モメない遺言の書き方とモメる遺言の例示

司法書士 廣澤真太郎
こんにちは。司法書士の廣澤です。

うちの家族には遺産がないから関係ないとお思いでしょうか。相続人の話し合いがまとまらず、遺産分割事件(裁判所を交えての話し合い)となった割合は、遺産の額が5000万円以下のご家庭が約8割です。

そこで、この記事では相続でもめないことに焦点を絞った「遺言の記載」について例示しておきます。ご自分で遺言を作成される場合に参考になさってください。

 

 

遺言の残し方によって、モメる原因

 

モメる原因①:遺留分を侵害した遺言

遺留分については別記事で解説しています。

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配偶者や直系血族には遺留分と呼ばれる権利があります。

夫が亡くなったがその全財産を一部の相続人や第三者に譲るという遺言を残していた場合でも、他の相続人は遺留分の割合で譲り受けた人に金銭を請求することができます。

遺言者の生前の意思を実現することが遺言の目的なのだとしても、残された家族の生活は保障すべきであるという考え方からこのような制度が設けられているのです。

これはつまり、相続人がその遺言に納得する可能性が低く、さらに第三者と残された相続人とのやりとりが発生する蓋然性が高いということでもあります。

縁遠い相続人もいるでしょうし、遺留分は正当な権利とはいえ人に「私にお金をください」と請求するのはストレスではないでしょうか。

また、そもそも遺留分の請求方法を一般の方がご存じでしょうか、知らないのが普通です。

遺留分を請求する際には弁護士に依頼するのでしょうが、弁護士を立てて請求権を行使してきた相手と仲良く話し合いができますか?びっくりするのが一般的な感覚ですよね。

 

対策

遺留分については遺言作成時に事前に想定しておいて、その割合を事前に遺留分権利者に渡す遺言内容にしておくべきです。

また、付言事項を遺言に記載し、なぜこのような遺言内容にしたのかという遺言者の意思を明確に表現しておくことが好ましいでしょう。

例えば、どうしても遺留分を侵害した内容にしたいのであれば「これはお願いなのですが、〇〇な理由からこういった遺言内容としたので、遺留分侵害請求権は行使しないで下さいね。」とするなど

 

モメる原因②:遺言内容の偏り

明治の始まりから戦後まで続いた家制度の名残から、長男に全て相続させるという内容の遺言を残される方もいます。こういった場合もトラブルにつながることがあります。

同居して父の介護を誠実に行ってきた長女がおり、相続時に残された財産は姉が同居していた土地と建物だけというケースを想定してみましょう。

そこで、父である遺言者が、先祖代々の土地建物を承継させるのは長男と考え不動産を相続させる遺言を残したとします。

お姉さんは納得できるでしょうか。介護もしてお父さんを看取ったのに自分には何もない、住んでいる不動産の所有権すらないのです。

 

対策

遺言に次のように記載して長女の不公平感を回避することが考えられます。「長男に不動産を相続させる。ただし、長男は不動産を取得する代償金として長女に〇〇万円を支払う。」

その他にも、法律で定められた法定相続分で公平に取得すると定めることもできるでしょう。

もちろん代償金を定める場合は長男にその資力があるかどうかの確認は必要ですし、長女とは利益が相反しますので、遺言執行者は弁護士又は司法書士などとしておくと良いでしょう。

ただし、長男が支払いに応じないときは家庭裁判所に遺言の取消の審判を求めることとなるなどしますから、この遺言の記載には慎重になるところです。

また、不動産を長男に譲る理由については、上記同様で、付言事項に長女に不動産を引き継がせる理由を書いて長女の納得を得られるようにしておくとより良いでしょう。

 

モメる原因③:遺言を書いた時の健康状態

『遺言は元気なうちに』が原則です。

認知症気味だった母が残した自筆証書遺言の内容が、同居の長女に全財産を相続させるというものだったというケースを想定しましょう。

そして、他の兄弟は都会で暮らしているとします。もうこれだけで争いの種なのはわかりますね。

「認知症だった母に無理やり書かせたんじゃないの?」

「働いてもない怠惰な長女に全財産をというのは話がうますぎる」

「そもそも生活費や相続財産を横領してたりしないよね?通帳の記録を調べさせてくれるかな。」

居住地の距離はすなわち心の距離です。不信感がどんどん募り、感情が否定的になればなるほど話合いはまとまらなくなるでしょう。

 

対策

お母さんに長女にどうしてもという理由があったのであれば、公正証書遺言で遺言を残しておくべきでしたし、遺留分も考慮しかつ付言事項を記載しておくべきでした。

まず、公正証書遺言であれば公証人+作成に関わる司法書士+証人の関与がありますから、お母さんは認知症気味でも、作成当時意思がはっきりしていたという担保がされますので、お母さんに無理やり書かせたわけではないという証拠になります。

また、遺留分を考慮しておくことで先のような兄弟姉妹間に弁護士が入るようなことを避けられますし、付言事項で長女に対してすべての財産を譲る理由などを明確に示しておくことで、他の兄弟を納得させることができたかもしれません。

このようなケースを考えてみても、自筆証書遺言はトラブルのもとなので極力避けるべきです。

 

モメる原因④:遺言を無視する相続人

遺言作成当時から相続人の1名が遺言の内容に絶対に納得しない事がわかっていることがあります。「兄は大学に行かせてもらって仕送りもしてもらったのだから、実家も財産も俺が引き継ぐべきだ。」と主張しているような相続人がいるケースです。

兄弟間に収入格差があると、どうしても納得しづらい側面もあるのです。
法定相続分で遺言の内容を記載していたとしても納得しないでしょうから悩ましいケースですね。

 

対策

遺言の無効を争う可能性がある事が明らかですから、遺言執行者を定めておくのは当然として、遺言書は公正証書遺言とし、遺産分割協議をすべきと主張するのも避けるため、遺産分割協議の禁止を定めておくとよいでしょう。

さらに、遺言者が亡くなったら速やかに遺言の内容に従って相続手続きを行う必要があります。
勝手に法定相続分で登記をすすめてその持分を売却してしまった場合には、その不動産持分を取り戻せなくなるからです。(民法899条の2)また、その金銭の返還を請求する訴訟にまで発展するかもしれません。この不安定な状態を避けるために、生前贈与を考えておくという方法もあるでしょう。

また、付言事項では分割方法の理由やお願いについて記載し本人も納得がいくよう努めるべきです。

 

まとめ

「遺言があればよかったのにね…」

専門家をやっていれば誰しも一度は、周囲の専門家達の口から聞いたことがあるセリフです。
しかし、それでも遺言の作成率は亡くなる方の数に対して約1割と低い水準になっています。

この記事をご覧になっているような方は情報収集に長けた方なのは間違いありません。そこで、遺言を書く前提としてモメない遺言作成について記載しましたが、いかがでしたでしょうか。

筆者が遺言作成において最も重要だと考えるのは、遺言者だけでなく当事者となる方全員の「納得」です。

絶対に納得しない方、理屈の通じない方ももちろんいらっしゃいますが、そういった感情面も含めて当事者全員が納得せざるを得ない遺言を残すことが大切だと思います。もちろん言うは易く行うは難しですが…。

しかし、そのような遺恨の発生を最小限に抑える遺言作成を目指すことは可能です。

そして、そのような遺言作成のサポートは法律事務の専門家である司法書士にお任せ下さい。

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