相続登記の義務化についてわかりやすく解説します

(令和3年5月時点)

数年以内に法令が改正され、相続登記が義務となり、期限内に登記しないと過料が課されるというニュースに驚いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この記事では相続による所有権移転登記(以下、相続登記)義務化について、かみ砕いて解説していきたいと思います。

この記事の信用性

現役の司法書士であり、行政書士の資格も持っている僕が自ら記事を書いています。 遺言や相続の根拠条文は民法ですから、その専門家といっていいでしょう。

両方合わせて総勉強時間は1万時間くらいでしょうか。

司法書士:(
文系最難関と言われている試験です。
合格率:3%~4% 平均受験回数 4回 筆記試験+口述試験+認定考査筆記試験 合格者平均年齢 40代
業務:不動産・商業登記、相続手続・財産管理、会社法務、会社設立、遺言作成、成年後見、供託、債務整理、簡裁訴訟代理etc
受験科目:民法・会社法商法・商業登記法・不動産登記法・民事訴訟法・民事執行法・民事保全法・刑法・憲法・供託法・司法書士法

行政書士:(受験科目のうち約5割は民法の勉強です。)
合格率:9~10% 平均受験回数 2回 合格者平均年齢 20~30代
業務:許認可、補助金申請など官公庁への提出書類及びその他契約書などの権利義務や事実関係を証する書類の作成etc
受験科目:民法・会社法・行政関係法令・基礎法学・憲法・一般知識

 

 

まず、記事のもとになる日司連の記事はこちらです。

2021年「相続登記」義務化へ~相続登記は司法書士へ~PDF

日司連の回し者ではありません、とも言い切れませんね、筆者は司法書士なので。

では早速、一般の方にとって、ポイントとなる部分を掘り下げていきましょう。

 

相続登記の義務化が決まる予定!?

法律改正法案が提出され、国会で決定予定とありますが、この日司連の記事は3月のものですので、4月に法律が成立、4月28日に公布されました。
施行日は、相続登記の申請義務化関係が3年以内、住所等変更登記の申請の義務化関係が5年以内の日で政令で定める日とされてます。

要するに、2024年迄に相続登記の義務化が決定したという事です。

法務省のページはこちらです。(改正の概要PDF新旧対象条文PDF)

 

相続登記の義務化って…これまでしなくても良かったの?

不動産をお持ちの方が亡くなった場合、その名義を変更するための登記はこれまで、義務ではありませんでした。

不動産をそのうち売却したり担保権を設定するために相続による登記は必要とされましたが、地方では特に相続登記をするのは費用が掛かるし、将来売る予定もないので登記せず放置するという選択をされる方が多く、

これが原因で登記されている不動産の2割(なんと九州より広い範囲)は誰が持主なのかわからないという状態になっておりました。

日本の不動産の管理制度は司法書士の誕生とほぼ同時期に少しずつ作り上げられたものですから、制度自体完璧ではなかったのです。

 

相続登記の義務違反のペナルティ

今後は、相続による名義変更を期間内に行わなければ、罰則として10万円以内の過料(住所氏名変更登記は怠ると5万円以内の過料)が課されます。

罰金があるよという事です。義務者は不動産を遺贈や相続によって取得した人です。

「相続で取得したんですね。まぁ別に、登記によるメリットをお感じになられないのなら、放置しても咎めませんよ。」と構えていた国の方針が一転、

「取得したのなら、期間内に登記しなさい。所有者がわからなくなるでしょう。」というニュアンスに変わったのですね。

 

相続登記の期限

期限は3年以内です。(これに対し、住所・氏名変更登記は2年以内です。)

いつから?

「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。(新不動産登記法76条の2)」とあります。

これは、親族のうち誰かが亡くなったことを知ってから、自分が不動産をもらうと知った日から3年以内という意味です。

つまり、期限の考え方は法定相続分(民法900条)で相続することとしたのであればその時からですし、遺産分割協議を行ったのであればその作成日からと考えれば良いので、

「取得した人がとりあえず早めに登記」と考えけば大丈夫です。

 

とはいえ、相続登記って税金と司法書士報酬が高額じゃないですか…

相続登記には登録免許税という税金が不動産の評価額の0.4%発生しますし、司法書士報酬の相場も5~15万円と高額なのは確かですね。

そこで、これまで登記を放置していた方々向けに、「所有者がわからなくならなければ良いので、少し協力してくれたら、登記せずともとりあえず罰金はとりませんよ。」という制度が新たに設けられました。

これがニュースで誤認をたくさん見かける期待の新制度、その名も相続人申告登記です。

 

相続人申告(登記)

「私、相続人の1人です」と、法務局に申告しておけば、とりあえず登記の義務は免れる(罰金を免れる)という新たな制度です。

あえて登記をカッコでくくったのは、相続人申告(登記)には登記特有の効力がなく、あくまで所有者が誰かわからなくなることを防ぐための措置という意味合いと、登記官が職権で登記するので申告すればいいだけであり、誤解が生じないようにするためです。

相続登記の義務化はそもそもが”所有者がわからなくなること”が問題の出発点ですので、推定相続人全員が「私、相続人の1人です」と自分から申告してくれて、それが公示できればとりあえずはOKというのが国の考え方のようですね。

つまり、登記を義務化したとはいえ、これまで不動産登記にメリットを感じずに登記を放置していた方々からの、「とにかく登記をするのはめんどくさい!お金かけたくない!」という反発を防ぐために一旦設けられた制度ともいえます。

 

この制度の特徴を筆者なりにまとめると次のとおりです。

✔ 相続による登記をせずに放置しておきたいのであれば、最低限、法務局で相続人申告をしなければならなくなった。(相続人申告さえも怠ると10万円以内の罰金

✔ 相続人申告は簡単。法務局へ亡くなった方の戸籍+自分の戸籍+住民票を持ってけばいい。費用は現段階ではわかりません。

✔ 遺産分割協議により所有権を取得した人は必ず相続登記をしなければならない。(つまり、相続人申告は二度手間になる。法定相続分で不動産を取得とするご家庭の割合って多いのか…?)

✔ 相続人申告登記はあくまで所有者がわからなくなることを防ぐための措置にすぎないので、登記特有の効力はない。

✔ 相続人申告をしていても、結局売却時や担保権設定時には相続登記を経なければならない。(二度手間、三度手間)

 

これまで登記を放置しておいて、これからも登記を放置したいという方でも、相続人申告は最低限しなければならないという点と、ご家族のうち不動産を取得する人を定めた時は結局相続登記が必要というのがポイントとなるでしょう。

筆者としてはわざわざ戸籍を持って法務局に行ったのに、後で結局のところ登記義務が発生するのであれば、相続登記をこの際司法書士に丸投げしてしまったほうが返って楽なのでは…という感想を持ちました。

 

まとめ

結論からいうと、「相続登記はお早めに」という一言に落ち着くかと思います。

相続人申告(登記)など、負担を軽減する制度は設けられていますが、結局のところ後々相続登記する事となりますので、むしろ手間が増えるだけです。

どうしても登記をしたくない層向けにとりあえずの措置として制度を作った感がありますね。。

 

最後に宣伝「相続登記は司法書士に」

司法書士150周年記念のキャッチフレーズを募集ということで、「相続登記は司法書士」にというワードがアチラコチラで飛び交いました。

私としては「手術や薬の処方はお医者さんに」というキャッチフレーズのように思えたのですが、これも登記をお知り合いや懇意にしているお客様のために業としてやってしまう方がたくさんいらっしゃるのが問題の所在のようです。

もぐりの医者ならぬもぐりの司法書士、ニセ司法書士とでもいいますか…。司法書士ですら登記の恐怖に怯えながら実務をこなしていますから、恐ろしい方がいるものです。

登記を司法書士以外の方に頼まれるのは非常に危険なので、登記は必ず司法書士にご依頼ください。

所有者不明土地の解決のカギは相続登記の促進にあります。相続登記をはじめ、不動産登記における権利の登記の申請代理については司法書士の独占業務です。司法書士でない者が、登記に関する手続の代理や法務局に提出する書類を作成することは、法律で禁止されています。:上記日司連の記事から抜粋

 

 

不動産登記法

第七十六条の二

所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。
2前項前段の規定による登記(民法第九百条及び第九百一条の規定により算定した相続分に応じてされたものに限る。次条第四項において同じ。)がされた後に遺産の分割があったときは、当該遺産の分割によって当該相続分を超えて所有権を取得した者は、当該遺産の分割の日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。
3前二項の規定は、代位者その他の者の申請又は嘱託により、当該各項の規定による登記がされた場合には、適用しない。(相続人である旨の申出等)

第七十六条の三

前条第一項の規定により所有権の移転の登記を申請する義務を負う者は、法務省令で定めるところにより、登記官に対し、所有権の登記名義人について相続が開始した旨及び自らが当該所有権の登記名義人の相続人である旨を申し出ることができる。
2前条第一項に規定する期間内に前項の規定による申出をした者は、同条第一項に規定する所有権の取得(当該申出の前にされた遺産の分割によるものを除く。)に係る所有権の移転の登記を申請する義務を履行したものとみなす。
3登記官は、第一項の規定による申出があったときは、職権で、その旨並びに当該申出をした者の氏名及び住所その他法務省令で定める事項を所有権の登記に付記することができる。
4第一項の規定による申出をした者は、その後の遺産の分割によって所有権を取得したとき(前条第一項前段の規定による登記がされた後に当該遺産の分割によって所有権を取得したときを除く。)は、当該遺産の分割の日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。
5前項の規定は、代位者その他の者の申請又は嘱託により、同項の規定による登記がされた場合には、適用しない。
6第一項の規定による申出の手続及び第三項の規定による登記に関し必要な事項は、法務省令で定める。(所有権の登記名義人についての符号の表示)第七十六条の四登記官は、所有権の登記名義人(法務省令で定めるものに限る。)が権利能力を有しないこととなったと認めるべき場合として法務省令で定める場合には、法務省令で定めるところにより、職権で、当該所有権の登記名義人についてその旨を示す符号を表示することができる。

 

 

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