意が必要
非常にややこしく見えますが、イメージさえつかめれば、とても分かりやすい制度です。
1~3の要件
親が年下だとか、未成年者同士の養子縁組というのは一般常識としてあり得ないので、1~3は当然のルールですね。
4、5の要件
未成年者や被後見人を守るために、裁判所の許可が必要とされています。
制度を悪用されないためですね。制度の悪用防止が趣旨なので、直系尊属の場合は許可までは不要という取り扱いになっているということです。
裁判所に申し立てを行うと、必要に応じて調査官が当事者の調査を行ったり、裁判官と面談をしたりして許可をするかどうかの判断がなされます。
養子縁組の届出を行う際に、許可に関する書類の提出を求められるはずですから、事前に許可を経てから必要書類を役所に持参して届出をします。
6.の要件
養子が未成年であるときは、養子に対する適切な養育のためには、夫婦が一緒に養親となって共同親権を行使することが好ましいと考えられているため、このような法律があります。
縁組届の提出
養子縁組の届出書は役所の戸籍課で貰えます。
要式は役所により異なる部分があると思いますが、戸籍法が根拠の届出ですから大きくは内容は異ならないでしょう。
養子又は養女、養親となる者、証人2名の本籍、住所、氏名等を記入し、署名押印をして届出書は完成です。
証人2名は成人であればこれといった条件はないので、誰かに協力してもらえばすぐに作成できそうですね。
養子縁組をするうえでの注意点は?
当事者の合意さえあれば養子縁組は可能ですが、次のようなことに注意が必要になります。
(1)養子が増えるということは、相続人が一人増えるということです。つまり、その他の親族の相続分はその分減少又は消滅します。
減少するだけであれば、後日、遺産分割協議で自由に分配すればよいだけですが、養子や養親と仲が悪い相続人がいる場合はトラブルの可能性が高まりますので、必ず養子を行うことについて事前にご家族で話し合いを行いましょう。
(2)普通養子縁組は合意があれば行えますし、離縁も自由にできますが、戸籍には当然その旨が記載されます。
(3)節税策として利用される養子縁組ですが、制度を利用した税金の潜脱行為防止のため、実子とは異なる制限が設けられていることがあります。
そのため、節税などお金のために養子縁組をお考えの場合には、制度に精通した税理士への相談がかかせません。リスクがある対策の一つということです。
まとめ
普通縁組について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
裁判所に養子縁組許可の申立を行う場合には、弊所では代行で書類作成や書類提出などのサポートも行っておりますので、お気軽にお尋ねください。
次回は、別記事において特別養子縁組について解説していきたいと思います。
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