司法書士 廣澤真太郎
この記事は、不動産登記に関するちょっとした知識を記載したものです。ご自由にご覧下さい。
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相続に関する不動産登記についての知識
再度の遺産分割協議の可否
Q
相続人が甲乙2名のケースで、一度乙への名義変更登記を行ったが、遺産分割協議をやりなおして甲名義にすることは可能か?
A
可能。遺産分割協議は法定解除することができないとされているが、相続人全員の同意があれば合意解除することは可能とされているため。
とはいえ、合意解除してやり直しする場合、贈与税、不動産取得税などの税金は発生するので、税理士との相談が必須となる。
結局、贈与しているのと変わらないということでしょう。
遺言書の内容と異なる遺産分割協議の可否
Q
遺言書が見つかったが、相続人全員がその内容に納得がいかない場合、相続人全員の合意があれば遺言書の内容と違う割合で遺産を分配することが可能か?
A
受遺者を含めて、全員で遺産分割協議を行った場合は有効。ただし、遺言執行者がいる場合は、遺言執行者の同意も必要。
大雑把ですが、「相続させる」遺言がある場合は、亡くなった瞬間に当然にその相続人に承継されるから、遺産分割協議の余地はない(最判平成3年4月19日)というのが前提になりますが、
裁判例(さいたま地裁平成14年2月7日)では、この判例は遺産分割協議が難航しているようなケースで迅速に解決しようという建前があるわけで、
受遺者含む相続人全員の同意があるなら、遺言作成の趣旨から考えてみても、被相続人の意思に直ちに反しているとはいえないから、遺言と異なる遺産分割が一切できないという内容ではない。つまり、有効だと示されています。
※注意
上記は、実際には、遺言の内容やケースごとの判断となり、専門家によっても意見が分かれています。
例えば、相続させる旨の遺言の場合で、「長男に全財産を相続させる」旨の遺言が発見され、その分配割合を変更したいという場合、最高裁判例で考えると、それは実際には遺産分割協議ではなく、相続した財産を贈与したという構成になります。
つまり、厳密にいえば、贈与税が発生する可能性があるということです。次のページにあるように、遺言とちがう遺産分割協議が行われた場合、受遺者が遺贈を放棄した(民法986)とみたうえで、贈与税を課さないという記載がありますが、最高裁判例どおりに考えれば、相続させる旨の遺言の場合は、その放棄がそもそもできないと示されているからですね。
遺言書の内容と異なる遺産分割をした場合の相続税と贈与税:国税庁
また、その遺産分割協議によって、名義変更その他相続手続を行った後、一部の相続人が遺言を隠したと主張した場合は、相続人の欠格事由に該当する可能性がありますし、状況としては虚偽の申告、申請を行ったという構成にもなりえます。
このように、遺言の内容と違う手続きをしたいケースでは、かなり気を使って進める必要がありますので、一度、お近くの司法書士か弁護士にご相談いただくことを推奨します。
(相続人の欠格事由)
第八百九十一条 次に掲げる者は、相続人となることができない。
~略~
五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
個人的には、平成14年のさいたまの裁判例を根拠として手続きを進めたほうが、遺言者の意思に合致するケースが多いでしょうし、そのように対応している事務所が数多くあるのではないでしょうか。
実際、上記の取り扱い通り手続きを進めれば、税金も2回支払うことになり、不合理です。
専門家に相談された場合は、結局のところ、その当事者の方や専門家が、どこまで、その手続きや紛争のリスクを許容するかというところで、意見がわかれるでしょう。裁判になったときにどちらに転ぶかについてまで、責任は負えないということです。
成年後見人とその被後見人が相続人である場合の遺産分割
Q
相続人のうちに、成年後見人とその被後見人が含まれる場合、遺産分割協議を行うことは可能か?
A
利益相反となるため、成年被後見人について、特別代理人の選任が必要。
養子縁組と代襲相続権
Q
養子が相続人となる場合で、養子がすでに亡くなっている場合、その子供に相続権はあるか?
A
養子縁組前の子の場合は、代襲相続できない。養子縁組後の子の場合は、代襲相続できる。
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