普通株式と種類株式についての基本知識

司法書士 廣澤真太郎
こんにちは。司法書士の廣澤です。

この記事は、会社法における株式のうち、種類株式についての基礎知識をまとめたものです。

 

 

 

株式とは?

株式とは、株式会社における社員の地位を指しており、次のような権能があります。

・株主総会に参加し議決を行使する権利、株主総会決議の取り消しの訴えを提起する権利

・配当、残余財産の分配を受け取る権利

・定款、株主名簿、株主総会議事録、取締役会議事録、計算書類等、組織再編関係書類等の閲覧を請求する権利

・株主代表訴訟を提起する権利、取締役の違法行為の差し止め請求する権利

・一定の株主は、帳簿の閲覧、役員の選解任の請求権、議題や議案の提案権や事前通知請求権、株券総会の招集権、会社解散の請求権など

 

会社員のことを一般的には社員と呼びますが、会社法上、会社員は社員ではありません。

 

 

 

種類株式とは?

会社は、上記の株式の効力に加えて、オプションとして別の効力を持つ(又は制限する)株式を発行することができるとされています。

 

この別の種類の株式のことを、種類株式と呼び、定款で2以上の株式を発行できる旨を定めている会社のことを、種類株式発行会社と呼びます。

 

種類株式発行会社が発行する株式のうち、オプションのある株式とそうでない株式を分ける意味で、普通株式とA種株式という感じで、名前分けされていることが多いですが、この名前自体は自由に決めることができます。

 

会社法第百八条

株式会社は、次に掲げる事項について異なる定めをした内容の異なる二以上の種類の株式を発行することができる。ただし、指名委員会等設置会社及び公開会社は、第九号に掲げる事項についての定めがある種類の株式を発行することができない。

以下略

 

効力を組み合わせた種類株式を発行することはできますが、その内容は限定されており、次の中から選択することになります。

 

種類株式の種類

  • 剰余金の配当
  • 残余財産の分配
  • 議決権制限
  • 譲渡制限
  • 取得請求権
  • 取得条項
  • 全部取得条項
  • 拒否権
  • 役員選任権

 

 

剰余金の配当・残余財産の分配 

配当普通株式、配当劣後株などといい、剰余金の配当について、優先権をもつ株式を発行することができます。

 

配当のない株式を発行することも、残余財産の分配をしない株式を発行することもできますが、両方ない株式は発行不可です。

 

議決権制限

会社法322条の決議や譲渡制限規定を設ける決議、種類株式に全部取得条項を付する定款変更決議、組織再編に関する承認決議などの決議を除き、株主総会で原則として、議決権のない株式を発行することができます。

 

議決権のない株式は5%株式の評価を低く見積ることができるので、事業承継対策としてや、優先株としつつ議決権制限を設けるというように、資金調達をしつつ経営に支障をきたさないような活用がなされています。

 

譲渡制限

会社の99%は株式全体に譲渡制限を設けている会社ですが、一部の株式のみ公開し、一部の株式のみ譲渡制限規定を設けることもできます。

 

中小会社でお目にかかることはほとんどないので、割愛します。

 

 

取得請求権

会社に対して、保有する株式を買い取り請求する権利を付すことができます。

 

会社側は、分配可能額が存する限り、この買い取り請求を断ることができないので、株主からすると、非上場株式という相続税課税対象になるにもかかわらず、換金ができない絵に描いた餅を、簡単に現金化できるということになります。

 

相続でもめた場合などに、経営に参画しない相続人の株式には、議決権制限と取得請求権をつけて解決を図るなど、様々な場面で活用されています。

 

取得条項

取得請求権とは逆で、一定の事由が発生した場合に、会社が株主から強制的に株式を取得することができる権利です。

 

例えば、定めた日の到来や、株主の死亡により強制的に回収することができるようにしておくことで、株式が分散しないように調整することが可能になります。

 

対価は普通株式とする場合や、法人税法上の時価とすることが多いようです。

法人税基本通達9-1-14

 

全部取得条項

取得条項は一部の株式のみを取得するという定めが可能でしたし、一定の事由を定めることになりますが、全部取得条項付き種類株式は、株式総会の特別決議があればその株式を全て取得することができます。

 

100%減資の際に全員の同意でなく、特別決議でスクイーズアウトを行うために活用されていたようですが、現在は、株式等売渡請求が主流となっているようです。

(株式等売渡請求)
第百七十九条 株式会社の特別支配株主(株式会社の総株主の議決権の十分の九(これを上回る割合を当該株式会社の定款で定めた場合にあっては、その割合)以上を当該株式会社以外の者及び当該者が発行済株式の全部を有する株式会社その他これに準ずるものとして法務省令で定める法人(以下この条及び次条第一項において「特別支配株主完全子法人」という。)が有している場合における当該者をいう。以下同じ。)は、当該株式会社の株主(当該株式会社及び当該特別支配株主を除く。)の全員に対し、その有する当該株式会社の株式の全部を当該特別支配株主に売り渡すことを請求することができる。ただし、特別支配株主完全子法人に対しては、その請求をしないことができる。

以下略

 

拒否権

いわゆる、黄金株です。一定の決議に、拒否権を持つ株式を発行することができます。

 

生前に相続時精算課税制度等を利用して、後継者に株式の大半を譲渡した場合に、前経営者が運営にまだ関与したいというケースで利用されているようです。

 

拒否権付の株式は非常に強力なので、譲渡制限と取得条項付にしておき、かつ予備的内容にも配慮した遺言を作成しておくなど、思いもよらない株式の移転がないような万全の対策が必要となるでしょう。

 

 

役員選任権

公開会社や指名委員会等設置会社等では設けられない株式で、例えば、「取締役2名を選任できる」と定められていれば、2名までその種類株式の株主が役員を会社に送り込むことができます。

 

出資の条件として、この種類株式を発行しなさいという感じで交渉がなされているようですね。

 

 

 

登記申請のご相談

商業(会社・法人)登記のご依頼

全国対応!郵送・メール・電話のみでスピーディに手続き可能です。 ※会社設立などの一部業務を除く   ネットで登記申請書を作成するサービスなんかもあるけど…  あまり知られていませんが、司法書 ...

続きを見る

 

知識ページ一覧

知識ページをご覧になりたい方はこちらから

新・中間省略登記とは? ~不動産取引の新たなスキームをわかりやすく解説~

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 「中間省略登記」という名称は、不動産投資や転売に興味がある方なら、一度は耳にしたことがあるかもしれません。 私も最近、見聞きすることが増えましたので、この通称三ため契約について、知識を備忘録としてまとめました。 新・中間省略登記とは?~不動産取引の新たなスキームをわかりやすく解説~   1.旧・中間省略登記とは? かつて行われていた「中間省略登記」は、不動産取引において、売主から買主に物件を渡す際、本来間に入る中間者(転売業者など)を登記上 ...

ReadMore

疎遠な相続人がいる場合、相続手続きはどう進めるべきか?

  連絡が取れない相続人への対応方法と司法書士に相談するポイント 疎遠な相続人がいる場合の問題点 相続は、民法の決まりで、自動的に決定します。そのため、疎遠な相続人がいる場合、次のような問題が発生します。 遺産分割協議が進まない:疎遠な相続人が連絡を拒否したり、無視したりすることで、遺産分割協議が停滞してしまう。 相続放棄や遺産分割協議書に署名をしない:相続人が協議に参加しないと、手続きが進まなくなる可能性がある。 相続トラブルのリスク:相続人が不在のまま進めることで後々トラブルに発展することも ...

ReadMore

お金を貸したけど帰ってこない!?お金を貸すなら最低限ここまでやろう

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 こちらの記事は、お金の貸し借りについて、基本知識をまとめたものです。   お金を貸したけど帰ってこない!?お金を貸すなら最低限ここまでやろう 友人や家族から「少しお金を貸してほしい」と頼まれたとき、断りきれずに貸してしまった経験はありませんか?   「〇〇円くらいなら、まあいいか…」と気軽に貸したはいいものの、なかなか返してもらえず、相手に催促しにくいまま、うやむやになってしまうケースは少なくありません。   お金を貸す ...

ReadMore

共同根抵当権、累積式根抵当権、共有根抵当権の違い

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 こちらの記事は、根抵当権についてまとめたマニアックな記事です。   共同根抵当権・累積式根抵当権・共有根抵当権 不動産を担保にして借入れを行う場合、抵当権という形で担保を設定することが一般的です。   ところが、単に抵当権を設定するだけでは不十分なケースもあり、特定の目的のために「根抵当権」という特殊な担保制度が用いられます。 根抵当権にはいくつかの種類があり、その中でも「共同根抵当権」と「累積式根抵当権」は重要なものです。これら ...

ReadMore

抵当権抹消登記を自分で行うのは大変?司法書士に頼むべき理由

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 不動産の購入や売却を行う際、抵当権抹消登記は欠かせない手続きです。   これは、ローン完済後に金融機関が設定した抵当権を解除するための登記です。   しかし、法務局での登記手続きは少々複雑で、特に自分で行うとなると負担が大きいと感じる人も多いのが現実です。今回は、抵当権抹消登記の手続きを自分で行う際の難しさと、司法書士に依頼するメリットについて紹介します。   【抵当権抹消登記は、全国対応】当事務所にお任せください 抵当 ...

ReadMore

孤独死とは?もしもに備えて知っておくべき対応の流れと予防のための対策【司法書士監修】

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。  こちらの記事は、孤独死とその対策についてと、司法書士が支援できることについて記載したものです。   孤独死とは?もしもに備えて知っておくべき対応の流れと予防のための対策 近年、「孤独死」という言葉を耳にする機会が増えました。高齢化社会の進行により、一人暮らしの高齢者や社会的なつながりを持たない人の数が増える中、孤独死のリスクもまた高まっています。   本記事では、万が一の際に備えて、孤独死が発生した場合の対応の流れ、法的な手続き ...

ReadMore

会社解散に伴う税務申告について・まとめ

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です! こちらの記事は、会社の解散の際の税金の申告について調査した内容を記載したものです。 ※税のことは税理士に相談しましょう!当事務所にご依頼いただいたた場合はご紹介いたします。   解散手続きの基本的な流れはこちら  解散・清算結了と、税務申告 会社が解散を決定すると、その後に行うべき税務申告は大きく分けて次の申告が必要になります。 1 解散時の申告(最終申告) 2 清算時の申告(清算結了申告)   発生しうる税金 法人税・地方税 消 ...

ReadMore

横浜市で法人設立登記のお悩み解決法|司法書士が解説

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。[st-kaiwa4]   この記事では… ・「横浜市で会社を設立したい」と考えている方 ・手続きの流れ・費用・よくある疑問を知りたい方 ・司法書士に依頼するとどこまで安心なのか不安な方   このような方向けの、5分以内に読める記事です。   法人登記の全体像をわかりやすく丁寧にお伝えします。 なぜ司法書士に法人登記を依頼すべき? 横浜エリアに精通した司法書士のサポートには、以下のメリットがあります。   ・ミス ...

ReadMore

相続の基本を司法書士がやさしく解説|相続の流れ・登記・トラブル回避まで徹底網羅

  相続の基本を司法書士がやさしく解説|相続の流れ・登記・トラブル回避まで徹底網羅 司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 こちらの記事では、相続の基本について、解説していきます。   はじめに|相続は「誰にでも起こる身近な問題」 「相続」と聞くと、どこか他人事のように感じる方も多いのではないでしょうか。   けれども実際は、人が亡くなると必ず発生する法的な問題であり、決して特別な家庭だけの話ではありません。相続手続きは時間制限があり、知らずに放置するとトラブ ...

ReadMore

離婚時の財産分与についてよくある質問まとめ

司法書士 廣澤真太郎 こんにちは。司法書士の廣澤です。 こちらの記事は、離婚時の財産分与の手続きをする際の、よくある質問について解説したページです。   財産分与とは? 基本知識はこちらに記載   離婚時の財産分与についてよくある質問 ローンが残っている場合、どう対応すべきか? Q: 離婚時に住宅ローンが残っている場合、どう分ければ良いのでしょうか? A:通常、住宅ローンを支払っている名義人がローンの支払いを続けますが、合意でどちらが負担するかは決定できます。家をどちらが取得するのかは ...

ReadMore

 

 HOME

会社法

 

 

この記事をかいた人

-会社登記・法務, 記事一覧